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医学概論NO.12 ソーシャルワークを極める講座 神経系



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


心身機能と身体構造の概要の続き


(8)神経系


神経系ということで、神経の構造と機能について見ていきます。


1)神経系とは


神経系とは、身体の中で情報をやりとりし、身体の活動を調節するための情報ネットワークになります。

神経系の分類としては、大きくは、中枢神経系と末梢神経系に分けられます。


中枢神経とは、脳と脊髄の部分で、神経細胞の集中したところになります。

末梢神経とは、全身に張り巡らされたものになります。

身体の各器官の状態や変化に関する情報は、末梢神経系を通じて中枢神経系(脳や脊髄)に伝わる仕組みになっています。

末梢神経を機能的に分類すると、体性神経と自律神経の2つに分類できます。

体性神経は、知覚・運動に関与する神経です。

自律神経は、生命維持に関わる働きの制御に関与する神経ですが、内臓機能に関与する神経になります。

よく自律神経がどうのこうのという話を聞いたりします。
この自律神経は、これまたよく聞く、交感神経と副交感神経という拮抗する2つの神経系から成るもので、これが自律神経になります。

交感神経は、身体を活動的にする方向に作用します。

副交感神経は、身体を休める方向に作用します。


2)中枢神経


では、まず、中枢神経の方から見ていきます。

中枢神経には、脳と脊髄があります。

ここでは、まず脊髄に簡単に触れて、脳をじっくりと確認しようと思います。


①脊髄


脊髄で覚えて欲しいのは、脊髄は、運動神経・知覚神経・自律神経の伝導路であるということです。
つまり、脊髄は、脳から連続する中枢神経であり、人体の中心部では、背骨の中のトンネル状の空間。これを脊柱管と言いますが、この脊柱管に保護されるような形で脊髄は存在しています。

脊髄の長さは、成人で、約40cmになります。延髄から始まり、腰部まで続いています。
太さは、約1cmです。ですから、小指くらいの太さになります。
脊髄は、それぞれの脊椎で、左右一対ずつ枝分かれして神経根(しんけいこん)という末梢神経に枝分かれしています。

この神経根には、運動神経や自律神経、また、知覚神経が通っています。
知覚神経は、例えば、針を刺したときに痛いと感じるような神経です。

これらの神経根は、椎間孔(ついかんこう)という比較的狭い骨の間隙(かんげき 椎骨(ついこつ)同士の間にある孔(あなのこと))から脊柱管の外に出て、身体の筋肉や臓器に繋がっています。


②脳


脳の話に移りたいとおもいます。

脳は、内側から3つの膜に囲まれています。
すなわち、内側から順に、軟膜、クモ膜、硬膜という膜です。


そして、脳を包んでいるクモ膜と脳との間にある隙間をクモ膜下腔(くもまっかくう)と言います。このクモ膜下腔には、脳脊髄液が流れています。

このクモ膜下腔に出血が起こった状態が、あの恐ろしい、クモ膜下出血(クモまくかしゅっけつ)です。
クモ膜下出血の症状としては、バットで殴られたような「突然起こる激しい頭痛 」があったりしますが、このような症状があったら、このクモ膜下出血を疑う必要があります。

脳の構造ですが、脳は、大脳、脳幹、間脳、小脳からなっています。


脳のうち、大脳は、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉に区分されます。


大脳は、情報を識別して、それに応じた運動を命じたり(これを一次機能と言います。)、それから記憶や情動、認知という高度の精神作用(これを高次脳機能といいます。)とを担当しています。

高次脳機能は、それまで経験した知識、記憶や言語を関連づけて理解する「認知」、それを言葉で説明する「言語」、新たに記憶する「記憶」、あるいは目的を持って行動に移す「行為・遂行」、それから、社会的な行動ができる「情動(恐怖・驚き・怒り・悲しみ・喜びなどの感情)・人格」などの能力になります。

