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[特許調査]「よくばりセット」の作り方

こんにちは! 特許調査業をしています、酒井といいます。
今日は質問BOXに頂いた「ノイズの少ない部分集合の作り方」について、記事を書きます。

・・・よくばりセットのノイズの少ない部分集合をどんな観点について作るとよいか、ということに関してです。
先日の動画では、ズバリのFI、広い概念のFIとKW、KWのみ、FT、の4つの手法をご紹介頂いていました。これらの手法をどういった観点に適用すると、良い集合ができるでしょうか。
私がよくやっているのは、物質自体、機能、用途に関する観点について、それぞれ部分集合の集合を作り、それらを合わせて全体の集合にする、という方法です。調査テーマに依存するとは思うのですが、観点の選び方、どんな観点は入れるようにしているか、参考にさせていただきたいと思いました。
どうぞよろしくお願い致します。

おー!
結論を先に書くと・・・私もだいたい同じです。
物質自体、機能、用途 は、化学・材料系の観点として頻出ですよね。

さて
ご質問の中に出てくる「よくばりセット」とは、
知財実務オンライン「意外と知らない調査の基本」で取り上げた内容です。開始後60分の辺りで出てきます。

1.よくばりセットとは何か?

世の中に出回っている「よくばりセット」といえば

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・みんなに人気があって
・安定した美味しさもあり
・「えーー!選べな~い。迷う~!!」と言われるあれこれを
・少しずつのセットメニューに☆

って感じですよね?
調査の「よくばりセット」も同じです。

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2.特許調査における「よくばりセット」作戦

調査における「よくばりセット」作戦とは
・適合率が高くてノイズが少ない(おいしい)集合を
・小さめ(件数増やしすぎず)に、複数作って
・盛り合わせる(合算する)ことで、極力ノイズを増やさずに再現率を上げる
作戦です。

質問BOXに送ってくださった方は
化学系のお仕事をされている、ということだったので・・・
やっぱり、化学の香りのする例題がいいですよね。(ごそごそ)

3.検索のお題「めがね」

今日は「めがね(ブルーライトカット)」を検索してみます
テレワークがすっかり定着した感のある昨今の知財業界。
通勤がなくなった分、ついつい長時間仕事してしまって・・・なんてお話も聞こえてきます。

モニターやスマホの見すぎは良くないよ!って言いますが、
特に目によくないのがブルーライト(短波長の光線)だと言われています。最近はブルーライトカットコーティングが標準装備のショップ、増えてるみたいですね!(画像出所は zoff Webサイトです)
めがね派のみなさん、愛用品にはどんなコーティングがかかってますか?

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・・・実際には
・コーティングで反射する方法とか
・レンズ基材に含まれる材料で吸収する方法なども あると思うのですが

今日は「化学の香り」をさせたいため(←?)
ベンゾトリアゾール系の化合物で吸収するタイプを中心に
検索してみたいと思います。

3.2 ここで余談

私・・・以前、メーカー知財に勤務していた頃、担当していた部門のひとつが「光学事業部」(メガネレンズ、コンタクトレンズの事業部)だったのです。

時計の会社にめがねの事業部、って、ちょっと変わった組合せな気がするのですが。
昔(昭和40~50年代とか)、地方では「時計めがね店」という業態が多くて、販売店さんからの「セイコーブランドのメガネを扱いたい」とのご要望から、光学事業部ができた、と聞いたことがあります。
今は長野でも、めったに見かけなくなりましたねー。時計めがね店。
・・・では、本題に戻りまして。

4.めがね(ブルーライトカット)を検索する

(1)予備検索=キーワードだけ / 機能で検索

今回「化学の香り=ベンゾトリアゾール」をターゲットといたしましたが、分類特定の予備検索として、機能ベースで検索します。

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ヒット公報例。

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(2)FI記号「眼鏡」 × ベンゾトリアゾール

メガネの分類 × ベンゾトリアゾール で検索してみます。

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ここで考えたのは
「ベンゾトリアゾールが入っていたら 必ず青色光カットか?」
「青色光カットは、必ず「青色」とか書いてあるか?」ということ・・・

これ、ヒット率を上げるとき「基本的には両方NO」と思っていた方が良いと思います。キーワードに「必ず」はあまりないし、分類にも「必ず付与される」事はない、と思うのです。

で、前者ですね。「ベンゾトリアゾールが入っていたら 必ず青色光カットか?」というと、そこは不明なので、ひとまず#13を採用。#12も広めの部分式(案)に仕上げていけるといいと考えます。

(3)メガネは必ず「メガネ」と呼ばれるか?問題

上記の#13を開いてみたところ、です。

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調査業をしていると、何というんでしょう・・・「疑心暗鬼のかたまり」になれる性格が調査に役立つのかも、と思う時がたまにあります。

上記検索結果だと「メガネの事を、必ずメガネと呼ぶわけではなく、光学材料用組成物と呼んだりプラスチックレンズと呼んだりもする」事に気をつけないとな・・・と。このような表現は予備検索に戻していきます。

(4) 光吸収材料(ベンゾトリアゾール) × 用途

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物質の分類に用途のキーワードを掛けるパターンです。

時々「物質のFI(IPC)」×「用途のFI(IPC)」はナシですか?というご質問があるのですが

個人的には「ナシ」です。両方付与されている保証がないので・・・というのが、主な理由です。

また、上記だと「ベンゾトリアゾール」×めがね、となっていて
「青色光カットは使わないの?」と思われる方、いるかもなのですが、これは「ベンゾトリアゾール」の件数が少なかったためです。件数がもう少し多かったら、使っていると思います^^
こういった部分は、臨機応変に変えたり、違う組合せを試したりできると良いですね!

(5) その他(今回はめぼしいFタームがないけれど・・・)

上記見出しの通り、このテーマだとめぼしいFタームがなさそうです。
残念。

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普段だとこのあたりでFタームを検討します。有用そうな組合せがあれば、複数通り試すこともありますよー。

まとめ:ベースは「調査対象」です

私がよくばりセットを作る時は、
基本構成が「調査対象」になってます。

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上記の例だと 「A×B×C」の組合せはほぼ変えません。
それで、
Aを分類に置き換える、とか、Cを分類に置き換える
という感じに作っています。ご参考になれば!


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