リピ
セミが鳴く季節、屋上には長い休みに入っているはずの少女が寝ころんでいた。
少女は制服を着て、強い日差しが照り付つけているにもかかわらずサングラスも帽子もかぶらず、仰向けになって寝転がっている。
少女の横には鞄とバスケットボール、厚底の靴が置いてある。
部活終わりに立ち寄ったのだろうか。
すると突然、
少女は鞄からスマホを取り出した。
スマホを顔の前に構えて何か操作しているように見える。
楽しくなさそうに数秒間目を閉じると、
立ち上がって鞄にスマホを入れた。
鞄を肩にかけ、こちらに向かって歩いてくる。
少女は顔色一つ変えずに僕とすれちがった。
まるで僕がいることに気づいていないかのように
結ばれていない長い髪が風に靡いてキラキラした
振り返って僕は叫んだ
「ボールと靴は!」
「それ、私のじゃないから。」
少女は初めて口を開いた。
意外と低い声だった。
置き去りになったバスケットボールと厚底の靴。
それと僕。
僕は少女がいた場所に寝転がってみる。
無気力になって体が動かせない。
誰か来ても気づかないほど、眠ってしまった。
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