見出し画像

「ウォーハンマー40,000」のクルセイドゲームプレイ+第0次ナラティヴレポート

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



経緯

 「ウォーハンマー40,000」には、様々なゲームプレイの仕方がある。

 10版においては、大きく分けて、競技性を重視しているマッチプレイと、物語性を重視しているナラティヴプレイという分け方をしているように感じている。

 現在、ネット上などの募集では主にマッチプレイが多く(とは言っても、トーナメントほどに競技性を追求していないものも多いが)、リヴァイアサン・トーナメント・ルールを用いたゲームが盛んであるように感じている。

 一方、ナラティヴプレイは、様々な下準備や、追加のルールが必要であり、頻繁に行われている、という印象はない。そのナラティヴプレイにも色々とあるが、その中でも『クルセイド・ルール』は公式が強くフォローしているルールの一つになる。

 これは一定の人数で、一定の期間で行われるキャンペーンプレイの一種であり、各ゲームを通じて、自身のアーミーを強化させたり(あるいは逆に負傷してしまったり)、設定を深めたりというTRPGのような要素があるゲームとしてデザインされている。

 かねてよりプレイしたいと思ってはいたのだが、ウォーハンマーストア池袋で定期的にゲーム会を主催されているメメント森さんが開催する『池袋クルセイド』にお誘いをいただき、参加させていただくことになった。

 バトルレポートは多くのプレイヤーによって投稿されているが、10版のクルセイド・ゲームのレポートは多くない。僅かでも記録を残し、後のプレイの参考などになれば、と思い、各ゲームプレイのナラティヴ風のレポートを残していければと思っている。

 また、キャンペーン全体が終わった暁には、実際のマッチプレイと比較しての感想も記載する予定だ。いつものようなメカニクス的な比較や感想は、そちらの記事に任せ、本記事では、バトルレポートのような、各戦闘を記録するものとしたい。



前提

 クルセイド・ルールが何であるかを端的に言えば、「ウォーハンマー40,000」におけるキャンペーンゲームであると言える。

 複数のプレイヤーを集め、各陣営に分かれる(ここでいう陣営は、帝国・ケイオスといったような既存のものではなく、それを下地にしたクルセイド用のものだ)。異なる陣営同士で複数回ゲームを行い、その結果で陣営の勝敗が決する形になる。各ゲームによって、ユニットは経験を得て、成長したり、逆に負傷を追って、不利な特徴を持ったり、という形になっている。

 要は、ゲームの上にメタ的な構造を付け足す(キャンペーン化)ことや、各ゲームの影響が次のゲームにも影響を与える(強化や負傷)こと、各ユニットの活躍などを記録することにより、ナラティヴの側面を強め、競技性をある程度抑制した遊び、とも言えるだろう。複数人戦や統率者といった要素を加えて、競技性を抑制することにした(結果的になった)「マジック:ザ・ギャザリング」の統率者戦に近い部分もあるかもしれない。

 詳細は以下の記事でも語ったが、元々ミニチュアゲームはゲーム性を厳密に突き詰めるのが大変な構造をしていたり、TRPGとは近しい関係にあることもあって、このような遊び方の需要は十分にあると考えられる。


 元々、自身で組立・塗装をすることもあり、各モデルやユニットには愛着が湧きやすい。このような遊び方は、ミニチュアゲームと親和性があるようにも思える。実際のキャンペーンを通して、どのように感じていくのか、今から楽しみだ。

 本キャンペーンでは、現在、最新のクルセイド・ルールである「パーリア星間結合」のルールに従って、ゲームを進めていくことになる。

 簡単に紹介しておくと、筆者が使用するアーミーは、ケイオス・スペースマリーンだ。本編の物語的にもヴァシュトールを介し、少しだけ関連性のある勢力となっている。


 以下のナラティヴレポートの文章は、作中の人物による文章であり、筆者の思想を反映したものではない(主に帝国ディスなど)のではない点にご留意いただきたい。

 また、写真や記録などを十分に取っていなかったため、レポートとはいえ、記憶が曖昧な箇所がある。あくまで、これらの『戦果』は、彼の主観であって、実際に発生した『ゲームの結果』と厳密に一致していない可能性がある、ということでご容赦いただきたい。(もちろん、大筋は合っているはずで、脚色などはしていない。ただ、射撃対象などが微妙に異なっていた可能性があるとか、そういうレベルの誤りがある可能性がある)


