“平成のブレイキングダウン”地下格闘技とは何だったのか? 佐野哲也
――今日は佐野さんに2010年代前半の格闘技界を席巻したアウトサイダーについて語っていただきたいと思ってます。佐野さん、よろしくお願いします。
佐野 こんばんは、佐野です。よろしくお願いします。
――こうして佐野さんと話をするのも10年ぶりぐらいですね。
佐野 そうですね。高田馬場の練習後にインタビューしていただいたとき以来です。
――場所まで覚えてるんですか。
佐野 いや、もう練習後だったんでよく覚えてますよ。パンクラスの長岡弘樹戦のちょっと前に。
――佐野さんに「原稿チェックは必ずさせてください」と相当警戒されていた記憶はありますよ(笑)。
佐野 そういうところは覚えてらっしゃるじゃないですか(笑)。
『紙のプロレス』系の読者なんかはそういうイメージがありましたんで。
――『紙プロ』の信用のなさを痛感した次第です。最近はブレイキングダウンが人気というか、いろんな意味で世間にも届いている中で、アウトサイダー出身の選手もブレイキングダウンで試合をしています。アウトサイダーの有名ファイターだった佐野さんはブレイキングダウンに出ないんですか?
佐野 出ないです(キッパリ)。まずオファーは来てないですし、そもそもボク自身、出るメリットがないですし。
――メリットを感じてブレイキングダウンに出る人が多いですね。
佐野 はい。結局ブレイキングダウンに出る人って、YouTubeをやっていたり、名前を売りたい人が出ると思うんですよ。ボクはMMAの試合自体に出るか・出ないかでいうとおそらく出ない可能性が高いですし、名前を売る必要がそんなにない。そこが一番大きな点です。2点目として、1分間の試合にボクは向いてない。スロースターターですし。
――佐野さんは根性系で粘って粘ってみたいなところがあるので、1分間だと粘る前に終わってしまうということですね。
佐野 そうですね。1分間だと先に先手取ったほうが勝っちゃいますし。あと打撃がメインじゃないですか。いま柔術とグラップリングの練習しかしてないので無理かなと。
――でも、佐野さんは打撃でいうとアマチュアシュートボクシングで無双してましたよね。
佐野 何回優勝したかはわかんないですけど。6回か7回ぐらいですかね。
――そこまでアマチュア・シュートボクシングにずっと出続けてる人っているんですかね。
佐野 普通はプロからオファーが来るんじゃないですかね。ボクの場合、そういうオファーとかなかったんで……。
――面白いです!(笑)。いまはブレイキングダウンを叩く声もあるんですけど。アウトサイダーがいろんな選手を輩出したことで、そういう可能性を持って見ようという声もあるんですけど、佐野さんはどう思われてるんですか。
佐野 そうですね。でも、ブレイキングダウンの試合ってそこまで見たことないんですよね。吉永(啓之輔)さんがGREATプロレスの井土徹也選手とやってる試合や、あと初期に菊野(克紀)さんが出た試合ぐらいで。批判をされているのは、試合もそうかもしれないんですけど、その前の余興なのかはよくわからないですけど……。
――乱闘を誘発しがちなオーディションですね。
佐野 そこは批判されてるんじゃないんですか。椅子を投げたりとか。結局ブレイキングダウンとアウトサイダーの大きく違うところとして、アウトサイダーは3分2ラウンドや5分2ラウンドのMMAですよね。アウトサイダーはルール的にまだ他の団体にも通用しやすくなるかなって。もちろんアウトサイダーはストップが早かったりしましたけど。
――一時期アウトサイダーも乱闘が目立っていたところはありましたけど、佐野さんの頃はどうだったんですか?
佐野 めっちゃありましたね。ボクが一番最初に出たのがアウトサイダー第4戦なんですが、そのときに現在俳優になった黒石(高大)くんが先に入場していた対戦相手にいきなり殴りかかるんですよ。
――試合が始まってから殴ればいいのに!(笑)。
佐野 結局、試合不成立で終了したんです。
――ひどくて、すごい!!(笑)。佐野さんはプロレスファンだったじゃないですか。プロレスファンって、その乱闘が本当にアクシデントなのか、それとも確信犯なのかだいたい見えたりすると思うんですけど……けっこうスレスレの質問ですね(笑)。
佐野 なんでしょうね……。だいたい控室にいるからわかんないんですよね。モニターあるんですけど、音声が切れてるんですよ。ただ、その黒石くんの乱闘のときだけは、セコンドの人や応援の方々が入ってくるスピードが異常に早かった印象はありますね。「あ、なんかすごい早いな」って
――もともと不穏な空気を察していたんじゃないけども。
佐野 どっちが仕込んでるのかは知らないですけど。本当の仕込みなのか、それとも誰かが「ちょっとお願いしますよ」と言っていたのかはボクにはわかんないです。これはわりと後半なんですけど、大きなアクシデントとしては、酔っぱらった観客がリング上に椅子を投げちゃったんですよ。
――ありましたね!
佐野 それがラウンドガールの方に当たって。けっこう大ごとになりましたね。
――佐野さんは乱闘に巻き込まれたことはないんですか?
佐野 ないですね。ボクは乱闘を一切しないんですけど、勝手にマイクを取ってしゃべってたりしましたけど……。試合で勝ったときに、たまたま元K-1の小比類巻(貴之)さんがゲストに来ていて。総合に転向する前で、そのあとリングスに1回出たことがあるんですよ。
――ありましたね、小比類巻貴之一度だけの総合格闘技。
佐野 誰の許可も取らずに「小比類巻さんせっかく来てるんだから、ボクとやりませんか」とアピールしたら、小比類巻さんがリングに上がってくれて。でも、何も打ち合わせないからお互いに困ってしまって、仕方なく前田(日明)さんが上がって、なんか場をおさめるっていう……。
――ハハハハハハ! それはあとから運営の人に何か言われませんでした?
佐野 そのときは怒られなかったですけど、だいぶあとになって怒られました。
――あとになってから?
佐野 2年後ぐらいに運営の人とめちゃくちゃ揉めたときがあったんです。そのときに「おまえ、あのときも勝手なことしやがって!!」と。
――ここぞとばかりに掘り起こされた(笑)。
佐野 積もり積もっていたものもあったんでしょうねぇ。逆にシバターに挑発されてリングに上がったときもありました。シバターが「次は佐野、おまえと電流爆破やってやる」って(2012年2月12日)。
――それってシバターがYouTubeをやる前のことですよね。それは何か仕込みとかがあったわけじゃなくて?
佐野 ゼロです。未来を予見してかどうかわかんないですけども、リング上でシバターにこう言ったんですよ。「君と絡んでも損しかしないから、絡みたくない」って。
――たしかに見る目がありますね(笑)。久保(優太)さんにアドバイスしてあげたかった。
佐野 でも当時のシバターは絡んでも損しかなかったですけど、いまはYouTubeとかあるじゃないですか。だから絡んでも損はないということもあるのかなと。
――久保さんもそっち方面に色気がある人ですしね。あのとき久保さんのセコンドについた宮田和幸さんと芦田崇宏さんがYouTubeでこの試合について語っていたんですが、シバターはアウトサイダーのときにもワークをやっていたんじゃないか説。
・シバター八百長説の真相は?
・アウトサイダーの運営と揉めた理由
・人気が火をつけたレンタルビデオTSUTAYA
・ 4回も戦った吉永啓之輔
・前田日明からのダメ出し
・アウトサイダー以前の朝倉未来……などなどまだまだ続く!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?