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僕が考える近江牛のこと

たまに会社のHP経由で見積もり依頼がありますが、見積もりほど労力に見合わないものはないと思っています。見積もり作成に時間かけて、値段だけで判断されても価値までは見えない。型番商品なら見積もりも有効かも知れませんが、それすらいまは比較サイトで値段がわかりますし、加工という手間が入る仕事に見積もりは意味がないと思います。特に僕のように料理人に合わせた肉を仕上げているオーダーメイドは、同じものでも値段が違うこともあるので、まったくもって意味なしということです。

それと、こんな問い合わせもあります。「いま仕入れてる牛肉が高すぎて安いのを探している」、、と。

なにを考えてるのか。

値段ありきの人は信用できないし、すぐに手のひらを返すのはどの業種も同じ。

ところで。

熟成肉や経産牛ばかり扱っているように思われがちですが、圧倒的に近江牛を扱う比率のほうが高いです。店舗に近江牛の看板こそあげていませんが、ショーケースの大半は近江牛です。

ジビーフもブラウンスイスも経産牛も愛農ポークも他に流通していないので唯一無二です。でも、近江牛は滋賀だけではなく京都でも東京でも買うことも食べることもできます。通販サイトからなら全国どこにいても手に入ります。

近江牛はどこで買っても、どこで食べても同じとまでは言わないまでも、あまり変わらないと思っています。生産者云々よりも、肉になったときの手当てと保存、その後の販売方法、料理人次第で味が決まると思っています。

そんななかでも、僕が手当てする近江牛が一番おいしいと思っています。もし、僕が手当てする近江牛以外で僕が感動したら、僕は近江牛の販売をやめます。それくらい自信を持って販売しています。スポーツで例えるならジビーフやブラウンスイスは競技人口の少ないマイナーな種目であり、近江牛は、野球やサッカーのように競い合う相手が大勢います。そこで一番になるには、簡単なA5を仕入れるだけではなく、違う角度でA5同等レベルの価値付けが必要だと思うのです。競うのではなく新たな価値を定義するということです。

僕が扱う近江牛は、セリでの買い付けから始まります。枝肉を目利きするときの基準は、格付け、重量、生産者、産地、そして選枝眼です。

僕の目利きは、僕の技術が活かされるような肉であることが前提です。だから、だれが料理してもおいしくなるA5はほとんど買いません。「簡単」より「難しい」、お金になるよりならない、狭いところを狙ってこそだと思うのです。

身近にいるスタッフでさえ、僕の仕事はざっくりやっているように見えるかも知れませんが、かなり計算しています。それが自信にもなるのですが不安でもあります。

お客様からのおいしくなかったの感想も年に数回あります。硬いとかおいしくないとか。あきらかな好みの問題以外は、落ち込むこともないですが、噛み切れないほど硬かったとか、香りについての感想は理由を追跡します。

ともあれ、お客様からの感想は良くも悪くもやれるだけのことをやっての成績表であり、全力投球は後悔しようがないのです。手抜きや気の緩みこそ後悔のもとです。

ということで、A5はほとんど買いませんと言いながら、A5を買いました。手のひら返しました(笑)

もちろん、理由があってのA5です。そのあたりのことはまた機会があれば書きたいと思います。

ありがとうございます!