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水民マガジン 夜郎自大サップ  サップと中島敦

サップを始めた頃(3年半程 前のことだが)サップに乗るのが怖かった
落ちる時は いろいろな動画を参考にして 腰から落ちると 腰を強打する事が多く 落ちるのも怖かった
腰を強打した夜に 食事中 くしゃみをした瞬間 ギックリ腰を併発し イスに座る事さえできなくなった
楽な姿勢を求め 床に仰臥すると 今度は起き上がる事が出来ない
昔 『ジャイアント・タイフーン』という漫画があって 力道山先生に 風呂場でバーベル(ダンベルではなかったと思う)に手足を縛り付けられ そこに蜂の巣を投げ込まれる という試練を受けたジャイアント馬場が 蜂に無茶苦茶刺されながら 呟く
『このままでは 死ぬのみ!』
馬場の身体に火事場の馬鹿力が発生して 手足に縛りつけられたバーベル(もう一度言う ダンベルではない!)を動かして 窮地を脱するのである
わたしの場合 蜂こそ投げ込まれなかったが カミさんの冷たい言葉が 容赦なく突き刺さる
『早く自分の部屋行って ベッドに寝たら良いのに・・・』
そ・・それができたら わし・・こんな ところで・・・悶絶してへんわ
痛くない筋肉の動かし方を模索しながら 30分後 ようやく立ち上がったわたしである
そんな哀しい体験を経て サップから落ちる時は 川底の地形を考えて普通に足から飛び降りる という智慧をつけた最近のわたしである

わたしのサップは 割りと大きめで安定感がある と言われる オール・ラウンドタイプのサップである
にも関わらず 水の上にボードを浮かべ その上で立った瞬間 無理っ! と思った
しかし さすがに3年半やっていると 安定してきて ちょっとしたと技もできるようになる(まだ 落ちるけど)
ボードに乗るのが さほど恐怖に感じなくなったのである
そこで 中島敦の小説『名人伝』のエピソードを思い出す
弓の修行をやり尽くした主人公は 山奥で仙人のような生活を営む名人に師事し まず 巣を張った小さな蜘蛛を見続ける という修行をする
最初は やっと見えるような小さな蜘蛛が 見続けることにより どんどん大きく見えてくる

サップも 最初は 畳を立てに二分したサイズが 練習を繰り返す事により 畳1畳分になり 四畳半になり 最後には 大広間のようになる
『どうやって パドル使うんじゃ〜っ!!』

だが 心配することはない
中島敦の『名人伝』のように サップの存在すら忘れてしまえば良いのである


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