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医学概論NO.11 ソーシャルワークを極める講座 内分泌系



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


心身機能と身体構造の概要の続き


(7)内分泌系

内分泌系について確認していきます。

内分泌系は、各種ホルモンを産生する器官系を言います。


1)内分泌と外分泌


内分泌を担当する器官は、ホルモン(身体の健康維持のためにいろいろな機能を調節する化学物質で、生体の恒常性の維持に役立っています。)を血管内に分泌していきます。
そして、血液循環を介して、そのホルモンの作用の対象となる器官や組織など、目的のところまで運ばれます。
血中に分泌されたホルモンは、細胞から細胞に情報を伝える働きをもつ科学的情報伝達物質として、特定の標的細胞(つまり、ホルモンが作用する細胞のことです)の受容体と結合して効果を発揮していきます。
要するに、ホルモンが働くには、ホルモンを受け取る特定の窓口が必要になります。これが受容体と呼ばれるわけです。
このホルモンに対する受容体がある標的細胞においてだけ、ホルモンの作用が発揮されるということになります。これは、ホルモンを受け取ることで標的細胞の働きが調節されると理解してください。

なお、内分泌と言われる由縁について深掘りしておきます。

これは、血管が体内とみなされますので、内分泌と言うわけです。

これに対し、外分泌とは、胃液や膵液(これは、膵臓で分泌される消化液です)などを体外に通じている消化管(胃とか、十二指腸)に排出する場合のことを言います。
消化管は、体外に通じているわけですが、この消化管の中に消化液を排出するので、外分泌と言うわけです。
一見すると、十二指腸などの消化管は、身体の中ではないかと思いがちですが、からだの細胞から見ると、「からだの外」になります。


創作問題

「内分泌とは、胃液や膵液などを体外に通じている消化管に排出する場合のことを言う。」〇か✖か





この選択肢は誤りです。
これは、内分泌ではなく、外分泌の説明になります。内分泌は、体内とみなされる血管内に分泌するものです。


2)人体の内分泌器官



人体の内分泌器官(ないぶんぴつきかん)は、どこにあるのかと言いますと、身体のあらゆる部位に存在します。


視床下部と脳下垂体(これらは頭蓋骨のほぼ中心にあり。視床下部は脳下垂体の上に位置します。)

甲状腺(これは、首の喉仏の下にあるチョウチョのような形をした内分泌腺になります。)

副甲状腺(甲状腺の後ろ側に4つあるむぎつぶ位の大きさの内分泌腺です。)

膵臓(胃の下にあるコルネのような形をした臓器です。)

副腎(腎臓の上にひとつずつあります。)

腎臓(場所としては、よく腰が痛い時にとんとんと叩く場所がありますが、そこになります。)

生殖腺(せいしょくせん)である卵巣または精巣
などにあります。

それぞれの内分泌器官において、それぞれに違った働きのホルモンが作られています。
ホルモンは血液によって全身に送られ、様々な作用が働き、内臓の機能や身体の調子を整えてくれるわけです。

*1 基礎代謝とは、生命を維持するために最低限必要な覚醒時のエネルギー量を言います。一般成人で、1日当たり1500から2000キロカロリーとされています。

*2 副甲状腺からのパラソルモンというホルモンの作用が、血液中のカルシウム濃度の維持であることの覚え方

カルシウムで骨をふっこうさせるパラソルモン

*3 カリウムの大部分は細胞内に存在し、細胞外液に多いナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持したりするのに重要な役割を果たしています。カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。

これらの各内分泌器官の関係ですが、ホルモンが必要になると、まず司令塔の働きを担う視床下部が脳下垂体に指示を出します。

司令塔だから視床下部 これは覚えやすい!

脳下垂体からのホルモンは、成長を促進させる成長ホルモンもありますが、それ以外にも、他の内分泌腺(ないぶんぴつせん)からホルモンがでるようにコントロールするためのホルモンになります。
要するに、身体に異常があらわれたという信号が脳の視床下部に伝わり、視床下部から脳下垂体を刺激するホルモンが出されることによって作られます。
そして、脳下垂体は、身体を正常に戻すために必要なホルモンを出す各器官に関し、それぞれに刺激し合う働きをしています。
例えば、女性ホルモンの場合、視床下部→脳下垂体→卵巣と伝言ゲームのように命令が伝わっていき、最終的に卵巣からエストロゲンやプロゲステロンというホルモンが分泌されるわけです。
ここに出てくるエストロゲンもプロゲステロンも、いわゆる「女性ホルモン」になります。
エストロゲンは、第二次性徴の発育促進作用があり、「女性らしい体」を形作るためのホルモンです。
例えば、丸みをおびた女性らしい身体を作ったり、ツヤツヤではりのある肌を保ったり、骨粗鬆症などの生活習慣病から身を守ったりするわけです。
一方、プロゲステロンは、子宮内膜を整える働きがあり、妊娠の成立・継続に欠かせないホルモンになります。