 最後にはなりますが、いつもゲーム会を主催してくださっているメメント森さん、また、実際に対戦していただきているプレイヤーの皆様には感謝してもしきれません。本当にいつもありがとうございます。何かありましたら、ご気兼ねなくご一報ください。すぐに対応致します。



第0次ナラティヴレポート

魔導造主の先遣部隊

 <歪み>の力によって、スカーレン星系に降り立ったケイオス・スペースマリーンの軍勢の先遣隊の一つ。それが『ヴァシュトールの点火器』と呼ばれる我々の部隊だ。我が部隊の作戦行動こそが、戦争の業火を上げることになるきっかけとなる。その指揮を採る<ウォーロード>こそが私だ。一方、同時に私はこの部隊のただの一つの部品に過ぎない存在でもある。

 私のような、小さな一つ一つの部品が一つの装置を構成し、一つ一つの装置が一つの機械を構成する。そして、その強大な機械が、帝国という巨大な欺瞞を破壊していくことになるのだ。

 そのための部品が私であり、そのための装置がこの部隊である。

 我々の目下の目的は、重要な資源であるブラックストーンの確保、そして、その調査である。そのために派遣された我が部隊の規模は、十分であるものの、大きいものであるとは言えない。

 一方、<捜索者>を気取る帝国軍や、<介入者>であることを理解しているかも怪しいオルクやティラニッドと言った獣たちが想像以上の規模に膨れてきている。これらの攻撃をかいくぐり、多くの任務を遂行し続けるのは、想像以上に難しい。

 他にも資源を割かねばならぬ計画がある中で、不要なリソースを浪費するわけにはいかぬ。早々に難しい選択を迫られることになった。

 ただ、それはこの地を守ろうとしているネクロンたちも同様なようだ。道理を理解しようとしない者たちの方が耐えがたかったのだろうか。どちらからとも言わず、自然と互いが攻撃し合うことはなくなり、代わりというように帝国軍やゼノどもへと攻撃を集中するようになった。これは望外な共闘と言えるだろうか? 実際のところ、ネクロンと手を組み、この地の<守護者>として立ち回ることになったと言っても過言ではないだろう。ここに降り立った直後の自分に聞いても、信じらない前提だと答えるに違いない。

 だが、このような争いだけが残る混迷の時代において、すべての事象が理解できる、と驕ることこそ、無知の証左。

 現に今、迫りくるクリムゾン・フィストの軍勢に対し、我々は<防御>の体勢を固めている。<バランス>を重視する帝国たちに対し、先制攻撃はできず、優位も取れぬだろうが、しかし、クォンタムシールドの満ちるこの場を守り切ることこそが、戦略的な勝利と言えるだろう。まず、この場を<堅守>し、<最後の一兵まで>戦い抜くことこそが肝要だ。

 あちらから見れば、本作戦はさながら、<クォンタム攻囲>と呼べるものとなるだろう。だが、生き残るのはこちらの方だ。

 まだまだ、すべての軍勢が準備を整えているとは言い難い。軍団単位での交代すらも珍しくないだろう。

 そのような状況での勝利は、大勢へ影響しないだろうが、しかし、その経験は我が部隊の血肉や歯車となり、成長の糧となるのだ。



第0次作戦<クォンタム攻囲>

 数多くのネクロンの拠点を守るように建てられているのが、このクォンタムシールドだ。いくつかのシールドコンジットが、ドカドカと音をたてながらシールドを発生させている。出力は弱く、直接的な攻撃には用を足さないだろうが、距離のある攻撃を防ぐことはあるだろう。

 このシールドを維持することが<防衛側>であるこちらの最終目的であり、<攻撃側>であるあちらは一つでも多く、このシールドを解除しようと企むだろう。この装置こそが、作戦の目標でもある。

 これに勝利することができれば、ここは安全に軍備を再整理する拠点とすることができるだろう。それが今の我が部隊に必要かどうかはあやしいところではあるが……しかし、備えておくに越したことはない。

