見出し画像

サーバールーム、一度広げた風呂敷を畳むのは難しい。

ある程度のお金をかけた立派なサーバルームを自社敷地内に作っちゃたというお話です。そして6、7年後の現在、クラウドやグループ会社のデータセンターにサーバを移設することになり、当初の目的が失われつつあります。先を見る目を常に持ちたい、ということのが結論になります。

背景

2011年の東日本大震災の翌年のことです。すでに長年稼働していて空調機が壊れかけていた旧サーバールームに関し、より強固で堅牢な新サーバールームが社内に必要であろうという気運が高まっていました。あの当時、IT業界は震災特需のような状態だったのかもしれません。今までも何度も稟議で落とされ続けてきた空調機更改やバックアップシステム更改と合わせて、サーバールーム新設が実行できるタイミングが突然やってきました。

スペック

提案の結果、年式の古い建屋から離れ、新しい建屋内に新サーバールームを構築することになりました(東海圏)。35ラック収納、自家発電設備、部屋単位UPS×n台、免震装置、ガス系消火設備、電算機室専用空調×n台、生体認証による入退室などを装備し、のちにISMS認証取得。約80台のサーバのバックアップ(約100TB)を統合的に取得後、ブロック差分を関東圏のデータセンター(ハウジングサービス利用、n台のラック占有)に送り、もしもの時に高速復旧できる体制も整えました。億を超えるお金をかけてます。

上に書いたほぼ全てを一人でハンドリングしてやっていたのでだいぶ勉強になったし、手足を動かした経験は貴重だったと今では思ってます。1から作り上げたので、この部屋に愛着もありますね。

移設プロジェクトも無事終わり、サーバールームの運用も安定稼働中。構内の法定点検時も自家発電設備への切り替えで対応できるためサーバールーム内は無停止連続運転。(恒例だった)休日出勤による早朝深夜のパワーオフオンなどもなくなりました。万歳!

その後

あれから6〜7年が経過し、今どうなっているか。

現在、サーバールーム内のサーバそのものを関東圏のデータセンターへ移すことを始めています。重要度の高いとされていたサーバから順番に出しています。最終的には、構内に置いておく必要がある特別なサーバやネットワーク機器だけが残ることになりそう。

なぜ自社サーバールームが不要になってきたか

理由1.自社サーバールームでは運用レベルを上げにくい

守るべきもの(サーバー)をより強いデータセンターへ移設する必要ができたからです。セキュリティインシデントへの対応策を見直す過程で「このサーバールームでは守りきれない」という結論にしました。私がその考えに賛同したし、そうなるように流れを作りました。

なぜ、自社サーバールームで守れなくなったか。

理由は自社サーバールームでは運用レベルを上げにくいからでした。やはりどれだけお金をかけたとしても、24時間体制でオペレーターが常駐するデータセンターにはかなわない。データセンター運用を専門の会社にアウトソースしてもいいが、セキュリティ設備の増強や24時間の連絡を受ける社員側の体制やそういうもろもろを考えると、これ以上自社サーバールームの仕様を上げる(スケールアップする)のは得策ではないと考えました。

自然災害などフィジカルなBCP対応だけだったら、まだやれたかもしれない。セキュリティインシデントに関して24時間体制で「守る、復旧させる」というアクションを取らなければならないことが明確になりつつある過程で自社サーバールームの運用は困難だと判断したんです。

設備や機器は一時的なお金で解決するけど、センター運用、センター業務を24時間体制で社員で高いレベルで維持していくのはきつい。

理由2.自社でハードウエアを持たずにサーバー機能を利用できる

データセンターへ移設というのは、物理サーバを移動するという意味ではなく、物理サーバを捨てて、データセンタのサービスへ移行することにしました。データセンターに移行すれば、各種サービス(ホスティングサービス、バックアップサービス等)を利用できる。自社でハードウエアを持たずともサーバを維持でき、バックアップやDRも可能。

上記の2つの理由により、高まるセキュリティレベルと各種サーバのサービス要件などを照らし合わせた結果、自社サーバールームからデータセンターへの移行が決定となりました。その先でクラウドサービスへの移行も視野にいれています。

まとめ

先を見る目というのが非常に大事になっていると痛感します。2011年~2012年当時に一瞬でも今の時代のようなことをイメージできていたら。情シスコミュニティのようなものがあって横の繋がりがあったなら。もっと違うお金の使い方ができたかもしれません。

後始末は行いながら、この先の5年、10年先の未来をイメージしつつインフラ屋として事業に貢献していきたいと思っています。

追記.自社サーバールームは今後どうするの?

部屋を縮小するにしても、一時的にでもまとまったお金がかかり、悩ましいです。

エリアを物理的に縮小するとなった時に必要な再設計要素は、フリアク、空調機(エアフロー)、ガス系消火設備(排出フロー)、電源ボックス配置、ネットワーク配線、ラッキングなど。一時工事費用がけっこうかかり、それが会社側が許容できるのかどうかによります。場所単価がよっぽど高ければ工事費を出しててもサーバールームを縮小して空いたスペースを活用する、という判断になりますがそうでもない。地方都市であり、かつ、構内の敷地にある建屋の一角になりますのでスペースに困っているわけではない。

サーバールームの維持費の内訳は、5年間隔のUPSバッテリ交換(10年が装置寿命)が最大値で、残るは空調機やガス系消火設備の保守点検程度であり大したことない。電気代の方が高い。電気代は会社全体で負担していて、仮に電気代を半分にできたとしても構内全体でみると特別に目立った数字ではない。サーバールームの維持費を減らすことで、縮小工事費用がペイできるか微妙なところ。

そうなると、このままラックスペースをある程度余裕を持ったまま、あと10年くらい動かすのがベターかなというのが今の考えです。その空いたラックスペースの利用価値を生み出すなどに頭を使ったほうが気分も良い(個人的に)。

いずれにしても、物(建物、設備、サーバ)を買ってしまうと、状況が変わった時にスケールインできないので本当に困ります。一度広げた風呂敷を畳むのは本当に難しいです、というお話でした。

参考リンク

吉田さんのこの記事に共感しました。もし私が、この記事に書かれている内容を2011年~2012年ごろに理解できていたら。当時の上のものに進言できていたら。今と違う状況になっていたかも知れない、という思いで読ませてもらいました。

以上。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?