第22回第1問の選択肢

「学童期から青年期における顕著な身長の伸びには、成長ホルモンが関与している。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、正しいです。
成長ホルモンは、脳下垂体からの刺激で生まれるホルモンです。


3)ホルモンの作用


次に、内分泌系、つまりホルモンの作用を見ていきます。

ホルモンの作用としては、基礎代謝の調節があります。
基礎代謝は、じっとしていても消費されるエネルギーのことです。つまり、呼吸や内臓の活動など、生命を維持するために必要なエネルギーのことです。このエネルギーの調節をするのがホルモンになります。

それから、それ以外のホルモンの作用としては、生体内部環境の維持(これはホメオスタシスとも言います。)。つまり体の恒常性を維持しようとする機能に関与します。
要するに、ホルモンは身体のさまざまな働きを調節する化学物質だということです。身体の外側・内側で環境の変化が起きても、身体の働きを常に同じになるように保つ働きをしています。ホルモンは、体の健康維持のため、いろいろな機能を調節する働きがあり、一種の潤滑油のようなものになります。

例えば、身体が水分不足のときには、血圧が下がります。このようなときは、血圧を維持させるホルモン(アルドステロン)が副腎皮質から出ます。
どういうことかというと、水分不足の場合、血液の量が減り、血圧が低下します。すると、必要な栄養素が身体に行き渡らなくなり、不要な老廃物を排泄する力も低下します。そこで、副腎皮質からホルモンが出て、血液中の水分の調節をして血圧を維持するわけです。
それとか、身体が水分不足の場合、脳下垂体後葉が、バソプレシンというホルモンを出して、腎臓の尿細管に働きかけ、尿を濃縮させて水分が逃げるのを防ぐという生理作用があります。

では、各ホルモンの働きの具体例をいくつか見ておきます。

例えば、甲状腺からは、甲状腺ホルモンという全身の細胞のはたらき(基礎代謝)を活発にし、成長を助けるホルモンが分泌されます。

また、例えば、生殖腺(せいしょくせん)である卵巣からは、エストロゲンという女性ホルモンが分泌されます。だいたい8~9歳ごろから分泌されます。
主な生理作用としては、乳腺を発達させ、皮下脂肪を形成するといった第二次性徴です。
つまり、ここでいう性徴の「性」は男性・女性の性のことで、「徴」は特徴の「徴」という字になります。ここに徴というのは、他との見分けをつける手段としての、「かた」という意味があります。
思春期になってあらわれる、性器以外の身体の各部分にみられる男女の特徴のこと、これが第二次性徴です。
このようにエストロゲンというホルモンは、第二次性徴をもたらし、女性らしさを作っていきます。
ちなみに、第一次性徴とは、生まれてすぐ分かる男女の性器にみられる特徴(男性の精巣や陰茎、女性の子宮、卵巣や外性器)をいいます。


第32回第1問の選択肢

人体の構造と機能に関する問題で、「副甲状腺ホルモンは、カリウム代謝をつかさどる。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は誤りです。
副甲状腺ホルモンは、カルシウムの代謝をつかさどっています。
副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウム濃度が低下すると副甲状腺ホルモンの量を増加させます。一方、血液中のカルシウム濃度が上昇すると副甲状腺ホルモンの量は減少します。



第35回第1問の選択肢

思春期に伴う心身の変化に関する問題で、「第二次性徴という身体的な変化が始まる。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は、正しいです。
思春期には、性ホルモンであるエストロゲンの働きで、第二次性徴が生じ、生殖器の発達が始まります。


4)内分泌疾患


内分泌疾患について触れておきます。

ホルモンの異常によって病気が起こってきます。それをまとめて内分泌疾患といいます。
内分泌疾患になる場合、ホルモンの量がおかしくなる場合がほとんどですが、ホルモンの働きが異常になる場合もあります。

ここで重要なのは、血液中では、ホルモンは実に狭い範囲内(つまり、基準範囲内)で巧妙に調節されていることです。
ホルモンの量は多すぎても、少なすぎてもいけません。ちょうどよい分量が大切になってきます。
ところが、ホルモンの量がちょうどよい分量ではなく、機能亢進や機能低下になると、体のあちこちに変化が起こってくるわけです。