 数多の戦火の残り火か、この地にはいくらかの廃墟が残っており、視界や巨大な兵器の移動を妨害する。これを上手く使用しなければならない。


 こちらは、まず、<カルティスト>たちを中央に出す。新米たる彼らは血気こそ盛んなれど、装備は貧弱、技量も乏しい。せめて、装置の盾となり、敵の進軍を防ぐための捨て石となればよいが……

 左翼の廃墟に身をひそめるのは、身体の変異が強く、銃器すらも持てない体となり果てた<ポゼッスド>だ。射撃による圧をかけることはできぬが、その強靭な肉体そのものが剣であり、盾でもある。

 対する右翼には、<ディーモン・プリンス>が座する。地獄炉の武器に宿されたルーンが怪しく発光し、辺りを照らしている。その圧力は、並大抵の人間ならば、立っていることすら困難なものだ。この度の作戦では、その刃はどれだけの血を啜ることになるのだろうか。

 背後を固めるのは、<ワープスミス>たる私と、巨大な魔導兵器である<フォージフィーンド>だ。悪魔を機械に宿すことで、口や腕からエクトプラズマを吐き出すこの兵器が生まれる。半分悪魔半分機械といった風体だ。これを相棒と呼ぶのは、いささか感傷的に過ぎるだろうか。しかし、そう呼んでも差し支えはないだろう。これの不調や負傷を直し、その業火に焼かれる者たちを少しでも増やすことが、私の任務の一つではあるのだから。

 <オブリタレイター>、<ターミネイター>といった決戦兵器とも言える古参兵たちは、<歪み>の中へと身を隠している。適切な時に、適切な場所に現れることができる、ということ自体が、痛烈無比な武器である。


 対するクリムゾン・フィストは、ヴィークルを主体とした攻勢を仕掛けている。後方には、<インパルサー>や<グラディエーター・ランサー>、<バリストゥス・ドレッドノート>といった最新の兵器が睨みを利かせ、その火力を活かすように<レイヴァー>や<ヘヴィ・インターセッサー>といったあまり見かけない兵科が正面に抑える。

 補給が間に合っておらず、こちらの編成には、強力な火力がない。歩兵が主体だ。それを見越すかのような巨大な鉄塊に嫌な予感がよぎるが、それが予感のままでいられるようにするのが、こちらの役目だ。

 今まさに、戦いが始まろうという時、<レイヴァー>がその身軽さを武器に、中央の廃墟に近づかんとする。それに気を取られていた合間、その瞬きするような瞬間に、背後にビーコンが突き刺さる。

 この発光には見覚えがあった。<ターミネイター>のものだ。下手にそちらに構えば、前線は崩壊してしまう。その逡巡の間が開戦の合図となった。睨み合っていた両者の拮抗が崩れ、クリムゾン・フィストの猛攻が始まる。

 考える時間も与えられず、戦いの幕が上がったのだった。



先鋒の立ち回り

 <レイヴァー>はそのままの勢いで中央の廃墟に侵入。無人のシールドコンジットへと迫り、そのシールドの電源を落とした。防御を捨て、身軽さを活かした機動で、早くも一つの目的を達成させられてしまったのだ。

 右翼の<ヘヴィ・インターセッサー>は廃墟に迫るものの、こちらの<ディーモン・プリンス>を警戒してか、中には入らない。しかし、その後ろには<グラディエーター・ランサー>が構え、睨みを利かせている。

 左翼のシールドコンジットへは、<バリストゥス・ドレッドノート>が<インパルサー>を随伴し、やってくる。<インパルサー>は輸送用の車両だ。中にはスペースマリーンどもが乗っているのだろう。

 戦線を押し上げ、こちらの出方を見るように停止する。新米であることを期待したが、流石のクリムゾン・フィスト。古参兵であり、熟練兵だ。


 とはいえ、こちらもただ指をくわえているわけにはいかない。シールドコンジットの防衛こそ、本作戦の任務であり、目標だ。

 まず、損傷を覚悟しつつ、<ポゼッスド>が前進。左翼を支えるのは<ポゼッスド>しかいないのだ。驚異的な膂力から繰り出される一撃は、時にドレッドノートの鋼鉄すら切り裂くことがある。それを期待しての前進だ。

