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医学概論NO.10 ソーシャルワークを極める講座 支持運動器官



今回の内容は、YouTubeで視聴できます。


心身機能と身体構造の概要の続き


(6)支持運動器官

支持運動器官を確認しておきます。
ここのところは、筋量の低下ということもありますし、骨折とも関わってきます。

支持運動器官のうち、とりわけ筋骨格系は、人体を形づくり、安定させ、動作を可能にしています。

筋骨格系ですが、骨格を形成する骨と筋肉、軟骨、関節、靭帯、その他の結合組織からできています。


1)骨格系


まず骨格系から確認しておきます。

骨格は、骨を主とし、そこに軟骨や靱帯が連結して形成されます。

人体の骨は、何個あると思いますか。

206個の骨があります。

骨の役割としては、力学的役割と非力学的役割の2つがあります。

力学的役割には、①支柱となって身体を支え(支持)、②内臓を外力から保護し(保護)、③筋肉と協働して身体を動かす(運動)という働きがあります。

非力学的役割には、①カルシウムを骨(緻密質)に貯蔵する、②血液細胞を骨髄で新生する(造血)役割があります。

骨は、骨膜(骨の外側表面を覆う結合組織)に覆われ、2つに区別されます。
つまり、骨質と骨髄に区別されます。

骨の断面図

骨質というのは、コラーゲン繊維の質になります。
コラーゲンはタンパク質です。

骨の成分としては、カルシウムがありますが、それだけではなく、骨は、カルシウムとコラーゲンとの組み合わせでできています。

コラーゲンは、骨の強度を支える重要な物質になります。
骨の構造を鉄筋コンクリートの建物に例えると、カルシウムはコンクリートに当たり、コラーゲンは鉄筋に当たります。
建物は、コンクリートの量だけを増やしても、丈夫になりません。鉄筋で強化することで、はじめて頑丈になります。それと同じように、骨を強くするにはカルシウムで骨量を増やすだけでなく、コラーゲンで骨質を高めることが必要なのです。
つまり、「骨量(骨密度)+骨質=骨の強さ」ということになります。

骨の内部は、骨質で構成されています。骨質には2種類のものがあります。つまり、緻密質(これは、外表面の緻密で硬い部分です。)と、海綿質(これは、内部の小孔、読みは、しょうこう、つまり、小さい穴と網目状の骨梁です。要するに、建築物の梁(はり)のような編み目からなる部分です。マングローブの根っこのように密集した部分と形容しても良いかと思います。海の綿と書いて、海綿です。)からなる部分で構成されています。

骨の断面図


この緻密質の中には、血管の通路があります。
血管の通路としては、縦に走るハバース管と斜めに走るフォルクマン管があります。そして、驚く方がいるかもしれませんが、その内部に血管が通っています。
このように骨の中にもしっかりと血管が通っています。

また、緻密室にカルシウムが貯蔵されています。このカルシウムで骨が形成されます。
骨形成にとって、運動による恒常的な骨への刺激が不可欠になります。
寝たきりの高齢者では、骨の内部に力が加わらないことから、骨形成が低下し、骨量の減少を加速させます。
ちなみに、骨量は、青年期に最大となり、中年以降は徐々に減少し始めます。

また、閉経後の女性は、血中の女性ホルモンであるエストロゲン濃度が急激に低下し、それに伴って骨からのカルシウムの溶け出しが促進されるため、骨量が減少し、骨粗しょう症の発症率が増加します。骨粗しょう症の発症を防ぐには、筋量を維持するために運動が不可欠になります。

骨の内部には、骨髄というものがあります。


骨髄では、造血を行っています。
この造血を行う骨髄ですが、加齢に伴い、造血細胞は減少し、脂肪に置き換わっていくということも押さえておいて下さい。

それから、骨格系としては、脊柱(せきちゅう)もあります。

脊柱は、身体を支える柱となる骨(こつ)です。
上から、頸椎、胸椎、腰椎、仙椎(せんつい)、尾椎(びつい)に分けられます。

脊柱は、複数の骨で構成されています。



頸椎は、7
胸椎は、12
腰椎は、5個
仙椎は、5個
尾椎は、3~5個
になります。

ちなみに哺乳類の頸椎の骨は、基本的には7個です。

例えば、哺乳類であるキリンも頸椎の骨はいくつでしょうか?

