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医学概論NO.32 精神疾患(不安症、強迫症、心的外傷後ストレス障害)



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


3)不安症群(恐怖症やパニック障害など)


DSM-5では、不安症群/不安障害群というカテゴリーがあります。

不安症群は、恐怖や不安の病気(不安症)が複数集まった1つのカテゴリー(群)を言います。

不安というものは、何が怖いのかよくわからなくて漠然としている場合の感情を指しています。
不安は、人を含む動物が危険を感じたときに起こる感情になります。
不安を感じると、自律神経系が交感神経系優位となります。その結果として、胸がどきどきしたり、息が荒くなったり、汗をかいたりするという身体反応が見られます。
不安は、個人差はありますが、誰でも感じる感情です。
そして、不安が日常生活に支障を来すほどに過剰に起きるようになったりする場合、不安症と診断されることになります。

不安症の特徴は、原因となる身体的、器質的病変がないことです。
不安症は、心理的・環境的要因によって発症するものになります。

不安症の代表的な疾患としては、パニック症(パニック障害)があります。

DSM-5では、パニック症は、不安症群/不安障害群のカテゴリーに分類されています。

【DSM-5の分類】

  1. 神経発達症群/神経発達障害群(知的障害や発達障害など)

  2. 統合失調スペクトラム障害および他の精神病性障害群(統合失調症や統合失調型パーソナリティ障害など)

  3. 双極性障害および関連障害群(双極性障害や気分循環性障害など)

  4. 抑うつ障害群(うつ病や気分変調症など)

  5. 不安症群/不安障害群(恐怖症やパニック障害など)

  6. 強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群

  7. 心的外傷およびストレス因関連障害群(PTSDや適応障害など)

  8. 解離症群/解離性障害群(解離性同一障害や解離性健忘など)

  9. 身体症状症および関連症群(病気不安症や転換性障害など)

  10. 食行動障害および摂食障害群(拒食症や過食症など)

  11. 排泄症群(遺尿症や遺糞症など)

  12. 睡眠-覚醒障害群(不眠症やナルコレプシーなど)

  13. 性機能不全群(EDや性欲低下障害など)

  14. 性別違和(LGBTに関わる、いわゆる性同一性障害)

  15. 秩序破壊的・衝動制御。素行症群(反抗挑戦性障害や放火症など)

  16. 物質関連障害および嗜癖性障害群(アルコール依存症や薬物依存など)

  17. 神経認知障害群(せん妄や認知症など)

  18. パーソナリティ障害群

  19. パラフィリア障害群(露出障害や小児性愛障害など)

  20. その他の精神疾患群

  21. 医薬品誘発性運動症群およびその他の医薬品有害作用

  22. 臨床的関与の対象となることのある他の状態


不安症を発症する原因について
原因はよくわかっていません。
ただ、不安の感じやすさである不安感受性は、ある程度遺伝するとも言われています。一方で、育った環境や経験の影響も大きいと言われています。


パニック症について

パニック症は、突然、理由もなく、激しい恐怖や不快感の高まりとともに、激しい動悸、息切れ、呼吸困難、発汗、吐き気、めまい、ふらつきなどの自律神経症状が起こり、数分以内にパニック発作を起こすものになります。

そして、その時の恐怖感が忘れられず、再び同じようなパニック発作がおきるのではないかと恐ろしくなる、予期不安にかられる場合があります。

パニック症は、このようなことにより、様々な日常生活の障害を起こす病気になります。

パニック発作は、カフェインなどの物質使用又は身体疾患(狭心症や心筋梗塞である虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症など)によって生じることもあります。なので、これらを除外することがパニック症の診断上必要になります。

*狭心症は、心筋(心臓を構成する筋肉)に血液を行き渡らせる冠動脈が狭くなることにより、一時的に心筋が酸素不足に陥って胸の痛みや圧迫感を引き起こす病気のことです。

*心筋梗塞は、心筋(心臓を構成する筋肉)に血流を送る冠動脈が完全に閉塞することによって血流が途絶えることで、心筋が酸素不足の状態に陥る病気のことです。

パニック症に最も高率で合併するのが、大うつ病性障害です。合併率は約60%です。
その他に、虚血性心疾患などの身体疾患に合併することもまれではありません。虚血性心疾患の患者においては、約20%にパニック症が合併するという報告があります。

また、過剰な不安を和らげようとして、大人であれば、アルコールを乱用したり、子どもであれば、ネットやゲームに依存したりするなど、依存症を併発することもあります。

不安症の治療について
脳内のセロトニンのバランスを整えるSSRI(抗うつ薬)などの薬物療法と認知行動療法と呼ばれる精神療法(不安を生じさせるような考え方や行動の癖に気づいて、バランスが取れたものに見直すことで思考パターンを変えたりする療法、不安な状況に段階的に慣れていくような練習をしたりする療法等)を中心に行われます。

