諫早湾開閉問題

今回は新聞記事についてまとめていく。

 長崎県の諫早湾にある堤防排水門の開閉巡って問題が生じている。元々、二枚貝のタイラギ、アサリ、タコ、シャコなどがたくさん取れた「宝の海」だった有明海に、堤防排水門を1997年から閉門したことで赤潮が生じて凶作になってしまった。閉門は、国が干拓事業を推進するために行われ、2008年にそれが完成し、営農が始まった。これに対して被害の出た漁業者は国に「潮の流れが変わった」などを理由に訴訟を起こした。その結果、福岡高裁は「開門」を命じ、確定判決となった。しかし、当時は民主党政権であり、その後自民党に政権が移ると、営農者からの訴えを認めて「閉門」の判断が出た。ここに司法判断のねじれが生じたが、その後国が開門の向こうを訴えた結果、最高裁は開門しないこととして、判断が統一された。法廷闘争はここで決着がついたものの、当該地域における漁業者と営農者の対立は残り、今なお分断している。
分断の主な原因は政権移行の前後において、政府が司法の判断を変更したことにある。しかし、同じ「政府」であっても、「民主党」と「自民党」で主体が異なることから、訴えを起こし、判断の変更を要求することに問題はないと考えられる。問題は、訴訟内容が漁業者の不利益か、営農者の不利益かという、問題の裏返しであったのにも関わらず、判断が変更されたことにあると考える。このことから、司法は政権が民主党か自民党かで判断を変えた、いわゆる司法の政治化が起こったと考えられる。
 今回、諫早湾の堤防排水門の開閉をめぐって、司法の政治化と地域内の分断という二つの問題が浮き彫りになったといえる。

参考文献
社説「諫早湾開門せず」, 中日新聞, 2023年3月20日, 朝刊, 10版, p.5.

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