では、より個別の区分に沿って、その働きを確認します。


前頭葉は、理性、思考、意欲、感情、運動、嗅覚(きゅうかく)等の中枢になります。

頭頂葉は、痛みを感じる等の知覚、読解等の中枢になります。

後頭葉は、視覚等の中枢になります。

側頭葉は、聴覚、記憶等の中枢になります。

側頭葉が聴覚の中枢になることの覚え方
聴覚は側頭葉というのは、側頭葉が耳に近いからと覚えておきましょう。



第25回第3問の選択肢

人体の器官の構造と機能に関する問題で、「大脳の後頭葉は、 聴覚の中枢である。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、誤りです。
後頭葉は、聴覚ではなく、視覚の中枢になります。
聴覚は、側頭葉に係るものになります。

覚え方
聴覚は側頭葉というのは、側頭葉が耳に近いから。



第32回第1問の選択肢

人体の構造と機能に関する問題で、「視覚は、後頭葉を中枢とする。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、正しいです。



次に、大脳を支える幹(みき)のような形をした部分が、脳幹になります。


脳幹は、さらに、上から、中脳、橋(きょう)、延髄に分かれています。

この順番はしっかりと押さえてください。

脳幹の順番の覚え方
より脳の中側にあるのが中脳だとか、中脳と延髄を橋渡ししているのが「橋」だという感じで覚えておきましょう。

脳幹は、大脳皮質(大脳の表層)で処理された情報を脊髄に伝達して、実際の行動に反映させる機能等があります。
要するに、脳幹は、呼吸・心臓などの循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きをしています。

で、脳幹は、生命維持に関与する呼吸・循環・意識を調節するなど役割を果たす、きわめて重要な部分ですが、脳幹を含めた脳全体が働かなくなった状態を何というか?

これを脳死と言います。

脳死は、大脳や脳幹、小脳など、脳のすべてが働かなくなった状態になります。なので、心臓をはじめ、すべての臓器は自分の力で動くことはありません。ですから、どのような治療をしても、元気な身体に戻ることはなく、人工呼吸器を外せば、呼吸も心臓もすぐに止まってしまいます。
ですから、世界のほとんどの国で、脳死を人の死としています。

ちなみに大脳の機能が失われて脳幹だけが生きている状態は、植物状態と言います。
植物状態の場合、脳幹は働いているので、脳幹から心臓に命令を出して、血液を身体中に送ったりすることができます。また、自分で呼吸ができることが多く、治療を続けることで、目をさましたり、話ができるようになるなど、回復することもあります。

まとめると、「脳死」も「植物状態」も、大脳が働かない状態にある点は共通していますが、脳死は、脳幹も働かない状態だということです。



第22回第3問の選択肢

心身機能と身体構造の概要に関する問題で、「脳幹は、上部から橋・中脳・延髄の順に並んでいる。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、誤りです。
脳幹は、上から、中脳、橋(きょう)、延髄の順に分かれて、並んでいます。
橋(きょう)は二番目になりますので、この選択肢は誤りになります。

脳幹の順番の覚え方
より脳の中側にあるのが中脳だとか、中脳と延髄を橋渡ししているのが「橋」だという感じで覚えておきましょう。



第26回第2問の選択肢

人体の部位と病変に関する問題で、「脳死とは、脳幹以外の脳機能の不可逆的な停止をいう。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は、誤りです。
脳死は、大脳や脳幹、小脳など、脳のすべてが働かなくなった状態になります。よって、この選択肢は誤りになります。
ちなみに、脳幹以外の脳機能の不可逆的な停止を植物状態と言います。



次に、脳の中の間脳です。

間脳は、視床、視床下部、下垂体に分かれます。



視床は、嗅覚を除く感覚情報の処理や細かい運動や姿勢を統合するところです。

視床下部は、内分泌系の動画で取り上げましたが、司令塔として、自律神経や内分泌の中枢として、本能行動(好きとか、嫌い、あるいは美味しい、不味い等)を起こしたり、体温や体液バランスなどを調整する機能を担っています。
視床下部は、全身からの感覚情報、自律神経の情報、ホメオスタシス(恒常性)の情報などが集中しています。
そして、視床下部は、生体のすべての細胞が最適な環境に置かれるように、自律神経やホルモンを介してコントロールしています。

