見出し画像

質問と回答

サカエヤ+、牛歩のような進み方でいつ完成するのやら。ようやく枝庫にレールがつきました。

取引先(すき焼きのお店)の方から質問がありましたので、やりとりをまとめてみました。

・・・ここから

◯◯(店名)で以前迄は、◯◯牛を使っており、近江牛と比べサッパリしていたのですが、滋賀、◯◯(産地)とあまり遠くない距離でなぜそこまで違いが出るのでしょうか?

新保さんが送ってくれるお肉はサシがあっても脂っこさを感じないのはなぜでしょうか?

比べては申し訳ないのですが、家でスーパーで買ってくる霜降り肉と違い噛んでいて味がとても濃く感じるのはねかせ方、熟成のしかたが違うのか、それとも牛自体の差や餌、牧場の違いなのでしょうか?

素人の様な質問で申し訳ありませんが…お時間ある時で宜しいのでお答え頂きたく思います。
宜しくお願い致します!

・・・ここまで

◯◯牛に限らず、ちゃんと手間をかけてやれば、ある程度はおいしくなってくれます。僕が知ってる和牛の生産者の多くは、牛の良し悪しは血統と餌だと言います。間違いではないのですが、生産者が言う良い牛というのは「格付け」です。誰もがA5を目指して肥育します。そのために血統を選びます。うちはA3を目指しているなんて聞いたことがありません。

格付けは見た目の評価なので、おいしさは含まれません。だから、血統や餌というのは半分正解で半分は不正解です。不正解というのは、肉屋で血統や餌を気にして仕入れてる人はいません。いるとすれば自らセリで購買している場合だけでしょう。

僕が思う牛肉のおいしさは、「手当てと保存」です。これに尽きます。ちなみに僕がメディアなどで、紹介されるときは必ず「熟成肉の」と冠がつきます。その方が分かりやすいのだと思いますが、熟成肉に嫌悪感を持ってる人もいるわけですから、ヒヤヒヤします。僕が言う「手当て」には熟成も含まれます。

味(香りも含めて)を追求すると、昔ながらの「枝肉からの仕事」に行き着きます。一般的な流通の話をしますと、牛肉は屠畜されると枝肉としてセリにかけられます。その後はだいたい7日以内に骨を抜いて(脱骨)、部位ごとに真空パックにします。キリング(賞味期限)は30日、なかには40日のところもあるみたいですが、僕の経験では、10日も過ぎれば、パック内にドリップが溜まり肉も脂も酸化します。赤身の肉なら3日もすればうっすらドリップが発生しだします。

こうなると、味が抜けてしまうので、風味がなく柔らかいだけの肉になります。しかし、柔らかさ=おいしい、と感じている人がほとんどなので、違和感を持たれる人は少ないのではと推測します。

ステーキや焼肉なら、焼き方やたれでおいしく食べることができても、すき焼きは誤魔化せません。というのも、酸化して味が抜けた肉は、わりしたが肉に浸透しないのです。なので、香りのない味気ない肉という印象になります。

僕がこだわっているのは、

・生産者(だれが育てたか)
・200頭規模の牧場であること
・但馬の血統
・滋賀県産まれ滋賀県育ち
・枝重400kgまで
・できれば雌
・もちろん枝肉であること
・真空はしない
・手当て

です。

牛肉に限らずですが、手をかけてやらないとおいしくなってくれません。素人でちょっと習えば、焼肉屋でもステーキ屋でも、やろうと思えばできます。それで流行っているところも実際あります。それはそれで僕は凄いと思いますし、一緒にイベントやりたいです、と誘われている案件もあります。断る理由がなければやりますし、僕もまた新しい発見があるかも知れませんからね。

ありがとうございます!