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【横浜】隠れ家のような中華茶屋 萬来行カフェ

 

横浜中華街

とある夏の日。

 推しYOUTUBERのライブに当選してたわたしは、横浜県民ホールへ出向いた訳だけど、そうなると当然、すぐ近くの中華街へ行かない訳がない。

 まずは真夏の太陽に焦がされながら、ライブグッズを買う列に並ぶ。
 苦行だ。
 列はなてしなく、大蛇のごとく長くうねっていて、グッズ販売ブースへたどり着ける気がまったくしない。
 そうしている間にも日頃SNSでつながってる推し仲間と出会っては、『会えた、わーい!』なんて激しく手を振り合い、盛り盛りのツーショット写真を撮ったりもする。

 これだけでもう、体力はごりごりに削られる訳だけど、グッズをせしめたところで、ふらり、癒しの地へ向かうのだ。
 中華街でお茶をするなら、わたしの向かうところは何と言っても〔萬来行〕と決めている。

 と、その前に。
 ふらり、細い路地を歩いていると、占い師さんが密集しているエリアがあって、
(中国の占いとか、半端ないイメージあるよね……)
 ためしに占ってもらうことにした。

 占い師さんは50代のでっぷり太ったおばあちゃんで、妙に上から目線が気になったけど、ひとまず占ってもらうことにする。
「占って欲しいの、仕事運? え、金運? どっちかひとつだけだよ。じゃあ占うからね」
 生年月日と名前だけの、安いコースだったせいか、ずいぶんと気忙しい。

「あんたねえ、何事も中途半端だねえ」
 ああ、やっぱりそうですか。そんな気はしているし、他の占い師さんからもそう言われたことあるし。
「そもそもねえ、あんた、飽きっぽいんだよ。それはいけないねえ」
 自覚しているけど、これはどうしようもない性質(さが)としか……。
 同じことばっかりしていると、心が摩耗していって、どうしようもないのだ。
「そういう飽きっぽい人間には、公務員がいいよ。就職するなら公務員にしなさい。転勤とかしょっちゅうあるし、そしたら飽きずに続けられるよ」
 は? え?
 いや多分、わたしには一番むいてないと思う。
 この占い師さん、どうも当てになりそうもない。態度もずっと上から目線だし。
「とにかくあんたは、目上の人から可愛がられてもらいやすいから、可愛がってもらえる内に出世しておきなさい」
 ま、これは合ってると思う。どういう訳だか、目上の人からよくしてもらえることが多いし。
 ただ、出世とか、あんま興味ない。
「最後に言っておくけどね、あんた、死んだ親族から守られてるね。おばあちゃん的な誰かに」
 ふと、中学生になる直前で亡くなった、父方の祖母を思い出した。
 もしそれが事実だったら、すごく嬉しいよね。


萬来行の内部

〔萬来行〕は、中国雑貨のお店の二階にある。
 かつて彼氏(現在の夫)と横浜デートした時に見つけたもので、青壁の内装もさわやかに、茶褐色の調度品がとても映える中国カフェだ。

 香り高い龍井茶やプーアル茶など中国茶の他にも、カフェオレなどの定番メニューも置いてある。
 ここはいつ来ても混んでるなんてことがなく、悠々と座れる。
 なにしろ一階の雑貨屋さんの中をとおって、その奥の階段をのぼらないと辿り着けないのだから、
「知る人ぞ知る……」
 という雰囲気をかもしていて、外の通りがどんなに混雑していても、ここだけ別天地のごとし。

 冬場なら、中国茶の香りに癒されながらほっと一息つくところだけど、これだけ暑いと、
「アイス・カフェオレで!」
 まあ、そうなるよね。

中国茶……より、真夏はどうしてもアイス・カフェオレ

 ふと周囲を見渡すと、仲間がいた。
 なにしろその二人組女子、ゲットしたライブグッズを嬉しそうに確認していたしね。
 会場からちょっと離れた場所で、ショッパー、つまりライブグッズ用のロゴ入り袋をもってる人を見かけるのって、妙に嬉しい。
 わたしも、ほっと一息ついたところで……。
 戦利品を確認する手をうきうきさせつつ、ショッパーを開けた。

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