あんなに首が長いので、7個以上ではないかと思われるかもしれません。
しかし、キリンも頸椎の骨は、人間と同じく7個になります。
これはちょっと驚きです。


第30回第2問の選択肢

「頸椎は12個の骨で構成される。」との内容の正誤が問われています。






この選択肢は誤りです。
頸椎は、7個の骨で構成されています。12個の骨で構成されているのは、胸椎です。



2)筋肉系

次に、筋肉系を確認しておきます。

筋肉は、収縮することによって身体の様々な部分を動かす働きがあります。
我々は、筋肉がないと動けません。

筋肉は、体重の何%を占めるかというと、70%以上を占める組織になります。
筋肉は、人の身体活動のために無くてはならないものになります。

高齢者の不活動状態は、個々の筋肉量や筋力を減少させます。加齢に伴い、筋力の低下は、60歳ごろから急激に低下します。
特に上肢筋に比べて下肢筋の筋力低下が顕著になります。

日常生活動作(ADL)の障害に及ぶ危険性を予防するためには、下肢の筋力の維持が重要になってきます。

この筋肉の分類としては、骨格筋、平滑筋、心筋に分類されます。


①骨格筋


骨格筋は、脳神経の1つである体性運動神経(運動にかかわる神経)によって支配される横紋筋からなります。

顕微鏡で見てみると、横紋状、つまり、縞模様(しまもよう)の構造が見てとれることから、横紋筋と呼ばれています。
横紋とは、細長いものに、横方向についている横縞模様のことです。


骨格筋は、骨に付着し、身体を動かしたり、姿勢を維持したりする役割があります。
大胸筋、上腕二頭筋など、一般的に筋肉と認識されているものが、骨格筋(横紋筋)になります。

骨格筋は、随意筋でありまして、運動神経によって収縮するものであって、自分の意志で動かせる筋肉になります。


②平滑筋


平滑筋は、血管、消化管、気管支、膀胱、目の光彩、皮膚に存在する不随意筋(ふずいいきん)になります。

不随意筋とは、自律神経で動きを自動調整する、つまり、自己意識下で動かすことの出来ない筋肉を指します。
要するに、寝ていて意識が無くても、しっかりと働いてくれる筋肉だということです。

随意筋と不随意筋の違いですが、意図的に動かせるか、否かです。これで分類したものが、「随意筋」、または「不随意筋」です。意図的に動かせるのが、随意筋で、動かせないのが、不随意筋です。

平滑筋は、骨格筋や心筋のように、横紋、つまり縞模様は無くて、表面が滑らかに見えます。このことから、平滑筋と呼ばれています。


第25回第3問の選択肢

「血管、消化管、気管支は、平滑筋が分布している。」との内容の正誤が問われています。





この選択肢は、正しいです。


③心筋


心筋は、心臓の筋肉です。

心筋は、心臓を動かし、血液を全身に送り出す役割を担っています。
これも大変大事な筋肉になります。

心筋は、不随意筋であり、自律神経でその動きを調整しています。
これは分かりますよね。

仮に、もしも心臓が随意筋だとしたらどうなると思いますか。
寝ている最中は意識が無いので、心臓が止まってしまうことになってしまいます。これでは死んでしまいます。そのため、心臓は、自律神経で、意志とは関係なく、その働きが自動調節され、絶え間なく動き続けているわけです。
我々人間が、意識的に心臓を速く動かそうとしても、そのようなことはできません。このときに走ったり、息を止めたら反則です。普通にしていたら、心臓を自由自在に動かすことはできません。