 当然と言うように、<インパルサー>の<警戒射撃>が飛んでくる。よりにもよって、<インパルサー>には<インフェルヌス・スカッド>が隠れていたようだ。彼らの最新の火炎放射器は、動いている対象にも確実に届く。被害を避けることは叶わなかった。しかし、想像よりも被害は軽微。そのままこれらの兵器へと近づき、動きを止めるしかない。

 対する右翼の<ディーモン・プリンス>はシールドコンジットのある廃墟へ近づくだけに留める。その<モンスター>のごとき巨体で廃墟に入るのは難しい。それが可能であっても、<グラディエーター・ランサー>の砲塔がこちらを向いている。攻撃を完全に避けることは叶わなくとも、その時は今ではない。無駄な損傷は避けるべきだ。

 中央の<カルティスト>たちは、中央の廃墟へ。スペースマリーンに対して、有効な打撃を与えることは難しいだろうが、だからといって、留守番をしているわけにはいかない。せめて、足止めにはなってもらおう。

 <フォージフィーンド>と私は中央の廃墟に侵入した<レイヴァー>へ攻撃を試みるべく、位置を調整する。私の調律したエクトプラズマキャノンがうなりを上げ、敵が廃墟の中にいることをものともせず、照準を合わせた。

 ごう、という轟音が私の体から生えている機械の触手を震わせる。この瞬間のために、私は調律の腕を磨き続けているのだ。3門もの砲台から放たれる業火は、さながら小さな爆発にも等しい。廃墟の中にいたはずの<レイヴァー>は跡形もなくなっていた。すんでの事で撤退しただけかもしれないが、この作戦にはもう関わることはないだろう。最初の戦果である。

 その砲撃による間隙を突き、<ポゼッスド>が突撃。<インパルサー>に接敵する。悪魔的な怪力を発揮し、<インパルサー>の装甲を切り裂くものの、破壊には至らず。やはり、先ほどの射撃で兵が減っているのが効いている。返しの攻撃だというように、<インパルサー>の体当たり。装甲による衝撃が<ポゼッスド>を襲う。致命的な攻撃にはならないが、両者ともに消耗を強いられることになった。



中央を巡る応酬

 相手の士気は衰えることはなく、むしろ、盛大だ。

 指揮統制が引かれ、彼らは一旦、態勢を整えることにしたらしい。スペースマリーンは、さながら<撤退>のような動きであってもなお、姿勢を崩すことはない。その動きにかどわされた者に冷徹な銃火を浴びせるのだ。それは<インパルサー>のような機動兵器であっても変わらない。圧倒的な訓練量や統制がそれを可能にさせる。その古巣の強みは我々こそが、誰よりもわかっている。油断をすることはない。

 <インパルサー>は<ポゼッスド>から距離を取り、射撃攻撃。<バリストゥス・ドレッドノート>の攻撃も加わる。体が変異しているとはいえ、この猛攻には堪えるだけで精一杯だ。半壊と言ってもよい状態と化す。

 このような左翼をしり目に、右翼は前進。<ヘヴィ・インターセッサー>がシールドコンジットに手をかけ、機能を停止させる。<グラディエーター・ランサー>は動かずに睨みを利かせている。まずいことに、あちらの作戦は順調に進んでしまっていた。戦場の左右で争いが激化する。

 時が来たというように、<歪み>が開き、<ターミネイター・スカッド>が手隙の中央に現れた。ビーコンはこちらの陣地の奥深くに突き刺さっているが、それをお構いなしに、戦場の中央に現れる。あのビーコン自体がブラフということなのだろう。ビーコンを刺す、ということ自体が、我々に対する圧力になる、ということを明確に理解しているのだ。ビーコンがある以上、こちらはそれを意識して動かざるを得ない。しかし、だからといって、相手はそれに囚われる必要もない。ビーコンそのものが、柔軟な思考を縛る枷になってしまうということか。

 <ターミネイター・スカッド>には、旗持ちの<ターミネイター・エインシェント>、この軍団の指揮官であろう<ターミネイター・キャプテン>が合流しており、主力だろうと思われる。士気も十分だ。

 それに相対するのは、前進した<カルティスト>たち。弾を発射できるというだけの銃器や、鉈のような武器しか持っていない彼らに相対する<ターミネイター>は、同類とは思えないほどの差を感じる。その差は、何よりも対峙している<カルティスト>たちが感じているだろうが……

 しかし、到着した<ターミネイター>たちは、そのボルターの銃口を<カルティスト>には向けない。どういうことだろうか?

