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【青森】その1 弘前・さくら祭と、悠久のまったり喫茶店

 

弘前さくら祭 まだ咲いている桜も、ある!

ほぼ葉桜だらけの、さくら祭を楽しんできたよ。

 関東圏なら4月初旬が桜の季節。
 本州最北端の青森県なら、ゴールデンウィークの時期こそが満開の時期……だったらしいけど、開花が年々早まっていて、わたしが行った時はもはやほぼ葉桜。
 桜の品種によっては、咲いている木もちらほら。

「以前は、雪が残っている中で、今の時期が一番の見頃でしたけど……」
 とは、青森の書店員さんからの情報。
 ほんと、時期がずれてきてるんだな……。

まだ咲いてくれてた桜
さくら祭の弘前公園は、城の中
弘前城のお堀

 でも大丈夫。
 わたしが弘前公園へ来たのは、桜を見るためではなく、ロケ地訪問・聖地巡礼が目的だったので。
 風祭千さんの『チューニング!』という、青森を舞台に、音楽を題材とした青春小説がありまして。
『爽やかさ120%』とうたっている帯の文言は、伊達じゃない!
 ……ていうくらい、大好きな小説なのだ。

 ──しょうがないんだ。音楽がないと、私の心は目覚めないから。

『チューニング!』7ページより引用

 中学二年生の主人公たちが作中で訪れたのが、弘前公園とその周辺。
 桜が咲いていようとも、いなくとも、わたしはついに、この場所へやって来た!

 作者の、風祭千さんからの情報で、屋台が立ち並んでいることもわかっていたので、さっそく津軽そばを堪能。
 花より団子、色気より喰い気!

津軽そば
角こんにゃく

 お蕎麦の他に、おでんもあったので「角こんにゃく」も添えてみた。
 面白いのは、この辺のおでんは、お蕎麦のつゆと共通ということ。
 やさしい味わいだった。

旧市立図書館

 時刻は午前十時半。赤屋根のレトロな旧市立図書館の前で記念撮影を撮ったあと、学年主任のありがたいお話を聞く。

『チューニング!』192ページより引用

 旧市立図書館も訪問してみる。
 明治時代の建物で、とてもこじんまりとしつつも、味わいのあるたたずまい。
 ここ弘前は古くからある文化財が、とてもよく保存されていて、歴史の風格を感じさせる。
 歴史をもつ街は、どこか悠然としていて、かつ意識的にせよ無意識的にせよ心に誇りをいだいていて、言語化できない、豊かな何かを持っている気がする。
 わたしが知る中では、例えば長野県の上田市。あそこは真田の里で、やはり同じように、ゆったりとした自信のようなものが空気に漂っていると思う。

旧市立図書館の、偉い人用の部屋
旧市立図書館の前は、広場になっている

 弘前公園から東の方面へ10分ほど歩いてゆくと〔土手町商店街〕が見えてくる。
 古くからある商店街で、人通りはさほど多くはないものの、独特のぬくもりが漂っていて、なおかつ寂れた感じがしない。
 普段は深緑のアーケードが目印らしいけれど、この日は風が強かったので、たたんであった。

土手町商店街
しまってある深緑のアーケード

 大型の百貨店や古きよき喫茶店。和菓子屋、お洒落な雑貨屋さんなどがならんでいる。(中略)そのゆったり感が街並みにぬくもりを与えるのだ。まあ、今欲しいのはぬくもりよりも清涼感なんだけどね。

『チューニング!』196ページより引用

 この商店街にはおしゃれな喫茶店が多い。
 ただ、営業しているかどうかは、お店側の気分次第なところもあるようで、なんか、そういうの、おおらかで好き。
 とても古いたたずまいの建物にはいっている〔時代屋〕という喫茶店が、あいていた。
 築100年にもなる、素敵な骨董的建造物だ。
 ただ、こぢんまりした店内は、地元の常連さんでいっぱい。
「あらら、じゃあ私たちはこれで失礼しましょうかね。どうせいつも来てるんだしね」
 年配の女性グループが、笑顔でわたしを気遣って、席を空けてくれた。

喫茶店『時代屋』の外観

 リンゴジュースとアップリパイのセットを。
 青森県に来たら、やっぱりこれだよね。

リンゴジュースとアップルパイのセット

 リンゴジュースは、果肉感がどろりと残っていて、まさに、
「リンゴをそのまま飲んでいるような……」
 食感と飲みごたえだった。
 品種は王林。

 マスターが出してくれたりんごジュースは、蜜入りりんごをまるごとかじったような自然な甘みとみずみずしさに溢れていた。

『チューニング!』199ページより引用

 アップルパイの中にあるリンゴも、ごろりと塊になって入っていて、まったくケチケチしていない。
 こんなにも「そのまんまリンゴ」なアップルパイ、生まれて初めて食べた。
 ナイフをいれると、外のパイ生地が、さっくり砕ける。

食後はマンデリンの深い苦味でしめくくる

 甘いものを食べたり飲んだりした後なので、苦味の深いコーヒーで締めくくりたいと思ったしね。
 マンデリンの味と香りを楽しみながら、
(また弘前に来よう。こんなに優雅な時間を味わえるだけでも、その価値があるよね……)
 この土地が、すっかり大好きになっていた。

 つづく(次回、上品な中華料理と、わくわく車中泊)

喫茶店・時代屋の内装
風祭千『チューニング!』

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