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2歳の誕生日プレゼントで大満足したこと

ムンが2歳になった。ドイツ語と日本語で育っていることもあって、言葉の出が若干遅く、それがまた愛らしい。まだまだ宇宙語で会話できるので毎日が面白い日々。嫌いな「にんじん」と、大好きな「ケーキ」ははっきり言えるけど、どっちでもいい「ごはん」とかは言えなかったり、好きすぎる車は、トミカを前後の向きを全て揃えて、あるだけの(20個くらい)車を狂いもなくまっすぐ一列に並べ、「ミテ〜!!!(外国人が話すような日本語で)」とでっかい声で叫んだりしている。
そんな普通の2歳児に、何をプレゼントしようかなと考えた結果、特に何も用意せず、どうやって1日を豊かに過ごそうか、当日になるまでそれしか考えなかったら、その日の予定もないままに誕生日を迎えてしまった。「あ!今日ムンの誕生日だった!?」と言わんばかりに。(毎日愛情を贈り続けているので、誕生日だからと言ってそれ以上のことを(自分に)求めてもな、という言い訳も含)
でもその結果、この余裕が、私にとっては思わぬ一日を迎えることになった。

姉のスーがコマなし自転車を練習しているので、この日も「乗りたい」となり、近所の公園に遊びに行くことに。フランクも来ると思ったら、前日のアルコールが残って家で静かにムンのケーキを作っておきたいとか。内心「息子の誕生日当日やのに、何言っとうねん!」と思いつつ、子どもたちを独り占めできるチャンスと捉え、さっさと家を出た。一通り遊んでいたら、近所の子どもたちも合流して、自転車の練習が自転車鬼ごっこへと発展し、子どもたちが持ってきてくれたおやつでパーティーが始まり、猫を追っかけたり、散歩の犬と仲良くなったり、休憩しに来た警備員と友だちになってまったりしたり、また別の新しい友だちが来てケンカしたりとそれはそれは慌ただしく和む時間を、少し離れた位置から観察させてもらった。子どもってすごいな〜と思いながら。

午前10時くらいから軽い気持ちで家を出て2時間くらいが過ぎて、昼食も昼寝もあるし家に連れて帰ろうかと思った瞬間に、ムンが一人で公園を出て歩き始めた。家に帰る道とは違うけど、帰れない道ではないので遠回りして連れて帰ろうかなと思ってついていきながら、グイグイ進む後ろ姿が愛らしく、見惚れつつ追いかける。ようやく家に帰る分岐点に到着。こっちだよ〜と誘うも聞かず、どんどん違う道を行く。抱っこして連れて帰ろうかなとも思いつつ、ダメなら途中でフランクに電話すればいいかとか、どうにかなることを念頭に置き、この際、彼が納得のいくまでついて行くことにした。

ここから5時間、歩き続けることになる。途中で、彼が見つけて勝手に入って行った店でテイクアウトのケバブを注文しつつも、彼はそれを食べることはなく、その並びにあったコンビニに立ち寄って納豆巻きとヨーグルトを買わされ(言葉が話せないのに、売場をくまなくチェックして「これ」と自分でレジに持って行ったのには圧巻)、持ち語の「あーけーてー」を連発しながら、ヨーグルトを飲みながら別の公園を見つけて一休み。着く頃には飲みほして、納豆巻きをすごい勢いで食べ漁るシーンがあったが、休憩を省く以外は、5時間もの間、2歳児は歩き続けることができる(その間2回うんち出た)、と証明された誕生日となった。その前の2時間も必死に遊んでいたので、7時間も昼寝せずに遊んでいることになる。

公園では滑り台の上で通り過ぎる人に向かって指を刺し、何かもにょもにょ言っている。隣の工事現場のシャベルカーを見て、「ボワッ〜!!!バガー。ウイーン」といつものように想像力を働かせ、犬が通ったら「ワンワン」と犬も驚くほど犬のような鳴き声で吠えて近づいていく。長時間の散歩の疲れなんぞどこにも見られず、満足でしかないその表情を見るとたくましくなった2歳児に涙を流したくなった。

さて、その公園から家にどうやって向かおうか、そんなことが頭を過りつつ(重くて長い抱っこは無理だし、坂だしな)、とにかく決意した「ついていく」ことだけを最後まで守り通そうとあらためて心に誓い、互いにいい塩梅で公園を出て、暗くならないうちに家に帰りたいということだけを告げ(理解してなくていい、信じるだけ)、彼のペースゆっくり坂を登った。

家のすぐ近くの最後の坂を登りきる直前で、駄々もこねず求められてもなかったけど、何かの拍子に抱っこをしたら、そのまま秒速で寝落ち。びっくりするくらいの早さで、本人も求めることすらできずに最後の力を振り絞っていたんだろうと思う。私もギリギリまでムンを信じてついていくことができて(本当なら、2歳児に無理をさせない方がいいという選択肢もあっただろうに)ちょっとだけ子離れした自分の親としての成長も感じることができて、ムンの誕生日にあらためて感謝したいと思えた。

小学生の友だちと一緒に遊んでおくーと言って公園で別れていた5歳のスーは、友だちと家に帰りついてくれていて、こちらも一安心。とはいえ、子育て(子離れ)は不安だらけだ。

この2歳の誕生日は、私にとってずっと思い出に残る日になったに違いないし、ムンにとってもきっといい時間だったに違いない。「こっちじゃない、それはダメ」とかほとんど否定されることなく、ただひたすら自分の道を歩めたのだから。これは人生にも通じることだな。

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