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40点を目指す講義NO.23 建築協定



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


1.建築協定


1)建築協定とは


建築基準法は、最低限クリアしなければならない建物の基準(ルール)を定めるものであり、この法律は、全国一律に適用されます。

建築協定は、建築基準法では許されていることについて、地域の住民が集まって、個々の地域性に見合った内容の、建築基準法よりも厳しい制限を課す住民の合意による協定になります。

当該地域だけの独自の自主ルールをつくりたい場合に、建築協定が有効です。

例えば、建築基準法では、パチンコ店をつくることができる地域であったとします。しかし、地域の住民はパチンコ店をつくることを望んでいない。そこで、地域の住民によって、パチンコ店をつくることを禁止する内容の建築協定をつくるとか。
あるいは、閑静な住宅街ではあったが、建築基準法では、店舗付きの住宅をつくることができる地域であったとします。そして、その店舗が有名店になり、毎日多くの人がその店舗を目的に集まってきてしまう。こうなると住環境が崩れることになります。そこで、地域の住民によって、前もって店舗付き住宅を禁止する内容の建築協定をつくるとか。


2)建築協定の内容


建築基準法第69条により、建築協定で規制できることは、以下の事項になります。

敷地:土地の分割を禁止、最低敷地面積の制限、地盤高の変更禁止など

位置:建築物の壁面から敷地の境界や道路の境界までの距離の制限など

構造:木造に限る、耐火構造など

用途:戸建専用住宅に限る、共同住宅の禁止など

形態:階数の制限、建ぺい率や容積率や高さの制限など

意匠:色彩の制限(赤色はダメとか)、屋根形状の制限、看板など広告物の制限など

意匠とは、デザインのことです。閑静な居住環境を保全する目的で、けばけばしい建築物をつくってもらいたくないときに、意匠について規制をしていくものになります。

建築設備:屋上温水設備の禁止など

このように非常にきめ細かく制限することができます。そのため、建築協定により良好な街並みが形成されるわけです。


3)建築協定を締結できる区域


建築基準法において、建築協定を締結できる区域は限定されています。

市町村が条例で「建築協定を結ぶことができる」と定めているところに限られます。

というのは、本来、法律で許されていることをあえて規制することになるので、規制される区域を定めるのも、条例という民主的な形をとる必要があり、このような形にしないと納得されないからです。


4)建築協定の締結


では、建築協定をつくるためにはどのような手続を踏めばよいのか?

建築協定を定めるには、その区域内の土地所有者や借地権者全員の合意が必要です。
というのは、本来、法律によって許されていることを規制するからです。

また、ある土地に借地権者がいる場合、建物をつくるのは借地権者になるので、このような場合には、土地所有者の合意がなくても、借地権者の合意があれば、建築協定の合意として扱われます(建築基準法第70条第3項)。
要するに、土地所有者の合意があってもよいし、借地権者の合意でもよいということです。


5)建築協定のプロセス


建築協定の際には、「建築協定の区域」、「建築物に関する基準」、「協定の有効期間」、「協定違反があった場合の措置」を定めた建築協定書を作成します。

そして、その代表者によって特定行政庁に申請して認可を受けることが必要です(建築基準法第70条第1項)。

提出された建築協定書は、市町村による公告・縦覧(じゅうらん)・意見の聴取の手続きを経て、特定行政庁によって認可・公告がなされ、効力が生じます(建築基準法第71条)。

プロセスの流れ

条例の制定 ➡ 全員の同意(協定書の作成) ➡ 代表者による申請

 ➡ 特定行政庁の認可と公告 ➡効力発生

建築協定の効力の及ぶ範囲について

特定行政庁による認可の公告があった日以後に、建築協定区域内の土地の所有者や借地権者となった者に対しても、原則として、当該建築協定の効力は及びます(建築基準法第75条)。これを「承継効(しょうけいこう)」といいます。

どうしてこのような規定があるのかと言いますと、もし第75条の規定がなければ、建築協定が、そもそも合意を根拠としてその人を拘束するものであることから、後から当該地域に引っ越してきた第三者を拘束することができないからです。