 と思ったのもつかの間、<ターミネイター>たちは一気に距離を詰めてくる。十分に離れていたと思っていた<カルティスト>たちは意表を突かれた形だ。あの距離すらも、安全であると言えないのか。あの奇妙な、銃撃をしなかった間は、この<突撃>を成功させるための布石だったのかもしれない。あっという間に、<カルティスト>たちに、そして、中央のシールドコンジットに肉薄した。

 <カルティスト>たちが武器を構える間もなく、パワーフィストが振るわれる。たった一つの機械化された拳から繰り出されているとは考え難いほどの殴打の波。その波濤が静まった時、そこに残った者はいなかった。全員が殴殺、あるいは、逃走。どちらにせよ、一瞬にして全滅してしまった。

 これこそが、スペースマリーンのエリート。一騎当千の名に相応しい。

 虐殺の場と化した中央とは異なるものの、左翼でも<バリストゥス・ドレッドノート>が<ポゼッスド>目掛けて突進し、その重量で<ポゼッスド>たちを圧殺しようとする。その強靭な肉体でどうにか耐えたものの、すでに虫の息となっている。

 あっという間に、天秤はあちらに傾いた。


 こうなれば、力を温存してる暇はない。

 <ターミネイター>の到着に合わせるように、こちらも<ケイオス・ターミネイター>が<歪み>から現れる。鏡写しのような彼らだが、しかし、現れたのは中央ではなく、右翼。<ディーモン・プリンス>のバックアップをしながら、中央にも右翼にも銃口を向けている。

 今度はその左右の鏡写しのように、左翼の廃墟のそばに<オブリタレイター>が現着。左翼と中央の両者を睨み、前線を維持しようとする。

 問題となるのは、目下、中央のシールドコンジットだろう。中央に対して主力を投入していることからも、この場所になにかの<思惑>があるのかもしれない。中央に直接的に対応できる者もいない。

 ここに、火力を注ぐべきだと判断した。

 従来、<ポゼッスド>の支援を行うはずであった<フォージフィーンド>の銃口を中央に戻す。心苦しいが、<ポゼッスド>には孤軍奮闘してもらうしかない。左翼を制することはもはや望めないが、せめて、兵器の足止めをしてもらうほかあるまい。

 とはいえ、<ターミネイター>に火力を割かなければいけない状況が続けば、戦場そのもので不利になってしまうのは火を見るよりも明らか。ここはリスクを背負ってでも、殲滅速度を上げなければならない。私は、<フォージフィーンド>のリミッターを解除し、さらに<悪魔の盟約>を結んだ。

 リミッターを解除することで、<フォージフィーンド>の火力はより温度を上げる。さながら、溶鉱炉に放り込んだように相手の装甲が熔けることになる。<暴発>の危険性はあるが、今はもっと危険なものが目の前にある。最悪、<暴発>しても、私が直せばよいのだ。

 加えて、<悪魔の盟約>は、我々の切り札と言える。この恩寵は、攻撃をさらに苛烈にする助けになり、多勢に無勢を覆したり、到底届かぬと感じるほどの装甲を貫くことがある。とは言え、悪魔は常に代償を求める。意思が弱ければ、己の魂すらも奪われることもあり、使い所は考える必要がある。

 両の腕と顎から露出する装置が、エクトプラズマの輝きを宿し、そして、そのエネルギーが一気に<ターミネイター>に襲い掛かる。一斉放射。オレンジ色の爆発が連発し、土煙が消えた後にも残っているのは、キャプテンのみであった。これは、想定通りであり、予想以上の成果でもあった。

 想定通り、というのは、ターミネイター・アーマーがエクトプラズマキャノンに弱い、という順然たる事実である。命中さえしてしまえば、エクトプラズマの温度は、ターミネイター・アーマーに致命的な損傷を与え、機能の維持を困難にさせる。また、その爆炎の広がりは、基本的に複数人で行動しているターミネイターの運用にも突き刺さる。最近、プライマリスでもターミネイター・アーマーを着ることができるようになったのか、戦線に<ターミネイター>がいることが増えた。このような戦場において、<フォージフィーンド>はとても頼りになる相棒となるのだ。