それから、下垂体も既に触れております。
下垂体は、内分泌器官として、数多くの成長ホルモンを分泌します。それで、ホルモンは、血管内に入り、効率よく血流に乗って全身に運ばれるという流れになります。

あと、小脳の機能ですが、運動調節機能を担当しています。


つまり、小脳は、運動の強さや力の入れ具合、身体の平衡や姿勢の維持というバランスなどを計算して調節するという、運動調節機能を担当しています。


脳血管疾患について

脳血管疾患で一番多いのが、脳梗塞です。
それ以外に、脳出血があります。

脳血管疾患は、とりわけ早期に診断が必要になります。

脳梗塞の代表的な障害としては、片麻痺があります。
病的変化の起こっている病巣(びょうそう)の反対側に麻痺がでます。
また、失語、感情失禁(感情を上手にコントロールできない状態)があります。

脳出血の代表的な障害は、片麻痺、構音障害(呂律の回りにくさ、発音が正しく出来ない症状)、共同偏視(脳の障害により、自分の意志とは無関係に両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態)などになります。

また、脳血管疾患としては、脳の血流が一時的に悪くなる一過性の脳虚血発作もあります。
脳や首の血管についた老廃物や心臓でできた血栓が一時的に脳の血管に詰まることが原因になります。
一過性なので、一過性で治まってしまいます。しかし、これが脳梗塞に移行することが非常に多いので、再発防止が必要になります。

それ以外には、慢性硬膜下血腫があります。
頭を強く打つなどの原因で、硬膜とくも膜の間にじわじわと出血して、血の塊が出来てくる病気です。


慢性硬膜下血腫の症状としては、頭痛、嘔吐、麻痺(片麻痺が多い)、意識障害が出ます。


3)末梢神経


次に、神経系の中の末梢神経について確認していきます。
末梢神経を形態的に分類すると、脳神経と脊髄神経に分けることができます。


末梢神経は、形態的には、12対の脳神経と31対の脊髄神経からなります。

脳神経は、中枢神経である脳から直接出入りする末梢神経になります。

脊髄神経は、中枢神経である脊髄から出入りする末梢神経になります。




第31回第2問の選択肢

「脊髄神経は、中枢神経である。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は、誤りです。
脊髄神経は、神経系の中でも、中枢神経ではなく、末梢神経に含まれます。
中枢神経は、脳と脊髄です。




次に、末梢神経を機能的に分類した場合は、体性神経と自律神経に分類できます。

体性神経には、筋肉が動くように脳からの情報を伝える運動神経と臭覚、視覚、聴覚、味覚などの感覚を脳に伝える知覚神経(感覚神経)が含まれています。


次に、内臓機能に関与する自律神経について確認していきます。


自律神経というのは、心筋、平滑筋、内分泌腺、外分泌腺など、自分の意志とは無関係に身体の機能を調節している神経になります。

自律神経は、交感神経と副交感神経から成ります。

交感神経は、起きている時の神経・緊張している時の神経です。
要するに、交感神経は、身体活動が活発になったときに働く神経です。
緊張している時、興奮している時、ストレスがかかっている時に、交感神経が活躍します。

副交感神経は、寝ている時の神経・リラックスしている時の神経になります。
リラックスしている時、休息している時などに副交感神経が活躍します。

この二つは、同一の器官に対して互いに相反する働きをしています。
この点、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキのイメージになろうかと思います。
この働きを拮抗的二重支配と言います。



第24回第2問の選択肢
「自律神経系には交感神経と副交感神経があり、同一の器官に同時に強く作用する。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は、誤りです。
交感神経と副交感神経は、同一の器官に対して互いに相反する働きをしています。
この働きを拮抗的二重支配と言います。




