自転車での探索!

                                 2023.05.31 さかい 悠

車窓からの眺め のどかな田畑風景(2003年頃)
車窓からの眺め 工場や大きなビルが建ち始めた頃の風景(2007年頃)


今回も20年程前、中国広東省で駐在した時期の出来事を紹介したい。

 中国駐在時、車での移動が多く、眺める景色の中からいろんな発見、興味を抱く事が多かった。
今回はその通りすがりに見つけた場所を自転車で探索する内容を紹介する。

 仕事柄 客先に出向く 購入品外注に出かけるなど日本の工場にいた時に比べ格段に外出機会が多い 客先訪問は別として、購入品の品質確認の為、頻繁に外に出る事が多かった。

 中国で加工品を購入する場合、スポットで買うものは別として、定期的に調達するものは必ず品質の見極めが必要 ただ単に注文して、現物が届けば良いというものではない。
 依頼する現場の状況、どんな機械を使っているか、手順はどうか、技術者のレベル、加工環境など品物そのものは勿論、それ以外の要因も品質、コストに影響する。
 自分の目で確認する、そうしないと継続的な品質の保証が無い、日本以外で依頼する場合は尚更である。

中国企業の工場の様子 大勢の作業員が機械操作をしながら部品を作っている(2003年頃)

 頻繁に外出は致し方ない ところが一度出かけると結構 時間がかかる。
担当者同行の場合は話し相手に成り時間はつぶせる しかし一人の場合はそうともいかない 自然と外の風景と街の様子を見る機会が多くなる。
 移動中でも滅多に眠ることは無い 同じ道や行き帰りでも変化に富んで飽きない。
頻繁に通る道、久しぶりに来た道など、今まで無かったものを見つけると自然と興味がわく。

道の両脇に並木が整備された道路を走るのは気持ちが良い!(2004年頃)

 久しぶりに通った道沿いに広々とした建物が立ち始めた 大きな工場の建設が始まったのかと思いっていたがそうでもない、何度か通るたびに完成が気に成る。

 どうやら骨董類を扱う店(古いものを扱う)が一堂に集まる市場らしい!
以前知り合いの中国人に、このあたりは以前から古い物を扱う店が集まっていると聞いた。

 久しぶりに自転車でその場所に行ってみたくなった 幸い以前出かけたことのある方角である
距離は有るが時間に制約がある訳でない 朝早く暑さを避ければそれほど苦にはならないと思った。

 しかし肝心の自転車を確認すると空気が抜け、チューブが弱っている スペアーのチューブも穴があいたまま 一通り点検を終え必要なチューブもあちこち探し、やっと台湾製を購入。
準備に時間が掛かってしまった でもこれを怠ると途中で途方に暮れる事に成る。

中国の自転車部品を扱う店の様子(1)(2007年頃)
中国の自転車部品を扱う店の様子(2)(2007年頃)

 結局、出掛ける日は翌日の日曜日にした 朝早く出発、久しぶりなのに体の動きは良い。
このあたりで一番高い山、五桂山(海抜531m)のすそ野を通る国道268号線を南に向かう
途中キツイ峠越えがある。
 最初はダラダラした登り坂が続く はじめて挑戦した時はかなりきつい坂と感じたが多少なりとも走る機会が増え、慣れたことも有りそれほど今日は苦にならない。

朝早く国道を走る 車も少なく快適な1日に成りそう!(2006年頃)

 休日にも拘らず沿道の工場は操業している 早出の従業員が列をなし、それぞれの工場に吸い込まれている。
 以前見た事のあるチャップリンの映画『モダン・タイムス』の中で人間が機械の一部の様に扱われている光景を思い出した。

 峠を越え、目的の場所に着いたのは9時過ぎ 2時間ほど走った さすがに店の開店には早すぎた 少し足を延ばし散策してみる いつの間にか日差しが強い 持ってきたボトルも空に成っている。
 所々で足を止め休んでいると不思議そうに眺める人が多い 自転車にヘルメット、おまけに派手なサイクリング用の服装で座り込んで入れば異質に見える 最近は気にしなくなったが以前はやはり気に成った。

