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【第十九話】舞台出演は最強のチート?!|しがない勤め人、国立文楽劇場で藤娘を舞う

舞台に出ると三倍速でうまくなる、らしいで。ようしらんけど。

そもそもなぜ私は、舞台に出ることにしたのか。

遅まきながらの四十の手習い、
春と夏のおさらい会で充分ではないか。

例えばこれがピアノだったら。
習い始めて2〜3年でホールコンサートに出ようとは思わんでしょ。

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「舞台に出ると上達が早いですよ。3倍早くうまくなりますよ。」
と、おっしょはんも姉弟子さんもおっしゃった。

とりわけ、超速で名取〜師範になられたあこがれの姉弟子さんに言われると説得力がある。

「小劇場、小劇場、大ホールの1クールを経験するのがおすすめよ♡」

そうなんだ〜
舞台に出たら姉さんみたいに麗しくなれるのか<そこの保証はしていない

んじゃ私も出てみようかな。
でもなー、ただのしがない勤め人がそんな大それたことしてもいいのかな?

・・・

たしか3倍うまくなる、って言ってたよな。
1倍=1年分のお稽古の成果とすると、3回出たら9年分!

9年ってあなた、こないだ小学校に入学したと思ったらもう中学卒業?!って年数ですよ。

ふーむ、なかなか効率のよいチートだな。

※チートとはズルい方法、くらいの意味のネットスラングである<品がない

ならば出ない理由はなかろう。
お稽古始めるの遅かった分を取り戻そうぜ!

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私が舞台出演に手をあげた理由は、このソロバン勘定以外にもある。

入門一年目の夏であった。

大阪稽古場の姉弟子YOさんの大変身ぶりに驚いたのである。

普段はバイクをかっ飛ばすオトコマエなYOさん。

舞台の幕が上がるとあらびっくり。

〽︎ 家根船のすだれゆかしき顔鳥を〜
(岸の柳)

隅田川に浮かぶ屋形船に乗る、美しく粋な芸妓さんに大変身されているではないですか!

人はギャップに恋をする。

YOさんがあんだけ変身したんやから・・・(ゴクリ)

普段はノーメイクで洒落っ気ゼロ、実用第一な私が、
人生でいちどくらいキレイかわいいビューティフル!と言われてもいいのでは?
という気になったのだ。

もうひとり、きっかけになった人がいる。

わたしの数日前に入門された美魔女の姉弟子YYさんである。

(一日でも入門が早かったら姉さんである)

YYさんは入門してほどなく、
「先生、私、舞台に出たいです~」
とおっしゃった。

(え、舞台って何年かお稽古続けた人や名取さんが出るもんじゃないの?)

おっしょはんは笑顔で、

「どうぞどうぞ、ぜひぜひ~」
「ではさっそく来年に向けてお稽古しましょうね」

(え、そんな「ちょっとお茶でも飲んでいって~」くらいの軽いノリ?)

さて翌年。

〽︎春は花 いざ見にでんせ 東山〜
(京の四季)

彼女はわが社中において、舞台出演のハードルをググッと下げたパイオニアとなった。

そんな彼女の後に続かない理由があろうか。

(続く)

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