榊海獺(さかき らっこ)

榊 海獺(さかき らっこ) 一九九○年生まれ、東京都在住。 会社員、作家志望、エッセイ…

榊海獺(さかき らっこ)

榊 海獺(さかき らっこ) 一九九○年生まれ、東京都在住。 会社員、作家志望、エッセイスト。 『なんでもいい』『さよならPretender』 『Assort-アソート-』『Sugarless』『one scenes...』 『最低な恋の終わり 最高の恋の始まり。』

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  • Assort

    ショートショートの作品集 〈目次〉 ・Sugarless ・Voice ・Christmas Night ・Rolling Rolling ・Hanamaru ・Nice to me too ・Affterword ※本作は2022年6月〜2023年6月にアルファポリスで投稿したものに修正を施したものです。

  • さよならPretender

    往年の名曲や近年のヒットソングを添えてお届けするラブストーリー。

  • 最低な恋の終わり 最高の恋の始まり

    イケナイ関係に溺れ、最低な恋ばかりを繰り返す小都子。女性経験ゼロの人生を送り、恋に憧れる航。そんな二人のちょっと奇妙な物語。 〈Chapter〉 1.序開 2.接近 3.邂逅 4.芽出 5.成長 Short break.箸休 6.加速 7.追風 Short break.箸休 Part 2 8.夜凪 9.決壊 10.幕開 11.後書

  • one scenes...

    ありふれた日常に潜んだシーンを、場面ごとに切り取った断片集。

最近の記事

Afterword

「次はどこいこうか。」 「達也誕生日だし、何か欲しいものとか食べたいものとか、行きたい場所ないの?」 「俺は智子がいればそれでいいの。」  達也のこういうところが好きだったりする。困る時もあるけれど。今だってノーアイデアだし。  結局、表参道の街を歩きながら気になったお店に入るという、モヤモヤさま~ず方式を採用した。  さすがは土曜日の表参道。行き交う人の群れが波のようだった。車道も沢山の車が通り過ぎていく。信号に引っ掛かり信号待ちをしていたら、私達のすぐ横に白いアウディが止

    • Nice to meet you

       私と達也が出逢ったのは、都内に梅雨入り宣言が発表された六月四日のことだった。  五月五日。沙織と涼君の結婚式。  沙織は私の高校時代の友人、というより親友で、高校卒業後も連絡を取り合っていた。 「智子。あのさ。彼氏出来た!」  毎日のようにLINEをしていて、ずっと話しを聞いていたから、なんとなくそろそろな気はしていた。寧ろ多少の焦ったさを感じていたくらいだ。 「早く告白しちゃいなよ。誰かに取られちゃう前にさ。」 「でも、もしダメだったら、、、。会えなくなるの嫌だもん。」

      • Hanamaru

        ”人生は何度だってやり直せる”  カーステから流れてきたJ-popが言っていた。でも、私は知っている。やり直せないものだってあるのだと。  私が昔カフェでアルバイトをしていた頃、毎週決まって同じ時間に来る人が居た。歳は私と同じくらいの恐らく大学生。キャンバス生地のトートバッグを大事そうに抱えてやって来て、アイスカフェラテとチョコチップクッキーをいつも頼む青年。席に着くと、MacBook Airを取り出してパタパタと何かを入力し始める。課題だろうか。時たまクッキーを齧り、一度

        • Rolling Rolling

          「全人類はローリングストーンズ派とビートルズ派に分かれるんだよ。どっちも好きなんて有り得ない。」  耕太は高らかに言い放った。周囲の人間は”また始まったよ”と言わんとばかりの視線を向ける。  耕太はいつもそうだ。一度音楽の話になると、ありったけの蘊蓄をばら撒いて来る。この日も早く話が終わることを皆んなで静かに待った。その時だった。ドアを開けて1人の男子生徒が入って来て耕太に言い放った。 「そんなことないんじゃない? どっちもブリティッシュだし。そもそもロンドンとリバプールでそ

