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医学概論NO.14 ソーシャルワークを極める講座 免疫系



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。



心身機能と身体構造の概要の続き


(12)免疫系


免疫系とは、体内で外部からの異物(病原体等)を認識し、それらをやっつけることによって私たちの体を病気から守ってくれる強力な防衛機構になります。

例えば、私達の生活の中でよく利用するスマホ、パソコンのキーボードなど。それらには、目には見えない多数の細菌等が付着しています。このように私たちの日常生活のなかでは、常に多量の細菌がうごめいています。もし細菌等が肉眼で見えたとしたら、とても気持ちの悪いものです。しかし、幸いにも我々の肉眼では細菌は確認できません。なので、我々は普通に何も思わずに生活しているわけです。
とにかく我々の日常生活の中では、常に多量の細菌等が、うごめいているわけです。それでも我々が病気にならないのはどうしてか。
これは、体に備わった免疫システムのお蔭なわけです。

免疫系、つまり、生体の防御機構は、非特異的防御機構(自然免疫系)と特異的防御機構(獲得免疫系)とに分類できます。



非特異的防御機構(自然免疫系)とは、外部からの異物の進入を一律に防ぎます。
外部からの異物の進入を防ぐ反応は、生体がもともと備えている基本的な反応です。また、どんな病原体に対しても一律に防御反応を示します。
これは、自然免疫と言われます。
自然免疫は、体内に病原体が侵入すると、即座に起こる反応です。しかし、長期間にわたる免疫学的な記憶は残りません。ですから、予防接種の効果も見られません。

非特異的防御機構にはいろいろあります。
生体の表面は皮膚や粘膜で覆われています。そこで、まず皮膚と粘膜による防御があります。
それから免疫系の主役とも言ってよい白血球による防御があります。

要するに、身体は、皮膚や口の中、鼻の中、器官(胃、腸、膀胱、子宮等)の粘膜というバリアがあります。また、皮膚や粘膜が傷ついたりなどして、バリアを突破されてしまった場合には、白血球による防御があります。

これに対し、特異的防御機構(獲得免疫系)とは、生体に侵入した個々の異物(病原体等)に対する予防接種を既に受けていたり、以前にも同じ病原体等に感染したことがあれば、それが記憶されており、一度感染した病原体等に応じて特異的な反応を行うことで生体を防御するものになります。
ちなみに特異的というのは、「特定の」という意味になります。
また、獲得免疫ではたらくT細胞は、特定の病原体に感染した細胞のみを見分けて排除することができ、その作用は長時間持続し、免疫学的記憶も成立します。
この反応は、自然免疫に対して獲得免疫と言われます。


以上、まとめると、免疫系とは、病を免(まぬが)れる仕組みになりますが、その免疫システムの工夫としては、「自然免疫」と「獲得免疫」という2段構えの仕組みから成り立っているということです。

免疫は、異物VS白血球の熾烈な戦いになります。この戦いのことを免疫と言います。
白血球は、とてもよいやつで、我々の細胞を守ってくれるわけです。

豊川市民病院のホームページより

血液を顕微鏡で見た状況

例えば、風邪などのウイルスが体内に侵入すると、まず白血球の一種である樹状細胞やマクロファージが異物や病原体が存在する現場に駆けつけて、異物や病原体を貪食して、ウイルスの情報を集めます。要するに、樹状細胞やマクロファージは情報収集係です。
樹状細胞やマクロファージは、異物や病原体を直接貪食して破壊することもやっていますが、樹状細胞の主な役割は、情報収集して、他の免疫細胞であるヘルパーT細胞に対し、「敵の印はこれだ」と抗原提示して知らせることです。この樹状細胞は、この抗原提示能力が高く、これに特化しています。
これに対し、マクロファージは、異物や病原体を直接貪食するのが主な役割になります。いわば、体内の異物や細菌を食べて分解する清掃員です。

ちなみに、樹状細胞の名前の由来は、その形状が樹木の枝や葉に似ていることからきています。
また、T細胞は、胸骨の裏側にある胸腺(英語でThymus タイマス)で作られているので、頭文字のTをとりT細胞と名づけられました。


