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かつ鍋と父

新年用に本を買おうと新宿に戻って紀伊国屋。
ついでに地下で食事をとった。本を買ったらモンスナックのカレーかなぁ…、と思うも同じフロアのとんかつの和幸が気になった。

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一年をかつで勝つって験担ぎも悪くない。
そう言えば今どき料理サンプルがズラッと並ぶショーケースがお店の入り口脇に設えられたレストランは珍しい。限られた面積にひとつでも多くの客席を作りたいって店がほとんどだから、ショーケースをなくしてしまう店がほとんど。

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でもこの日本ならではの、ワクワクがぎっしり詰め込まれているショーケースをみるのはたのしい。しかもショーケースの中に「かつ鍋御膳」のサンプルをみつけてそれを食べることにした。

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なつかしい料理です。父がコンサルタントをはじめるきっかけを作った料理。40年ちょっと前に経営していた鰻料理のチェーン店を潰し、食べていくために鰻のタレを売ろうと全国を奔走していたときまで話は遡る。

最初は日本料理の店を訪ねていたのだけれど、残念ながら鰻のタレの味は地方、地方で異なるもの。四国でおいしいと言われたタレが他の地方で売れるとは限らないからあまり仕事はうまくいかなかった。

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どうしようと思案していたときに、「かつ丼の頭」とか「かつ丼のわかれ」と呼ばれる料理を見つける。そば屋の蕎麦前、居酒屋の腹持ちのよいつまみとして東京では昔から売られていた料理。それをご飯と一緒に定食にすれば、男性客にアピールしたいファミリーレストランで売れるんじゃないかと思ったのです。鰻のタレを出汁で伸ばせばかつ丼のタレにぴったりで、そのアイディアが当たった。
地方都市のファミリーレストランの代表的なメニューになったし、父はタレを売る人でなく「売れる商品を開発しその売り方を教える」人になった…、という訳です。

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今では扱う店が減った。
女子供の料理って思われてたハンバーグは、老若男女を問わず好きな料理になったし、頭とご飯を別々に食べるのは面倒だからかつ丼でいいじゃないか…、って人も多くなったから。
でも、おいしいんですよね…、揚げたてのサクサクしたパン粉衣がタレをたっぷり飲み込んでもサクサクの余韻はそのまま。出汁と醤油の風味が衣や肉にも染み込みずっと熱々。
タレにパン粉衣の油が染み出しふっくらとした卵にシャキシャキ玉ねぎも味がしっかり入っておいしい。ご飯の上にのっけて食べるとかつ丼みたいでもあるけれど、ご飯はずっと白いまま。

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カキフライを2個追加。千切りキャベツにタルタルソースが律儀についてくるけれど、カキフライもかつ鍋の鍋に入れて出汁を吸わせてハフハフ食べる。オゴチソウ。

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それにしてもいいお店です。チェーン店ではあるけれど、チェーン店くささがあまりなく一生懸命とんかつ専門店のようであろうとしている。ご飯や味噌汁、千切りキャベツがお代わり自由。しかも千切りキャベツはキャベツの甘みや風味がしっかり残ってる。なによりここのゆずドレッシングがおいしくて、今日もたっぷり。

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かつ鍋にも千切りキャベツにポテトサラダが別の器に用意されてる。ありがたい。
とんかつは煮込む前に一口大に包丁が入って、タレやとじた卵や玉ねぎと一緒に口に入ってくるのもステキな気配り。お茶の入ったヤカンもキラキラ、目に眩しくてオゴチソウ。


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