では、自律神経である交感神経と副交感神経のそれぞれの作用と身体の変化を確認しておきます。


①瞳孔は、どうなるか。

交感神経の作用としては、瞳孔は散大、つまり瞳孔が開きます。
つまり、人は目が覚めると、交感神経が副交感神経よりも活発になって、体がシャキッとして、様々な活動を行うことができるようになります。
そして、目の瞳孔は、開いて、より多くの視覚情報が脳に入るように作用するようにします。
なお、この場合の瞳孔の散大については、まわりの明るさに関係はありません。

これに対し、副交感神経の作用として、逆に、瞳孔は縮小します。


②消化腺は、どうか。

交感神経の作用としては、消化管の運動を抑制します。
つまり、胃液や腸液の分泌が減るわけです。

これに対し、副交感神経の作用として、消化管の運動を亢進させる、つまり活発にさせます。

皆さんの中には、あれ?と思った人がいるかもしれません。
皆さんの中には、今までの説明の流れ的には、交感神経がいろんなものを上昇、増加、促進させるという傾向があった、と。

このように、消化管の機能調節の部分は引っかかりやすいので、要注意です。
こういうところが試験で問われたりします。

この点、未だイメージがつきづらい人は、例えば、自分が食事をする時のことを思い浮かべてもらえば良いと思います。
大好物のショートケーキを食べている時は、おいしい、おいしいと思っているわけですが、その際、「あ~しあわせ」とリラックスしていますよね。これは、副交感神経が働いているからです。

逆に、例えば、午後一番に重要な面接が控えているなど、緊張状態にある時の食事は、交感神経が優位になり、せっかくの食事なのに、食事が喉を通らないということがあったりします。

だから、交感神経が優位になると、消化管の運動が低下し、食事が喉を通らないという状態になるわけです。
これでイメージが付いたのではないかと思います。

それからもう一つ取り上げておきます。
副交感神経が優位になる睡眠中ですが、実は、睡眠中、胃は活発に動いています。腸蠕動の促進、つまり、胃が活発に動いて、蠕動(ぜんどう)運動によって、腸の方に食物が移動していくわけです。



第31回第2問の選択肢
人体の各器官の構造と機能に関する問題で、「副交感神経は、消化管の運動を亢進する。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、正しいです。
副交感神経優位の状態になると、消化管運動が促進状態になります。



次に、気管支は、どうか。

交感神経の作用としては、気管を拡張させます。

これに対し、副交感神経は、気管を収縮させます。

気管は空気の通り道です。
我々は、緊張したり、興奮したりすると、呼吸が大きく、荒くなります。深呼吸が必要になります。これはどうしてなのか?

これは、少しでも多くの酸素を取り込もうとしているからなんです。

では、多くの酸素を取り込むにはどうすればよいのか?

これについては、交感神経の働きで、気管を拡げてやればよいわけです。
このような理由で、交感神経が優位になると、気管が拡張するわけです。

その他にも、いろいろな領域で交感神経と副交感神経の作用はありますが、何となく理解できるものが多いので、試験でこの点が問われた際は、常識的な判断で回答をしてもらえば良いと思います。


4)身体機能の調節


次に、身体機能の調節について確認しておきます。

身体機能の調節については、自律神経系と内分泌系、免疫系の三つ。これらが重要となります。
私たちの身体は、
①体の働きを調整する「自律神経」
②ホルモン分泌をつかさどる「内分泌」
③外部から進入する異物から守る「免疫」
の3つの働きのバランスを保つことで健康を維持しているわけです。

私たちの身体は、自らの身体を環境に適応させ、安定させるための「ホメオスタシス(生体恒常性)」という機能を持っています。
このホメオスタシスの3大システムが、①「自律神経」、②「内分泌」、③「免疫」になるわけです。
これらのバランスを失わせることになると、体調が崩れるわけです。
例えば、ストレスは、このバランスを失わせる原因としてよく指摘されるところになります。


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