では、マクロファージや樹状細胞は、どこに存在するのか。

マクロファージは、体内に存在するさまざまな組織に分布しており、血液中にも存在しています。

樹状細胞は、体内のさまざまな組織に存在しており、主に皮膚や粘膜などの表面に多く見られます。

そして、特に樹状細胞は、その収集したウイルスの情報を免疫の司令官であるヘルパーT細胞に伝えます。
で、樹状細胞からの情報を受け取った司令官のヘルパーT細胞は、異物の殺し屋兵士であるキラーT細胞に対し、ウイルスに感染した細胞を探して破壊せよと命令するわけです。
要するに、T細胞は、樹状細胞からの「抗原提示」によって、敵の情報を得てはじめて、殺傷能力をもつキラーT細胞となります。
キラーT細胞は、身体中をめぐっては、同じ情報を持つ敵を殺します。裏を返せば、T細胞は、攻撃の対象がわからなければ、どんなにその数が多くても、敵に対しては無力といえます。T細胞は、樹状細胞の働きがあってこそ、討つべき敵が明確となり、強力な攻撃部隊(キラーT細胞)になるわけです。
ですから、樹状細胞は、貪食能力により敵を正体のわからない状態で取り込み、そこから特徴を取り出して伝える役目(抗原提示力)を持ちますので、「自然免疫と獲得免疫の橋渡し役」と呼ばれます。ここが他の免疫細胞にはない樹状細胞の重要な役割になります。

また、司令官のT細胞は、B細胞という兵士に抗体(免疫反応を引き起こす抗原に対抗するため生体内で作られる分子のこと。いわば抗原を攻撃するミサイルのような武器)を作るように指令を出します。 
指令を受けたB細胞は、そのウイルスに対抗する大量の抗体をせっせと作り出します。この抗体が、補体と協力して、ウイルスに感染した細胞を破壊します。
ここでの補体とは、肝臓で作られる血中蛋白です。体に侵入した細菌やウイルスを排除するときに働くものになりますが、血中に存在する自然免疫を担当するタンパク質群の総称です。
このように、抗体は補体と協力して異物をやっつけるという仕組みになっているわけです。

このように、さまざまな免疫を担う細胞が協力して、ウイルスに感染した細胞を攻撃し、やがて風邪などが治るということになるわけです。

まとめ

以上、見てきたように、免疫のイメージがある程度できるようになったと思います。
免疫は無数にある異物に対抗するために、要するに、免疫が対応しなくてはならない異物は数限りないため、どんな異物が来ても対抗できるよう、工夫を凝らしています。その免疫システムの工夫として、「自然免疫」と「獲得免疫」という2段構えの仕組みから成り立っています。
パターンAが自然免疫。パターンBが獲得免疫という感じでイメージしてください。
免疫は、体内に侵入した異物に対し、まずパターンAの「自然免疫」が攻撃を仕掛けます。自然免疫は、常に体内を監視し、侵入者に対していち早く攻撃態勢を整えます。異物が侵入した初期段階の防衛線です。

そして、それでも撃退できない場合は、パターンBの「獲得免疫」が出動します。獲得免疫は、強い破壊力を持ち、敵に対抗します。
このように2段構えを講じています。
両者は密接な連携プレーであらゆる状況に対応しています。

では、それぞれのパターンの内容を見ていきます。

パターンAの自然免疫とは、生まれたときから体に備わっている免疫です。この自然免疫は、敵と見ればだれかれ構わず一様に攻撃する免疫です。
白血球のうち、マクロファージや好中球(こうちゅうきゅう)などといった、異物を食べて破壊する免疫細胞(食細胞)がメインで働いています。
この自然免疫は、体内に異物が侵入したときに1番に反応して異物を排除します。また、抗体を作るために、体内に侵入した異物の情報を、獲得免疫で働く免疫細胞(ヘルパーT細胞)に伝える役割も担っています。