*セロトニンというのは、精神を安定させる作用がある脳内の神経伝達物質になります。



第36回第6問の選択肢

精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において 発達障害に当たる 「神経発達症群/神経発達障害群」に分類されるものとして、パニック障害がある。」〇か✖か





この選択肢は、誤りです。
DSM-5では、パニック症は、不安症群/不安障害群のカテゴリーに分類されています。
パニック症は、突然、理由もなく、激しい恐怖や不快感の高まりとともに、激しい動悸、息切れ、呼吸困難、発汗、吐き気、めまい、ふらつきなどの自律神経症状が起こり、数分以内にパニック発作を起こすものになります。



4)強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群


一昔前までは強迫性障害は、全般性不安障害や社交不安障害などと同様に、不安障害のひとつに分類されていました。しかし、DSM-5に改定されるにあたり、強迫性障害および関連する疾患は、「強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群」という新たなカテゴリーに分類されるようになりました。

【DSM-5の分類】

  1. 神経発達症群/神経発達障害群(知的障害や発達障害など)

  2. 統合失調スペクトラム障害および他の精神病性障害群(統合失調症や統合失調型パーソナリティ障害など)

  3. 双極性障害および関連障害群(双極性障害や気分循環性障害など)

  4. 抑うつ障害群(うつ病や気分変調症など)

  5. 不安症群/不安障害群(恐怖症やパニック障害など)

  6. 強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群

  7. 心的外傷およびストレス因関連障害群(PTSDや適応障害など)

  8. 解離症群/解離性障害群(解離性同一障害や解離性健忘など)

  9. 身体症状症および関連症群(病気不安症や転換性障害など)

  10. 食行動障害および摂食障害群(拒食症や過食症など)

  11. 排泄症群(遺尿症や遺糞症など)

  12. 睡眠-覚醒障害群(不眠症やナルコレプシーなど)

  13. 性機能不全群(EDや性欲低下障害など)

  14. 性別違和(LGBTに関わる、いわゆる性同一性障害)

  15. 秩序破壊的・衝動制御。素行症群(反抗挑戦性障害や放火症など)

  16. 物質関連障害および嗜癖性障害群(アルコール依存症や薬物依存など)

  17. 神経認知障害群(せん妄や認知症など)

  18. パーソナリティ障害群

  19. パラフィリア障害群(露出障害や小児性愛障害など)

  20. その他の精神疾患群

  21. 医薬品誘発性運動症群およびその他の医薬品有害作用

  22. 臨床的関与の対象となることのある他の状態


強迫症(強迫性障害)とは、自分では不合理と知りつつも、不安を引き起こすような考えやイメージが急に頭によぎるため、その不安を解消させるための行動を取らざるを得なくなる精神疾患のことです。

不安を引き起こすような考えは、強迫観念と呼ばれています。
また、不安を解消しようとする行動は、強迫行為と呼ばれます。

なお、強迫観念と強迫行為はセットではなく、どちらかの症状だけが見られる患者もいます。

強迫性障害で有名な症状としては、確認強迫や洗浄強迫があります。

確認強迫としては、例えば、外出するときに鍵を閉めたはずであり、それを分かっているにもかかわらず、「ちゃんと鍵を閉めたかな…」という強迫観念が出てきて、不安になり、その結果として、何度もドアをガチャガチャして鍵を閉めたかを確認するとかになります。
また、洗浄強迫としては、例えば、帰宅して手洗いやうがいをしたにもかかわらず、「まだウイルスが喉や手に付いているかもしれない」と考えてしまい、長時間にわたってうがいや手洗いをし続けるとかになります。



第34回第6問の選択肢

精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において、物質関連障害及び嗜癖性(しへきせい)障害群に分類されるものとして、「強迫症(強迫性障害)がある。」〇か✖か





この選択肢は、誤りです。
強迫症は、強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群に分類されます。
強迫症(強迫性障害)とは、自分では不合理と知りつつも、不安を引き起こすような考えやイメージが急に頭によぎるため、その不安を解消させるための行動を取らざるを得なくなる精神疾患のことです。
ちなみに、物質関連障害および嗜癖性障害群には、アルコール・危険ドラッグ・覚せい剤などによる物質関連障害と、ギャンブルによる非物質関連障害があり、これらが脳に影響を及ぼすことによって、精神障害が生じます。



第30回第6問の選択肢

「精神疾患の診断・統計マニュアル( DSM-5 )において、強迫行為は、「統合失調症」と診断するための5つの症状に含まれている。」〇か✖か





この選択肢は、誤りです。
強迫行為は、統合失調症と診断するための症状には含まれていません。
強迫行為とは、特定の行為を過剰に繰り返さずにはいられないことをいいます。
強迫行為は強迫性障害の症状で、統合失調症の症状ではありません。
統合失調症の症状は、以下のものになります。
(1)妄想
(2)幻覚
(3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4)ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動(長時間動きが止まってしまう、動作が遅くなってしまう、同じ動作を繰り返してしまう、自発的な動きができなくなるといった体の動きが低下する症状を起こす症候群)
(5)陰性症状(情動表出の減少、意欲欠如)