 にぎやかな町の通りを抜け 突き当たりの橋に出る その角に以前来たことのある、大きな市場が今日もにぎわっている。

市場の近くに河があり、いろんな荷物の荷下ろし風景が眺められる。(2004年頃)


 橋のたもとで少し長めの休憩をとる 野菜の包みを手に買い物客がひっきりなしに通る 持ち物は食料品だけではない、日用品も多い 大きなお腹を抱えた若い夫婦が樹脂製の椅子を手に通り過ぎる 生まれてくる子供の為なのか道具の追加だろう 所々で立ち止まりながら見えなくなった。 

 いろんな店が並ぶ どの店も忙しそうに客の応対に追われている! 
日差しが更に強く成る 川沿いの店に船から荷揚げした布袋が積み上げられる。

 さて 一息ついた所で目的の骨董市場に戻る 益々暑さが増している 少ししんどくなってきた。 あの骨董市場からは思ったより遠くに来てしまった。

骨董市場の正面入口 派手な建物が目に付く!(2003年頃)

 真新しい建物の前に少し大きめの家具 戸板 欄間などが立て掛けてある それにしてもホコリだらけだ!

持ち込まれたそのままの状態 品物は埃だらけ!(2004年頃)


 大きなトラックいっぱいに古びた家財道具が乱雑に積まれている まもなく荷下ろしが始まるのだろう 車のナンバーから明らかに広東省のナンバーではない。

古い家具、使わなくなった建築資材などを買い付け これらを整備して販売する。(2004年頃)

 別の店では古びた品物を丁寧に洗っている 運び込まれた品物を大工道具などで補修に忙しそう いつ頃の物か解らない。

骨董市場の風景(2004年頃)

 メイン通りに面した店に入ってみた 若い女の子が一人で店番 最初は警戒している 変わった格好に自転車を店の中まで持ち込んできたからだ 店の中まで自転車を持ち込むのは盗難防止の為、鍵など全く当てに成らない 自分の目が届く範囲に置くことが盗難防止の鉄則。

 2~3言葉を交わした 明らかに中国人で無い事が解ったらしい 急に笑顔に変わった『どこから来たの?』 中山の街からと言うと驚いた様子 それもそのはずここから中山の街まではゆうに25kmはある この厳しい暑さの中よく来たねと感心された。

 店の中はどの品物も綺麗に磨かれている 先ほどの店と違い小物が多い 値段を聞いてみる さすがに高い しかし これは交渉のスタート 少し高めに言っている。

骨董店の店内(2004年頃)

 ちょっとした部屋の飾り物に良いものがたくさんある 奥の部屋にも入ってみた この店にしては少し大きめの物が飾られている 仏像 飾り用の彫刻類など この手の値段を聞いたところで全く解らない 確かに外見上は本物らしい 中には偽物も有るだろうが私には見分けがつかない。 

 仮に彼女に交渉してもさほど下がらないと思う ただの店番 交渉の幅はごく限られている。
店の中はエアコンを最強にしている、格別に涼しい 外の暑さとは大違い 少し時間を掛け涼みたい おそらく文句は言わないだろう むしろ珍しい客が来たことで気がまぎれると思った。

 店には案の定 私が出るまで誰も来なかった 当然言葉が解らない為 年代、どんな使い勝手、どんな物か詳しい説明を受けることも聞くことも出来ない ただ外見で良い悪いを判断するだけ 彼女に礼を言って外にでた。

 表通りからすこし中に入ってみた 漆塗りの小物が並んでいる。
店番のおばさんがあいそよく声をかけてきた 2~3手に取って見た 古い気もするが中をのぞくとあきらかに手が加えられている これも一寸した部屋の飾りには良い 値段も手頃 聞いた中では40元~100元位
 ※(当時の日本円レートで600円〜1500円) 
それほど高くはない しかし何となく買う気にはなれない 今回は見るだけ、次の機会にもう少しじっくり品定めをしよう。

