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7割を目指す講義NO.20 福祉ニーズ



福祉政策の構成要素の一つである福祉ニーズについて確認します。

福祉ニーズは、支援の出発点をなすものです。
また、福祉ニーズは、福祉サービスや制度を立案・修正していく場合にも基本となって、サービスや制度の立案、修正がなされていくというものになります。

そして、福祉ニーズに対応するサービスや制度になると、そこに税金を投入して良いということになります。
しかし、サービスを無駄遣いすると、必要なところに税金が投入されなくなり、これは避けなければならないので、福祉ニーズの判定は慎重にする必要があります。
このような事情があるため、古くから、福祉ニーズとは何かについて研究がなされてきました。


1.福祉ニーズとは


この点、三浦文夫によると、福祉ニーズとは、人間が社会生活を営むために欠かすことのできない基本的な生活上の必要要件を欠く状態をいう、と言っています。
この定義によると、誰もがみんなこれが欲しいと言っていても、それが、社会生活を営む上で必要不可欠な基本的要件になるのかどうかというところで、福祉ニーズとして認められるか否かが判断されることになります。

三浦文夫は、この定義をもっと具体的に説明していて、「何らかの基準に基づいて把握された状態が、改善・解決を必要とすると社会的に認められた場合に、その状態をニード、ニーズ(要援護状態)とすることができる。」と言っています。

この定義であれば、非常にわかりやすいと思います。
何らかの基準で把握されたそういう生活上の必要な状態、つまり、条件を欠くような状態ですね。この状態に対し、改善・解決が必要であると社会的に認められた場合、それをニード、ニーズと言っています。
ですから、ある状態について社会的に改善や解決を認めていない場合には、逆に、社会的制度、サービスを受けるニード、ニーズとしては捉えないということになります。

ただ、ここで注意して欲しいのが、社会福祉政策から見たニーズと福祉実践におけるニーズは異なるということです。
これはどういうことかというと、我々が、福祉実践として、生活上の様々な欲求をとらえていく場合には、制度やサービスとして公的、フォーマルな形で福祉ニーズを捉えている場合よりも、もっと広い範囲が福祉実践におけるニーズには含まれているということです。
ですから、その広い福祉実践のニーズの範囲から制度的な範囲にどのように押し上げていくかというところが、福祉ニーズの問題としては大事になってきます。
ということは、あまり今ある制度の対象だけを捉えて福祉ニーズであると考えてはいけないということです。
社会福祉政策から見た福祉ニーズというのは、通常、限定されています。しかし、我々が福祉実践として活動していく。つまり、真っ先に駆けつけて支援をしていく。そういう場合の福祉ニーズというのは、まだ政策主体に把握されていないような問題も含まれています。ですから、広範な領域がそこにあるということです。
例えば、災害とか、何らかの理由で生活の危機が起こった場合には、その地域の中で問題を発見した人は、真っ先に支援をしていく。それでその後にこのような問題を制度的な対応へと繋いでいくということが福祉ニーズの捉え方として大事になってきます。

それから、必要(要求)と似たような概念で、需要といったものがあります。

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