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地方行財政と地方分権化 社会福祉士国家試験 福祉行財政と福祉計画

では、今回は、地方分権化の進展のところを見ていきます。

1973年に原油価格が高騰するオイルショックがありました。それまでは日本は高度経済成長の時期を経験してきたわけです。しかし、このオイルショックを契機とする石油価格の上昇は、エネルギー源を中東の石油に依存してきた日本の経済を脅かしたわけです。日本は、成長が鈍り、安定成長に移行しました。で、その後、経済的な限界も徐々に明らかとなり、福祉国家の危機が強調されるようになります。こうしたなかで、行財政改革が国政の最重要課題となっていくわけです。その中で、改めて地方分権に向けた動きが生じてきました。財政的に厳しくなってしまった日本では、国と地方自治体の役割分担など、福祉国家システムのあり方を根底から再検討する必要に迫られることになったわけですが、これまで地方分権化が進められてきました。そして、これからも進められていきます。

地方自治体の分権化は、国の財政再建と地方の実情を取り入れるべきという地方分権の推進の2つの声を受けて取り組まれてきました。しかし、この分権化の実現に向けては、行財政の問題点があります。ここでは、大事なところを2つ理解していただきたいと思います。

1.地方分権一括法

1つ目が、1999年の地方分権一括法です。

以前のような国が地方の包括的指揮監督権を持つ中央集権型の下で、国の言うとおりに地方が行うという時代から、今はどんどんと国が色々な権限を地方に移譲していく。地方公共団体が自分のところの地域をよく見渡して組み立てていくことができるように権限の移譲をしていく。それとともに、もちろん財源も含めて地方の公共団体が担う役割は大変多くなってきてきています。

この地方分権改革というのは、中央、つまり国から地方に色々な、それまで国が握っていた権限をどんどん渡して行くと言う流れになっていきます。この移譲によって効率的できめ細かい対応が可能となり、地域の実情に応じた独自の施策を展開できるようになります。

そして、これまでの流れの根拠となっているのが、1999年の地方分権一括法になるわけです。

地方公共団体の事務のテーマのところで以前に触れた機関委任事務や団体委任事務を廃止したというのが、この地方分権一括法による地方分権化になります。

地方分権化には、地方の裁量権の拡大がどうしても必要となります。そこで、国の統制を廃止し、地方の裁量権を拡大していくような改革をしていきました。要するに、この地方分権改革は、国と地方の関係を上下関係ではなく、対等関係にしようとする改革です。

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