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銀だらと大根と思い出話
車力門通りを散歩してたら、「日本料理さわ野」が開店時間の前というのに営業中になっていた。
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お腹もすいた。これさいわいと中に入って、今日は随分早いですねと言ったら「準備ができたものだから」と。
昼ごはんにはまだまだ早い時間でお店をひとりじめ。
タナカくんが大好きだった「銀だら大根煮」を選んでたのむ。
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ボクとここのランチに来たのは3回だけで、その3回ともたのんだのはこの料理。
もともと脂ののった銀だらが大好物。
しかもここの味付けが好き…、というのでいつも選んでた。
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そんなに時間をかけて煮込んでいるわけではないのに、しっかり味が染み込んでいる。
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深海の魚のくさみもなくってふっくら、しっとり。銀だらの持ち味が口のすみずみに染み込むようなオゴチソウ。
今日のお惣菜は青菜とタコのおひたしに厚焼き玉子に釜揚げしらす。
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漬物3種にイワシの梅煮。
骨までしっかりやわらかでご飯が進むったらありゃしない。
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銀だらと一緒に煮込んだ大根は、芯まで飴色。
クチュっと潰れて銀だらのうま味まじりの煮汁がジュワッとほとばしりでる。
とろけるオクラ、サクッと歯切れるパプリカにしっとりなめらかな茄子もおいしくウットリします。
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今日のご飯もさつまいもの炊き込みご飯。刻んだ油揚げが出汁を含んで味わい深い。
銀だらの骨と皮だけ残して鑑賞。このねっとりとした皮もタナカくんがいればキレイになくなったのに…、って思って昔をなつかしむ。
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食事を終えてもお客さまはまだ来ない。思いきってタナカくんの話をしてみる。
2年ほど前にご主人の絵を描かせて欲しいとお願いをした人をご記憶有りませんかと聞いてみた。
恰幅の良い方が武者絵にしたい。鎧兜が似合うお顔で、ぜひ描かせて欲しいんだって写真を撮って帰られた。それから顔を見ないので、どうしたのかなと思ってたんです…、と言うので、その後、10日ほどで逝ったんですよ。
脳内出血で突然に。
絵も途中まで描いていたけど未完成だと思うんです…、って。
それからしばらくご主人の思い出話を聞いてしんみり。もし下絵が見つかったらお持ちしますネ…、と言ってお店をあとにした。
肩の荷をひとつおろしたような気持ちになるも、お店を出たらやっぱり泣いた。あれから2年と7ヶ月。
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