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        • Assort
          7本
        • さよならPretender
          17本
        • 最低な恋の終わり 最高の恋の始まり
          14本
        • one scenes...
          32本

        記事

          Christmas Night

           今月も半分が終わり、街中がネオンで飾り付けられている。 「ネオンはシャンパンゴールドのが一番好き。」  幸子はネオンを見ながら、そんなことを言っている。  11月21日金曜日。僕らは表参道のメインストリートを歩き、青山方面に向かっていた。 「今日は沢山買い物しちゃったな。」  両腕にブランド品のショッパーをぶらさげた幸子が呟く。 「いいんじゃない。もうすぐ誕生日なんだし。」 「そうだよね。こういう時くらいいいよね。」  幸子が幸せそうな顔をしている。僕の一番好きな顔だ。本

          Voice

           夕暮れ時を駆け抜ける京成線。まるで夜が来るのを拒むように、東京方面を目指して走っていく。その車内に僕は居た。  僕が生まれたのは千葉県の小さな町だった。東京のベッドタウンと呼ばれる町だった。見た目は然程東京と差は無かったのだが、幼少期より”東京”という街に憧れがあった。 「大人になったら東京で一人暮らしするの。」  とよく言っていたらしい。  そんな僕も高校を卒業し、大学進学を機に東京で一人暮らしをすることになった。東京に住みたかったから東京の大学を選んだのか、たまたま行

          Sugarless

          「恭子は無糖で本当にいいの?」 「うん。甘いの好きじゃないから。」 「そっか。分かった。」 恭子は昔から甘いものが苦手だった。 Facebookで恭子から友達申請が来たのは、2週間前のことだった。中学2年の秋に両親の都合で大阪へ行った恭子。風の噂では、高校で出来た彼氏と高校卒業後に若くして結婚したと聞いていた。子どもが産まれたとも聞いていた。そんな恭子からの友達申請。驚きより先に疑問が浮かんだ。なりすましを疑ったくらい。 一先ず承認してみることにした。違ったら違ったで友達

          後書

           名もなきアマチュア作家の小説をここまでお読みいただきありがとうございます。また、数ある作品の中から本作を見つけていただきありがとうございます。  お恥ずかしい話、私は20代半ばに初めて小説を読んだ人間です。そんな人間が一念発起して書き始めた本作。昨年処女作として発表した『さよならPretender』よりも前に書いていた作品となり、今回はそちらを加筆修正して投稿しております。なので、こちらが真の処女作だったりします。  さて、本作はイケナイ恋ばかりを繰り返してきた小都子と、

          Chapter10 : 幕開

          〈♠〉  目を覚ますと彼女が朝食を準備していた。”頭痛ーい”と嘆きながら。  昨夜(というより日付変更線を超えてたからもう今日なのだけれど)のことは珍しく鮮明に覚えていた。というより、忘れないように脳裏に書き留めたような感覚だ。思い出そうとすると、ニヤけてしまうような甘いひとときだった。  一夜にして、僕の初めてのほとんどを彼女は奪っていった。”男は女の最初を求め、女は男の最後を求める。” どこかでそんなことを聞いたことがあるが、僕は僕の最初を奪っていった彼女がこのまま最後に

          Chapter9 : 決壊

          〈♥〉  朝、目が覚めると隣に裸の男の人の背中が見えた。慌てて頭の中を巻き戻す。昨夜は航とBlueで落ち合い、散々飲んだ挙句航が帰りたくないと言うので家に招いた。途中コンビニか何かでお酒とつまみを買って、ウチで飲み直したのまでは覚えている。ということは、今隣で寝息を立てて眠っているのは航だ。それは確定だ。でも、なんで航は裸なのだろう。暑くて脱いだのだろうか。そんな訳はないだろう。仮に暑くて脱いだのだとしたら、なぜ私も下着すら着けていないのだろう。  とりあえず、まず服を着よう

