駐在時代(中国)の食事と健康

                                   23.03.31 さかい 悠

昨今 現地の日本食レストランでは生の刺身も普通に食べられる、20年前では考えられなかった食材

  海外駐在の悩みは仕事のプレッシャーもさることながら、慣れない日常生活で家事全般、食事の問題であろう!
 昨今は家族同伴の赴任が当たり前となり、その問題は全くないと仰る方々も増えた 然し20年前の中国では子供の教育、家族の生活、そして何より治安の問題を考えると単身赴任が一般的であった

 男の単身赴任で困ることは毎日の掃除、洗濯、食事の準備である ただ掃除、洗濯は仕事に出かけている間に現地のメイドさんに頼めば、何とかなる 問題は食事である。 
 稀に食事もメイドさんに依頼している人もいるが仕事を終え遅い時間まで拘束はやはり無理がある 更に味の好み、日本の食材を現地調達は当時としてはほぼ無理、その為 自炊は大変であった。

 食事の方法として2通りある 自炊派は先ほど述べた通りハンドキャリーで材料を定期的に持ち込む、重い荷物を帰国時に買い揃えなけらばならない。
 但し 現地で食材を調達する場合のメリットは野菜をはじめとした食材は日本に比べ格段に安い 日本食に拘らなければ食事代は格安で済ませることが出来る。

 調味料、味噌など日本特有の食材はハンドキャリーで持ち込むしかない 頻繁に出入国が出来るわけではない、その為、限られた回数の中で持ち込むことになる。 
 今はネット通販もあり、現地で容易に調達出来る 揃えられないものは無い、当時はいろんな制約が有り、自分で料理するとなると苦労した 自炊は食事をする為の選択肢の一つである。

 もう一つは外食、つまり現地の日本食レストランに通う選択肢。
当時(2000年今から23年前)現地の日本食レストランはほとんど無かった そして味はお世辞にも美味しいとは言い難い 俗に言う『モドキ』である。 それでも、常日頃、中華の油濃い食事にうんざりしている我々にとって、仕事帰りの日本の味と一杯の酒が何とも言い難い拘りである。

2003年頃の日本食レストランの店先、客を迎える為のお姉さんが着物姿で待ち構えている。

 では当時、日本食レストランはどの程度有ったのか! 私が駐在(2000年5月赴任)していた広東省中山市には1軒のみ、高級ホテルにテナントとして入っている日本食レストランも有るにはあったが毎晩気軽に出入りするほど安価ではなかった。
 当時日系企業が中山市に進出し始めた頃で日本人の大よその数は広範囲で200人〜300人程 市内と工業区に限っては100人程 当然1軒では需要をまかないきれない。
 仕事帰りに立ち寄るといつも混んでいる 相席は当然としても、毎晩席を確保することは困難 多少の待ち時間なら苦にはならないが座れば酒に始まり、食事、飲みニュケーションとなり、簡単に席は空かない、仕方なくその夜は他の中華料理を選択するしか無かった。

2003年頃の中華レストラン、大勢の中国人で混雑している。

 そんな事で日本食レストランは商売になる、瞬く間に数軒の日本食レストランが開業した。
更にうれしい事に日本人が居住するエリアに店が集中した! これは日本人を意識しての立地である 帰りの車の手配も気にせず、ゆっくりと食事、酒が楽しめる事と成った。
 選択肢が増えた事でなじみの店が出来る 1週間のローテーションで今夜はこの店、明日はあの店といろんな店で食事が出来るようになる。
 当然 店が増えるとそれぞれの好みで行く店が限られてくる あの店に行けばあの連中がいる この店はあそこの会社の誰だれが居るだろうと予測がつく。
 私(会社の連中)はどちらかと言えばいろんな店を巡回する方であった。
仕事が終わり、車に乗り込むと先ず『今夜はどの店にする!』の声が出る。 どちらにしろ選択肢が増える事は有難い。
 そうなると店側も客の奪い合いと成り、いろんなサービスが増え利用する者にとって益々歓迎

 中国人は一様に夕食は食事だけで済ます事が多い たまに家族以外で食事するときは酒も飲み、時間も掛けるが一般的に食べるのも早い、食べ終わると早々に引き上げてしまう ただ食事の量は多い たらふく食べるタイプ。
 日本人はじっくり味わって食べる 1品の量はそれほど多くない 量的に少ない日本食は中国人にあまり好まれない。 味が薄いのも敬遠されがち!
 日本食レストランを開業するにあたり、食事のメニューと単価が中華に比べ高い、更に酒を飲む、つまみも取る 当然客単価が高くなり、儲かる 商売としては成り立つ 支店を何軒も持ち、儲けていたオーナーがいた。

