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『鬼火』とサティ

もう 至る所で使われて 手垢がついたような曲になってしまった エリック・サティの『ジムノペティ』だが 初めて聴いた時には 身体に震えがきた
学生の頃だから 40年もむかしのことだ
弾けもしないのに 電子ピアノを買って サティの楽譜を買いに行ったら フランス版で取り寄せになる とのことだった
確か へ音記号は ハニホヘだからドレミファ・・・ファの音
みたいなところから始めて No.1から練習し No.3まで覚えた
よっしゃ 完成 と思って No.1から弾き始めようと思うと 頭がパプピペパになって 何にもわからなくなった
俺には ピアノ脳はないんや

ルイ・マルの『鬼火』の中で 全篇で使われていたのが サティのジムノペティとグノシェンヌである
『鬼火』は アルコール中毒の男(モーリス・ロネ)が 更生施設を出てからの数日間を描いた映画である
ジムノペティ・グノシェンヌは それぞれ3つの短編からできている短い曲で グノシェンヌの方が 闇が深そうで より好きだ
これらの短い曲が モーリス・ロネの感情の起伏の表現に かなり深く関与している 曲想は ゆったりとしたシンプルなもので 映画はピーンと糸を張ったような緊張感を保ったまま しかし 淡々と進行していく 

その瞬間まで




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