例えば、女性ホルモンのエストロゲンの量が低下すると、どうなるか。

機能低下、ホルモン欠乏となり、骨粗しょう症の状態になりやすくなります。

もう一つ、具体例を挙げておきます。
ここでは、甲状腺機能異常について触れておきます。

甲状腺機能異常は、成人の1~2%が罹患します。
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、脳、心臓、胃腸などの各器官の働きを活発にして基礎代謝を良くしたり、基礎代謝で得られたエネルギーで、体温を調整する役割を持つ、いわば「元気の源」になります。そのため、甲状腺のホルモンの働きに異常があると、全身の不調を招いてしまいます。

では、まず機能亢進の場合を甲状腺機能亢進症といいます。
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンの量が多く、過剰状態になることにより、全身の代謝機能亢進をきたすものです。

甲状腺機能亢進症の症状としては、体重減少、高血圧、体温上昇など様々な状態が起きてきます。

甲状腺機能亢進症については、男性よりも女性に多く、好発年齢としては、20~40歳代の女性になります。

この場合には、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体が出現して、病気が起こることになります。
自己抗体とは、自分のからだの成分に対する抗体を指します。
本来は、自分のからだに対して抗体は作られません。しかし、自己免疫疾患と呼ばれる一連の病気では、自己抗体が出現して、病気が起こることになります。

本来、抗体とは、病気の原因となるウイルスや細菌など、免疫反応を引き起こす異物である抗原に対して作られるタンパク質です。
抗体は、この異物である抗原が体内に入ってきた際に、攻撃したり、体外に排除したりするために作られるタンパク質のことです。
ところが、誤作動を起こし、身体の中で、異常事態が発生したということで、自分の身体に対して抗体が作られてしまうことがあるわけです。これは、自分で自分の身体に対して攻撃している状態です。
この自己抗体が産生されるために起こる甲状腺機能亢進症は、バセドウ病と呼ばれています。
要するに、バセドウ病は、特殊な「自己抗体」が作られ、これが甲状腺を刺激して、過剰に甲状腺ホルモンを分泌させてしまうという病気になります。
バセドウ病の病名は、バセドウ病を発表したドイツ人医師のバセドウ氏の名前が由来と言われています。

バセドウ病の典型的な症状としては、メルゼブルクの3徴候というものがあります。
・甲状腺の腫大(つまり、細胞の容積が増大した状態。腫(は)れて膨れる腫脹のことです。)。
・頻脈(動悸が長く続くということです。)
・眼球突出
というものが有名です。

バセドウ病のメルゼブルクの3徴候の覚え方

甲状腺ホルモンがンバン出て頻脈になり眼球突出

では、次に移ります。
逆に、甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの低下により、低体温、行動の緩慢、便秘、寒がり、徐脈(脈が遅くなる)、低血圧、手・眼瞼(がんけん まぶたのこと)・下腿の浮腫(むくみ 圧痕を残さないという特徴があります。)、脱毛、皮膚の乾燥などの症状が起こります。
通常はゆっくりと進行し、鬱や認知症との鑑別がとても重要となります。

甲状腺機能低下症の原因としては、慢性甲状腺炎です。
慢性甲状腺炎というのは、甲状腺の機能低下を招く自己抗体が生じた状態ですが、甲状腺の炎症が持続すると、甲状腺ホルモンを作る働きが不十分となるわけです。要するに、炎症で甲状腺機能がパワーレスになるわけです。
この慢性甲状腺炎ですが、橋本病とも言います。

橋下病ですが、男性よりも女性に多く、好発年齢としては、45~65歳代の女性になります。


創作問題

「橋本病は、特殊な自己抗体が作られ、これが甲状腺を刺激して、過剰に甲状腺ホルモンを分泌させてしまうという病気である。」〇か✖か





この選択肢は誤りです。
橋本病は、甲状腺機能が低下することによって症状の出る病気になります。
選択肢のように甲状腺機能が過剰になることによって起こる病気は、バセドウ病になります。



第30回第4問の選択肢

高齢者に多くみられる病態に関する問題で、「甲状腺機能低下症は、浮腫の原因となる。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は、正しいです。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの低下により、低体温、行動の緩慢、便秘、寒がり、徐脈、低血圧、浮腫(むくみ)、脱毛、皮膚の乾燥などの症状が起こります。この症状の1つには、浮腫が含まれています。



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