ちなみに、内臓も自律神経で自動調整され、絶え間なく動いています。


3)関節


骨同士の連結した部分を関節と呼びます。

可動関節では、骨格筋が関節の両側の骨に複数接着し、骨格筋同士の相互作用で関節を動かすという仕組みになっています。


4)支持運動器官に係る疾患について


支持運動器官に係る疾患としては、ロコモティブシンドロームが重要です。

ロコモティブシンドロームとは、骨や関節や筋肉などの運動器の衰えが原因で、立つ、歩くなどといった機能が低下していることを言います。
運動器症候群とも呼ばれています。

代表的な症状としては、階段を自力で登り切れない、買い物袋を持ち帰れない、15分以上続けて歩けない、横断歩道を青信号のうちに渡り切れない、家の中でしばしばつまづいてしまう、などが挙げられます。

この症候群が進行すると、将来的に介護が必要となるリスクが高まります。
高齢化の進む日本社会では、介護が必要となる最も多い原因がロコモティブシンドロームであり、社会問題となっています。

骨粗しょう症は、閉経後の女性に多い疾患です。
エストロゲンというホルモンの分泌の低下と大きく関わっています。

それから、高齢者に多い骨折については、強度の低下による脆弱性骨折が多いという傾向があります。

骨折の部位としては、腰椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折、手首の部分である橈骨遠位端骨折、肩関節から肘関節をつなぐ骨である上腕骨近位端骨折が多いです。

そして、骨折は、ADLの低下に繋がりますし、また、一番怖いのは、廃用症候群です。
筋力の低下が早期に起こってくるので、やはり廃用症候群を防ぐために、速やかな治療とリハビリが大事になってきます。

それから、支持運動器官に係る疾患として、関節リウマチがあります。
これも非常にポピュラーな疾患になります。

関節リウマチは、自己免疫疾患とも言われています。
関節リウマチの病態としては、体の免疫システムが誤って関節の組織を攻撃することによって起こります。
関節リウマチは、全身の関節が慢性的に炎症を繰り返し、破壊される病気です。

関節リウマチの特徴的な症状は、朝の手指のこわばりです。

この関節の炎症は、関節の腫れ、痛み、そして機能障害を引き起こし、放置すると関節の変形や破壊につながり、握力も低下します。
このようにだんだんと進行してくるので、早期診断早期治療をして、できるだけ進行を抑える必要があります。


介護福祉士国家試験第35回第99問

次の記述のうち、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)のある人が、少ない負担で家事をするための介護福祉職の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 部屋の掃除をするときは、早朝に行うように勧める。

2 食器を洗うときは、水を使うように勧める。

3 テーブルを拭くときは、手掌基部(しゅしょうきぶ)を使うように勧める。

4 瓶のふたを開けるときは、指先を使うように勧める。

5 洗濯かごを運ぶときは、片手で持つように勧める。



解説

選択肢1は、誤りです。
関節リウマチの特徴として、早朝の関節のこわばりがあります。
関節のこわばりがあると関節を動かしづらく、作業時に大きな負担がかかります。そのため、部屋の掃除を早朝に行うように勧めるのは不適切です。

選択肢2は、誤りです。
関節リウマチは、冷やすことで関節が動きにくくなったり、痛んだりします。なので、食器を洗うときには、お湯を使うように勧めるのが適切です。

選択肢3は、正しいです。
手掌基部(しゅしょうきぶ)とは、手掌のうち、親指の付け根から手首までの部分を指します。関節リウマチでは、手指の関節から腫れて痛みが出るので、テーブルを拭くときには、手掌基部を使うと手指への負担が軽減されます。

選択肢4は、誤りです。
関節リウマチでは、症状が進行すると手指の関節が変形し、握力も低下します。瓶のふたを開けるときには、オープナーなどの自助具を使うように勧めるのが適当です。

選択肢5は、誤りです。
関節リウマチは左右対称に症状が出やすいです。なので、洗濯かごを片手で持つと、その手に負担がかかります。両手で持って運ぶなどの工夫が必要です。




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