5)心的外傷後ストレス障害


DSM-5では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と急性ストレス障害は、心的外傷およびストレス因関連障害群として分類されています。

【DSM-5の分類】

  1. 神経発達症群/神経発達障害群(知的障害や発達障害など)

  2. 統合失調スペクトラム障害および他の精神病性障害群(統合失調症や統合失調型パーソナリティ障害など)

  3. 双極性障害および関連障害群(双極性障害や気分循環性障害など)

  4. 抑うつ障害群(うつ病や気分変調症など)

  5. 不安症群/不安障害群(恐怖症やパニック障害など)

  6. 強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群

  7. 心的外傷およびストレス因関連障害群(PTSDや適応障害など)

  8. 解離症群/解離性障害群(解離性同一障害や解離性健忘など)

  9. 身体症状症および関連症群(病気不安症や転換性障害など)

  10. 食行動障害および摂食障害群(拒食症や過食症など)

  11. 排泄症群(遺尿症や遺糞症など)

  12. 睡眠-覚醒障害群(不眠症やナルコレプシーなど)

  13. 性機能不全群(EDや性欲低下障害など)

  14. 性別違和(LGBTに関わる、いわゆる性同一性障害)

  15. 秩序破壊的・衝動制御。素行症群(反抗挑戦性障害や放火症など)

  16. 物質関連障害および嗜癖性障害群(アルコール依存症や薬物依存など)

  17. 神経認知障害群(せん妄や認知症など)

  18. パーソナリティ障害群

  19. パラフィリア障害群(露出障害や小児性愛障害など)

  20. その他の精神疾患群

  21. 医薬品誘発性運動症群およびその他の医薬品有害作用

  22. 臨床的関与の対象となることのある他の状態


心的外傷後ストレス障害は、通常の範囲を超えた生命に関わるような強いストレス体験によってもたらされる病気で、自然災害、戦争、犯罪被害、虐待、交通事故などと関連があります。
我が国においても、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件をきっかけに、この心的外傷後ストレス障害は、広く知られるようになったと言われています。

心的外傷後ストレス障害の症状としては、強い恐怖感や無力感、戦慄(せんりつ)を感じたり、悪夢を見たりするなどさまざまな症状が現れます。

心的外傷後ストレス障害の診断においては、
①発症の原因が PTSD を引き起こすのに十分な出来事があったのか。
②このような出来事を体験したことで恐怖感や無力感、悪夢、フラッシュバック、感情の萎縮などの症状が一か月以上持続しているか。
この2点が重要になります。

心的外傷後ストレス障害の特徴について
一般的には強いストレスを受けた場合には、ストレスはだんだん下がってきます。ですから、有病率は低下してくるんですが、寛解した後に再び強いストレス体験があると再発することがあります。
要するに、原因となった出来事を思い出させるきっかけに触れると、つらい記憶が突然鮮明によみがえる「フラッシュバック」が起こることがあるわけです。このように、原因となる出来事が起こった後、時間が経ってから症状が現れるようになることが、心的外傷後ストレス障害の特徴です。

心的外傷後ストレス障害の治療について
身の安全と安心の確保。つまり、まわりの人がサポートをして、本人が安心できる環境を整えてあげることが大切です。
そして、抗うつ剤の一種であるSSRIなどの薬物療法、認知行動療法などの心理療法があります。

急性ストレス障害について
急性ストレス障害では、心的外傷後ストレス障害と同様の症状(フラッシュバック、不眠、物事に集中できないなど)が心的外傷的出来事の直後から始まり、3日以上持続し、1か月以内に治まる病気になります。

なお、これらの症状が1か月以上持続した場合や、原因となる出来事が起こった後、時間が経ってから症状が現れるようになった場合などは、同じストレス症候群の1つである心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されます。



第34回第6問の選択肢

精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において、物質関連障害及び嗜癖性(しへきせい)障害群に分類されるものとして、「急性ストレス障害がある。」〇か✖か





この選択肢は、誤りです。
急性ストレス障害は、「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類されます。
急性ストレス障害では、心的外傷後ストレス障害と同様の症状(フラッシュバック、不眠、物事に集中できないなど)が心的外傷的出来事の直後から始まり、3日以上持続し、1か月以内に治まる病気になります。
ちなみに、物質関連障害および嗜癖性障害群には、アルコール・危険ドラッグ・覚せい剤などによる物質関連障害と、ギャンブルによる非物質関連障害があり、これらが脳に影響を及ぼすことによって、精神障害が生じます。


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