漆小物を扱う店の店頭(2004年頃)

 それにしても先ほどの店とこの店は綺麗に清掃され、見た目は良い でもほとんどの店がほこりだらけ そのまま持ち込んだものを並べている店が多い それを理由に安く買い叩けるかもしれない。
 あまり積極的に品定めをしたくない店が多い ただ、店の数は圧倒的に多い 大げさではなく1日見て回るだけで、時間がつぶれそう。
 市場の入口に昔、人を乗せた牛車が飾れている きっと客寄せ用の展示品だろう こんな物こそ誰が買うのかと思う。

昔の牛車(2004年頃)

 昼はとっくに過ぎている そろそろ帰るとしよう 探索した地場の市場までの道のりと歩きながら骨董街の見学は見るだけでも時間が掛かった。

 午後一番暑い時間帯 帰りの上り坂は疲れと暑さで相当きつかった 何度も腰をおろし休憩をとる 途中の峠は水分を補給する店も無い よほどタクシーを拾い、自転車を積んで帰ろうとも思った。 しかし タクシーも拾えない やっとの思いで下りに成る。

 しかし、下りとはいえ疲れを癒すほどの効果は無い 何とか水分補給できる部落にたどり着き ボトルをわけてもらい、イッキに飲み干す 一息つく。
 これで何とかアパートまでたどり着けると思った矢先 突然コンクリート道路で自転車がガタガタと揺れた 『パンクだ!』 なんとも最悪の状況 チューブを代える元気もない まだ2~3キロはある。

 自転車を押しながら歩きだす しかし いつまでたっても街の建物が近づかない 幸い下りだけが救い タイヤ、チューブ、フレームに影響するが歩くよりまし、前輪をガタガタさせながら走らせる こんなに疲れるとは思いもよらなかった 行きは市場までを含めても2時間半ほど 帰りは骨董街から4時間以上も掛かった やっとの思いで部屋に戻る シャワーを浴び、夜8時過ぎまで動けなかった。

 歳甲斐も無く無理をしてしまった 普通であれば少し疲れる程度 でも今日の暑さは尋常でない おそらく路面温度で40度を超えている 最近の運動不足 こんなところで露見した、改めて鍛えなければと感じた。

 遅めの夕食を冷たいビールと日本食で一息つく そう言えば 朝から水分のみで何も食べていなかったのを思い出した これも原因だった。

 今回 車から眺めた場所の探索で得たものは運動不足の痛感 更に安易に行きたいところに行動するには少し無理が有る。
 遠出で有れば尚更 自転車のチェックは行ったが事前の道中の状況確認が足りなった。
最悪、倒れていた可能性もある せめて、途中の休憩場所、飲食場所の確認が必要だった。
それでもこれに懲りず自転車の小回りと手軽さを活用して探索は続けたい。

自分なりに自転車の魅力は以下と考えている。
 ① 道中自然との触れ合い、知らない地域への体験、見聞に成る
 ② 体力向上に有効 (手軽な手段で体力維持に成る)
 ③ 冒険心と探索にはもってこいの手段
 ④ 私は1人の行動が多いが時に仲間と一緒で行動する事で会話の手段と成る

 流石に歳と共に体力は落ちている 思い立てばいつでも出来る手段 いろんな選択肢の中に今一度、加える事も悪くない。

当時(50歳前半)はまだまだ無理が効き、それなりに回復も早かった!
今はそんなことをすればたちどころに救急搬送となる。

 駐在時代から、かれこれ20年近く、時が経った。
あの市場、あの骨董街、そして通りすがりの懐かしい飲食店にもう一度、出掛けてみたい。
Googleマップで検索するとそれらしき場所は解る 果たして今でもその場所に目的の店、市場が有るだろうか?
仮に有っても、店名が変わり、新しく建て替えたりで様変わりしている事だろう!

機会が有れば、今一度訪ねてみたい!
但し その時は自転車でなく、運転手付きの車でのんびりと車窓を眺めながらの移動としたい!

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