一方、パターンBの獲得免疫とは、体内に侵入した異物に対する抗体を作り、次に同じ異物が侵入した場合に効率的に排除する仕組みを作る免疫です。
要するに、「決まった敵」に攻撃をしかける免疫です。
獲得免疫でメインとなるのは、抗体を作るよう指令を出すヘルパーT細胞や、抗体を作るB細胞といったリンパ球になります。このリンパ球も白血球の1つになります。

以上のように、自然免疫と獲得免疫は、タッグを組んで身体を守ってくれています。かなり簡単に言うと、こうなります。
真っ先に異物に対処する自然免疫、抗体を作って次に備え、自然免疫で対処しきれなかった異物に対処する獲得免疫と、それぞれが補いあって身体を守っています。

さらに獲得免疫には、その反応機序(機序は仕組みのこと)や役割から、体液性免疫と細胞性免疫に分かれて身体を守ってくれています。



体液性免疫とは、B細胞がつくった抗体が生体に侵入した病原体に結合し、それを排除する反応を言います。

細胞性免疫とは、樹状細胞から抗原提示を受けたT細胞が特定の感染細胞や腫瘍細胞を直接または間接的に破壊する反応を言います。

体液性免疫では、主に抗体が主役となって働く免疫です。
つまり、体液性免疫の役割としては、リンパ球であるB細胞(Bリンパ球とも言います。)が産生する抗体によって抗原を無力化するわけです。ちなみに抗体を作れるのは、B細胞のみです。

それから、どうして体液性という名前が付いているのかですが、抗体が血液に溶け込んでいるので、体液性と呼んでいます。

それから、活性化されたB細胞の一部は「メモリーB細胞」となり、次に同じ異物が入ってきたときに効率的に抗体を産生できるように備えます。

一方、細胞性免疫(さいぼうせいめんえき)は、リンパ球であるヘルパーT細胞、キラーT細胞などです。
このT細胞という免疫細胞が主体となって働いている免疫が細胞性免疫です。
T細胞は、体液性免疫のように抗体を産生することはしません。T細胞自体が、特定の病原体に感染した細胞のみを見分けて攻撃し排除します。また、その作用は、長期間持続し、免疫学的記憶も成立するという特徴があります。
つまり、主に樹状細胞から抗原提示を受けたT細胞が、直接媒介して特定の病原体に感染した細胞のみを見分けて攻撃し、排除することで身体を守ります。

このように細胞性免疫と体液性免疫で大きく異なる点は、その反応機序である異物に対する攻撃方法です。
細胞性免疫では、免疫細胞が抗体には関与せず直接異物を攻撃しますが、体液性免疫ではまずは抗体を作って異物に対抗します。



第27回第1問の選択肢

人体の構造と機能に関する問題で、「ヘモグロビンは感染の防御にかかわる。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は、誤りです。
ヘモグロビンは、血液の成分で、細胞内に酸素を供給するものです。感染の防御に関わるのは、白血球です。



創作問題
人体の器官の構造と機能に関する問題で、「免疫系には自然免疫と獲得免疫があり、マクロファージは獲得免疫である。」〇か✖か






この選択肢は、誤りです。
マクロファージは、自然免疫です。
自然免疫と獲得免疫は、タッグを組んで身体を守ってくれています。真っ先に異物に対処するのが自然免疫です。生体に侵入した個々の異物(病原体等)に対する予防接種を既に受けていたり、以前にも同じ病原体等に感染したことがあれば、それが記憶されており、一度感染した病原体等に応じて抗体をつくって、特異的な反応を行うことで、次に備え、自然免疫で対処しきれなかった異物に対処するのが獲得免疫であり、それぞれが補いあって身体を守っています。
マクロファージは、異物や病原体が存在する現場に駆けつけて、異物や病原体を貪食する自然免疫です。


第24回第2問の選択肢

人体の器官の構造と機能に関する問題で、「免疫系には液性免疫と細胞性免疫があり、T細胞が関係するのは液性免疫である。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、誤りです。
細胞性免疫は、免疫細胞が抗体には関与せず直接異物を攻撃します。これに対し、液性免疫ではまずは抗体を作って異物に対抗します。
T細胞は、それ自体が抗体を造りません。細胞性免疫に分類されます。


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