また、建築協定の目的となっている建築物に関する基準(ルール)が、建築物の借主の権限に係る場合においては、その建築協定については、当該建築物の借主が建築協定の合意をしていなくても、借主は、土地の所有者等とみなされ、建築協定が適用されます(建築基準法第77条)。
要するに、建築物の借主も、土地所有者同様に建築協定に拘束されるわけです。

建築協定の及ぶ土地の範囲を協定区域といいます。
協定区域には、運営委員会が設置されます。
運営委員会は、協定区域内の住民によって構成されます。
運営委員会は、協定区域内に起こる建築行為に対して審査を行うことができます。
協定違反者が出た場合は、運営委員会が違反工事の停止や是正措置を請求します。それでも改善されない時は、裁判所に提訴するなどの措置がとられます。



平成27年問題18
建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、エレベーターの昇降路の部分又は共同住宅の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、一定の場合を除き、算入しない。

2 建築物の敷地が建蔽率に関する制限を受ける地域又は区域の2以上にわたる場合においては、当該建築物の建蔽率は、当該各地域又は区域内の建築物の建蔽率の限度の合計の2分の1以下でなければならない。

3 地盤面下に設ける建築物については、道路内に建築することができる。

4 建築協定の目的となっている建築物に関する基準が建築物の借主の権限に係る場合においては、その建築協定については、当該建築物の借主は、土地の所有者等とみなす。




解説

選択肢4は、正しいです。
建築協定の内容が建築物の借主の権限に関係する場合、建築物の借主は、土地の所有者等とみなされます(建築基準法第77条)。


6)建築協定の変更・廃止


建築協定をつくったが、かなり年月が経過して、その建築協定を変更したいとか、廃止したいということも出てきます。

建築協定の変更としては、例えば、もともと「パチンコ店をつくることは禁止する。」という建築協定だったものを今度は、「喫茶店をつくることも禁止する。」という内容の建築協定に変更するとかです。

建築協定の変更は、新たな規制になるため、建築協定を新たにつくるのと一緒であるとの扱いで、建築協定の締結と同様の手続きが必要です。
土地所有者等の全員の合意に基づく認可の申請と市区町村による諸手続き、特定行政庁による認可の公告が必要です。

建築協定を廃止する場合には、土地所有者等の過半数の合意があれば廃止の申請ができます(建築基準法第76条)。過半数でよいのは、加えられた制限がなくなるだけだからです。

そして、建築協定の廃止の場合も特定行政庁の認可、公告が必要になります(建築基準法第76条)。


創作問題
「建築協定を廃止するときは、その建築協定の効力の及ぶ土地所有者及び借地権者の全員の合意が必要である。」〇か✖か





この選択肢は、誤りです。
建築協定を廃止する場合には、土地所有者等の過半数の合意があれば廃止の申請ができます(建築基準法第76条)。


2.1人協定(いちにんきょうてい 建築基準法第76条の3)


建築協定は、所有者が1人(分譲地の事業会社など)の場合でも定めることができます。これを「一人協定」といいます。

例えば、分譲業者が、土地を区画割して建物を分譲する前に、特徴のある閑静な住宅街を目指して建築協定をつくっておくというケースがあったりします。
特徴のあるというのは、例えば、その一定の地域の建物をログハウス風にしておきたいという場合などです。

そして、分譲業者が、この段階で建築協定をつくっておくのは、分譲してからその購入者全員の賛成を得て建築協定をつくるのは困難だからです。

1人協定の場合、いつからその効力が生じるのか。

この点については、特別な規定を置いています。

1人で建築協定をつくっただけでは効力は発生しません。
建築協定の認可を受けた日から起算して3年以内において、その土地に2人以上の土地所有者が存することとなった日から(土地を1人でも取得すれば)、建築協定の効力が発生します(建築基準法76条の3第5項)。
ちなみに、この場合には、認可のあった旨の公告がなくても、その土地に2人以上の土地所有者が存することとなった日から、その効力が発生します。

例えば、分譲業者が建築協定をつくり、誰か1人に売ったら、その段階で、分譲業者と買った人を合わせて土地所有者が2人になった、その日から建築協定の効力が発生します。


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