現在ではどんな日本酒、焼酎、ウイスキーでも手に入る 最近は中国人も日本酒を好んで飲む。 

 さて、そんな状態で毎晩利用するとなるとどうしても、味に注文付けたくなる。料理好きな日本人が来ると尚更である。 中にはこの様に作って! この調味料を使って、もう少し焼いて! などいろいろとアドバイスが入る。 その当時、料理人は中国人がほとんど、どこかの日本食で見よう見まねで覚えた程度 旨いものが出来るはずがない どうしても一言二言文句も言いたくなる 改善されメニューに加われば結果的に客の評価が良くなったりもする。

 商売として成り立つのであれば日本人のオーナー或いは日本人のコックも中国に入り込むようになる そうなると必然的に味のレベルとメニューの内容が変わってくる。更に本格的な日本料理を提供する店も出てくる オーナーの考え方も変わり、相乗効果で美味しい店が増える。

日本食レストランの厨房風景
この店は日本人オーナーが経営する店、つまみ、メニューも凝ったものが有り注文したくなる。

 今でこそ、日本の市場から直接、刺身のネタが入るように成る、当時は生物が入らない ハンドキャリーで肉や魚を持ち込んだとの話も聞いたが、税関で没収されたケースもあったと聞く。

今ではこの様な新鮮な魚が1本丸ごと生で日本から空輸出来る時代!

 2000年赴任当時は食事と言えば、中華がほとんど 唯一楽しみなのは大きな都市(深圳、広州)に出かけた折に日本食レストランを探し食べるしかなかった 唯一中山市で1軒の店でも有難かった。
時が経ち、現在は日本食レストランも多い、味もそこそこの出来で食べるに支障はない。
当時、日本食レストランの利用は圧倒的に日本人 しかし今は中国人も好んで利用する様に成った。

 自炊の選択肢も楽に成る 日本の食材も地元のスーパーで買える時代 特殊なもの以外は現地で十分揃える。 今は冷凍技術も良くなり、かなりの食材が冷凍品で賄うことも可能に成った。
 当然生活環境が良く成れば、妻帯者同伴で赴任する人も増える 日本からの出張者も普通に日本食が食べられる。

日本の天丼と遜色ない現地の定食メニュー


 我々の赴任当時は不便な時代でそれはそれで貴重な体験、むしろ楽しんでいたかもしれない。
中華のいろんな地方料理にも挑戦できた 中国人スタッフにゲテモノ料理を強要され苦痛さえ感じた事もある、今では懐かしい出来事。
 昨今そんな冒険する様な料理も少なくなった わざわざゲテモノを食べなくても十分美味しい料理が街に溢れている。
 料理以外でスイーツ、本格珈琲、西洋料理、イタリアンなど、あらゆる食べ物が地方都市で口に出来る。 それは日本の国内でも同じことが言える 美味しいものは瞬時にSNSで拡散する。

 食の調達で苦労した自炊派は圧倒的に少数派だった しかし現代は自分でも作ってみようかと思えるくらい地元のスーパーで食材が手に入る。
 自炊派は健康志向から、外食より安心 現地の外食は実際に何を使っているか? どんな調味料、どんな油など、心配すればきりがない 今でこそ衛生面も厳しく成りつつあるが当時の日本食レストランでの厨房はお世辞にも見られたものではない ましてや通りの屋台などはとても口にできる代物ではない。

 駐在当時、中華料理、日本食を食した翌日にはよく腹痛をおこしたもの!
最近はそういう事も少なくなった 食の安全、衛生面の改善にも力を入れている証拠かもしれない。

 自炊派は自分で食の安全意識が高くなる事と栄養のバランスも気を使える 半面外食はそうはいかない 美味しい物、好きなものを注文してしまう 栄養の偏りにもなる その為 体の変調をきたす人もいると聞いた 酒の量も外食の方が格段に多くなる。

 そんなことを考えると自炊派にメリットがある。 もう一つ自炊派にとって嬉しい事は中国のアパートは入居時にほぼ全ての設備が揃っている。
 キッチン、冷蔵庫、レンジなど調理生活に必要な最低限の設備は揃っている 自分で準備するものは食器、鍋、炊飯器くらい 自炊派には嬉しい配慮である。

 食事に関する内容は劇的に改善された 何も心配がいらないと言って良い!

中国の酒スーパーで売られている日本の酒類(4年ほど前)

 後は自分なりに自炊派で行くのか、はたまためんどくさい方は外食なるのか!
今まで料理などしたことのない方でも一人暮らしは料理に挑戦するよい機会! それで結構 料理にはまってしまった人が多いと聞く。 
 毎日料理するのは辛いという人の意見も理解できる そんな方には普段は今まで通り外食、そしてたまに自炊も良いのでは!  
 私の様なぐうたらでも一時期、食事場所が不便だった頃、自炊を強いられた事が有った やってみるとこれが結構食べれるもの。
 是非、食の改善、健康の為、食費節約のメリットを生かして挑戦して見てはいかがでしょう!
コロナの影響でここ3年ほど、現地に出かけていない その後も日本食レストラン、いろんな店が益々、多くなっていると聞く。

 海外に行けば先ず、食事 そんな観点から、食事をウオッチする人も納得である。
是非異国の食文化を大いに楽しんでほしい!






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