          Chapter8 : 夜凪

          <♠>  彼女の部屋は1Kだった。ドアを開けるとまず玄関に木目調のシューズボックスと海外の街並みが描かれた絵画が置かれていた。靴は全てシューズボックスに仕舞われているようで、見えるところに靴は一足も無かった。完璧に整理されている。  そんな玄関の先にはキッチンと水回りがあり、その先がリビング。磨りガラスがあしらわれたドアを潜りリビングへ。リビングは白い壁に白いフローリングというワントーンのシンプルな作り。中央にはブラウンのカーペットが敷かれ、そこに黒塗りのテーブルとダークグレ

          Short break : 箸休 Part2

          〈🐻〉  どうもマスターです。物語の丁度いいところで、先の展開が気になるところで登場です。気になるよね。うん。気になるよね。うん。そりゃ気になるよね。俺だって気になるもん。ごめんね。空気の読めないマスターで。うん。逆に読んだんだけどね。逆にね。その逆の更に逆の逆で逆に逆の逆で何? まぁいい。  やっぱりさ、若いっていいよね。航さ、グイグイ来るじゃん。グイグイ。本人は何処まで意識してやってるか分かんないけどさ。もう、グイグイのグイグイじゃん。知らんけど。  しかしながら、今日の

          Chapter7 : 追風

          <♥>  航があんなに積極的だとは思わなかった。いや、きっと頑張ったんだよね。うん。マスターから”航君には小都子ちゃんみたいなタイプが合うと思う。”と聞いてから、私も意識をしてしまっていたみたいで、気付くと航のことを考える時間が増えた。考えると言うか気にかけるというか。そんな感じ。 「広瀬さんこれお願いします。」 「え。あ。はい。」  あれ、私、仕事が手についてない? ううん。きっと気のせいよ。気のせい。  最初は顔立ちや背格好は悪くないけど、幼すぎるというか、可愛すぎるとい

          Chapter6 : 加速

          〈♠︎〉  彼女の連絡先を手に入れた僕は、家に着いてすぐにお礼のラインをした。 「今日は会えて良かったです。連絡先もありがとうございました。」  そう送って画面を落とし、浴室に向かった。着ていた服を洗濯機に投げ入れて、42度のシャワーで貼り付いた汗を洗い流す。 「あー。」  彼女のことが頭を巡る。ドラマや映画を見返すかのように一つずつ今日のシーンが脳裏に再生されていく。走馬灯のようでもあったか。  彼女から返信があったのは、お風呂から上がりグラスに冷水を注いでいる時だった。

          Short break : 箸休

          <🐻>  学生時代友人とルームシェアをしていた想い出の地、広尾。私がこの地にバーを構えて早10年になる。  この店では日々色々な人間模様が繰り広げられている。お酒を交え仲を深める者、私が居ることを忘れキスをし始める者、痴話喧嘩の仲直りをしようとしている者、別れ話を切り出す者など様々だ。普段の私はその全てに見て見ぬ振りをする。プライバシーというヤツがあるからだ。それに、そもそも興味が無いのだ。  しかし、今目の前に居る 中川航(24)は違う。気になる。興味しかない。かっこ笑い

          Chapter5 : 成長

          <♥>  いつものようにBlueへ行くと、私の指定席(勝手に言ってるだけだけど)に航が座っていた。航って誰かって? 1週間前にBlueで会った男の子。私に会いたくて来たんだってさ。最近はそういうの無かったから嬉しいね。  飲み始めていきなり”彼氏は居るのか?”的なことを聞いてきた。この子はきっと恋愛経験があまり無いんだと思う。反応もいちいち初々しいし。まぁそこが航のいいところなのかもしれないけれど。まだ何色にでも染まる。真っ白なキャンバスみたい。  とりあえず、今回はちゃん