 一方で、予想以上と言うのもまた、攻撃が安定しない、という順然たる事実から来ている。上述のような強さを持っていても、サイキックによるシールドや、攻撃そのもの回避されてしまう、という問題はあるし、そもそもとしてエクトプラズマの出力は安定しない。宿っている悪魔の気まぐれなのか、その魔炎は安定から程遠く、3門もの砲台をもってしてでも、十分な量にならないこともある。我々ワープスミスがいくら腕を振るおうと、悪魔の気まぐれを直すことはできない。せいぜい、攻撃の精度を上げるぐらいだ。

 だから、この結果はどちらかと言うと、悪魔の気まぐれがこちらに味方した結果、と言えるだろう。しかし、それを掴めたのは大きい。

 その戦果をみた<オブリタレイター>が砲撃を開始する。ターゲットにするのは、<バリストゥス・ドレッドノート>か、<ターミネイター・キャプテン>か。僅かな逡巡の後、後者を選んだ。

 <バリストゥス・ドレッドノート>に接近している<ポゼッスド>を避けながら、敵の装甲を打ち抜くのは至難の業だ。こちらも火力を絞れば絞るほど、出力が安定しないことも多い。より確実性のある<ターミネイター・キャプテン>を狙うことで、中央に再び隙を作ることを優先した。

 結果、その目的は成された。中央のシールドコンジットは無効化されたままに、再び無人と化す。

 対する右翼では、<ディーモン・プリンス>が射撃の後に突進。<ケイオス・ターミネイター>はそれを射撃で援護する。しかし、<ヘヴィ・インターセッサー>のグラヴィス・アーマーはそれを耐えた。

 地獄炉の武器は、何人かの血を啜るものの、全滅には届かない。<ケイオス・ターミネイター>も、その乱戦のさなかにあっては、突撃する隙を見出せず、射撃による援護に徹する羽目となる。

 中央以外の前線は大きく変化することなく、戦いは続いていく。



戦いが決する時

 やはり、中央には何かがあるようだ。

 <インパルサー>が、再び無人となった中央のシールドコンジットに強襲。速さを殺さぬまま、射撃デッキから<インフェルヌス>たちが降車し、シールドコンジットの周囲を固める。

 同時に、<グラディエーター・ランサー>の砲塔が火を噴く。その圧倒的な火力は、皇子という肩書に相応しい装甲でさえも貫く。たった一撃。しかし、その一撃で、<ディーモン・プリンス>の半身を抉り取るには十分だった。一気に半壊まで追いつめられる。

 だが、そもそも、クリムゾン・フィストは兵が削られすぎた。それぞれの攻撃は効果的な戦果を挙げているが、しかし、こちらの<ポゼッスド>はまだ健在で<バリストゥス・ドレッドノート>を足止めされてしまっている。

 戦線を支える『数』が圧倒的に足りていない。

 返すこちらは、<オブリタレイター>が<バリストゥス・ドレッドノート>を射撃し、これを粉砕。ようやく、<ポゼッスド>が解放される。文字通りの最後の一兵、満身創痍と言った状態だったが、悪魔の恩寵が輝いたのか最後まで自身の役目を果たすことに成功した。

 <ケイオス・ターミネイター>が<インフェルヌス>を射撃しつつ、<ヘヴィ・インターセッサー>に肉薄。<ディーモン・プリンス>と共に白兵戦を仕掛ける。さしものグラヴィス・アーマーもこれには耐えられない。右翼のシールドコンジットの電源も入れ直し、形勢が固まってきた。


 もはや、大勢は決してきたが、しかし、それほど重要な作戦でもなく、元々がそれぞれの経験を得るための戦いという側面もある。

 両者が、僅かでも追加の戦果を得るために、と戦いを続ける。

 <インパルサー>などが<ディーモン・プリンス>に追加の砲火を浴びせるも、その<歪み>の皮膚を貫くには至らず。<グラディエーター・ランサー>の主砲も、その手数の少なさがネックとなり、命中させることは叶わなかった。

 序盤こそ、何かの寵愛を受けているかのように、あちらの弾は吸い付き、こちらの弾は弾かれていたが、終盤はそれに見放されたように、こちらの弾が吸い付き、あちらの弾は芯を捉えることができなくなっている。まさに偽りの皇帝の信望者に相応しい様相だと言えるだろう。

