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でめ金の串揚げ、串揚げの定食

串揚げ。
およそ揚げられないものはないんじゃないかと思うってしまうほどに、いろんなモノを揚げることができるこの上なく柔軟な料理。
鶏肉一つとっても唐揚げならばぶつ切りにして揚げるだけ。
ところが串揚げだと薄くひらいて何かを巻いたり、ミンチにしたものをなにかに詰めたり、塗ってみたりと自由自在に加工し、揚げられる。
創意工夫の数だけメニューが増えるたのしい料理の世界。
しかも定食になると食べてみるまでわからないミステリアスなところもたのしい。

新宿西口。電気街のど真ん中にある「でめ金」で昼。
串揚げの専門店で驚くほどに小さいお店。10人ほど座ると一杯になるカウンターだけの店。

調理器具と言えば串揚げを揚げる鍋。湯を沸かしたり汁を炊いたりするコンロがあれば他に必要のないメニューです。揚げ物用の鍋の上には油煙を逃がすダクトが下がって、そこに「でめ金」と刻印がある。
愛想なしのおじさんが一人で揚げます。仕事は確かで手も早い。お店に入って来た人たちはカウンターの端から隙間をあけずに詰めて座って注文をする。カウンターのひときわ高いところに置かれたポットから、冷たい麦茶を注いでゆったりと待つ。お店の人とお客様との共同作業で出来上がる店。

ずっとおいしい匂いが漂っている。揚げ物だけど重たい油の匂いでなく、何かが焦げて仕上がっていく香ばしい香りがずっと鼻をくすぐる。シュワシュワだったりカラコロだったり、あるいはときおりバチバチと水気が爆ぜる音がして、料理がたしかに整っていく。
串揚げ定食がランチの一番人気でそれをたのんで待った。

あぁ、そろそろボクの串揚げが仕上がるんだろうなぁ…、というタイミングで三角巾に割烹前掛けのおばさんが「味噌汁はわかめにしますか、豆腐にしますか」と聞いてくる。豆腐を選ぶと厨房の奥で手鍋で豆腐の味噌汁を沸かしてどうぞとご飯と一緒にコトンと置かれ、間髪入れず串揚げの皿。

1つお皿に串が7本。
豚肉、牛肉、エビにメゴチ。
茹でたうずら卵に玉ねぎ、かぼちゃ。
骨付きの手羽元は串を刺さずにそのまま揚げて全部で8種。
細かなパン粉がぎっしり貼り付き、ラード混じりの油で揚げたからでしょう、パン粉はカサカサ。
こんがり揚がって香りもおいしい。
エビの上に細かく刻んだエシャロットを混ぜたタルタルソースがたっぷり。
それ以外はソースで食べる。芥子もたっぷりのっけてパクリ。パン粉をまとって揚がった素材はみずみずしさを失わず、噛むとジュワッと口いっぱいに素材の旨味が広がっていく。素材それぞれの味の変化をたのしめるのが串揚げという料理のステキ。

野菜スティックが添えられます。串揚げコースでは食べ放題のコレ。口をみずみずしくしてリセットさせる。
ザクザク切って水でさらさずそのまま使った千切りキャベツ。とんかつのサイドの極細でみずみずくてシャキシャキしたのとはまるで違った食感、味わい。ザクザク、奥歯で砕けてキャベツの青い匂いと甘みを思う存分まきちらす。存在感が半端ない。考えてみれば、串揚げのお供のきゃべつと同じ味わい、よく似た食感。オモシロイ。

むっちりとしたエビの甘みや牛肉、豚肉の歯ごたえ、味わい。噛むとプチッとはぜてとろけるうずらの玉子。分厚く揚がった玉ねぎは甘くてシャキッと歯ざわりたのしい。鶏手羽の骨をつまんで前歯でしごくとスルンと肉だけ抜け落ち骨が一本残る。それ以外はみんなお腹にキレイに収まる。いいお店です…、オキニイリ。

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