 となれば、こちらは止めを刺そう。

 <ケイオス・ターミネイター>の射撃・白兵の両者の攻撃は、古参兵に相応しいものだった。<悪魔の盟約>による怪力もあり、<グラディエーター・ランサー>の装甲を一気に抉り取る。

 <ディーモン・プリンス>の一刀は、機動力のために装甲が手薄の<インパルサー>へと向く。その刃が鋼鉄を切り裂き、その心臓部へと害をなした瞬間だった。

 爆裂音。

 <恐ろしき最期>と呼ぶべき爆発だ。せめてもの抵抗と言うように、爆炎が牙をむく。幸い、<インパルサー>に近づいていたのは、<ディーモン・プリンス>だけだった。その強靭な体力により、致命傷は負ったものの、撤退には至らない。

 だが、<インパルサー>の近くにいたのは、こちらの兵だけではない。数々の攻撃を受け、満身創痍となっていた<インフェルヌス>も爆炎に巻き込まれ、そして、姿を消した。せめてもの抵抗として自ら爆発に巻き込まれたのか、あるいは、爆発の音や光に気を取られているうちに撤退したのか。

 どちらにせよ、これにて、クリムゾン・フィストは完全に撤退。轟音が響き渡った戦場に再び静寂が戻った。

 妨害の手がなくなった中央のシールドコンジットに火を灯す。幽炎のようなシールドが以前のような輝きを取り戻し、辺りを照らす。こちらが到着した時よりも、さらに朽ちた廃墟が広がり、地面には爆炎の後が残る。無機質な廃墟の様とは対照的な、硝煙や鉄や肉の焼き焦げた臭いが漂い、この場が戦場であったことを確かに伝えていた。こちらの戦力も削られたが、しかし、悠然と点灯するシールドの灯が、本作戦の成功を誇示している。

 長きに渡るであろう戦い。しかし、その一つが、今確かに終わったのだ。



我々が得たもの、失ったもの、続くもの

 各自、役目を十分に果たしていた。

 この地の防衛のために、<最後の一兵まで>ここを<堅守>するという当初の思惑を十分になすことができたと言える。

 視界を遮るものが多く、適切な射撃や突撃を行うことができなかった時もあり、十全に力を発揮できたとは言えないが、悪い結果ではなかった。

 本作戦の<最高殊勲>に相応しいのは、やはり、<ポゼッスド>だろう。敵兵を撃滅したわけではないものの、ずっと左翼を維持し続け、その火力を一身に受けてもなお、最後まで生存したことにより、こちらは他の部分に力を注ぐことができた。後詰の火力が、別の方面を攻撃した時などは、まさに期待を裏切られたかのように感じられただろうが、それでも敗走することはなく、敵にかじりついていた。まさに孤軍奮闘だ。素晴らしい。

 一方、問題なのは、<カルティスト>たちだ。

 生き残った者たちに、新たな信望者を加えて、再び編成し直したのだが、彼らは戦いに<疲労>したと嘯くのだ。その足取りをみれば、<ターミネイター>による損害がトラウマとなっているのが手に取るようにわかる。

 なんということだ!

 狂信者どもは、その威勢と数だけを頼りに部隊に組み込んでいるのであって、それが削られては元も子もないではないか!

 まあ、仕方があるまい。

 このまま放置するわけにもいかない。物資はわずかしかないが、そのなけなしのものを振る舞って、彼らには意気というものを取り戻してもらわねばならない。もし、それでも取り戻せないというのならば……私のドリルや触手が、機械だけを相手にするとは限らない、と知る時が来るだろう。

 本経験は、我が部隊を強化するに足るものだった。<ケイオス・ターミネイター>や<フォージフィーンド>、<オブリタレイター>は大きな損傷もなく、無事に<昇進>していた。この<戦いの栄誉>は、今後の戦いをより優位に進めるためのより強力な武器になり得るだろう。

 こうして、我々は次の作戦を見据える。そして、いずれまた、戦いが始まり、戦いに身を投じ、戦いが終われば、戦いに備えるのだろう。

 そう、この世界に残るは、戦争のみ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?