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【ゆるやかな狂気】横山武司「日本の柔術家で俺が最もMMAに向いている」

RIZINフェザー級にニューカマー! 脅威の極め力を持つ横山武司14000字インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)

・サトシ・ソウザ 人生はたまに負けるのがちょうどいい

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――RIZINデビュー戦は見事な一本勝ちで飾った横山さんにいろいろと伺います!Fighting NEXUSフェザー級王者として初のメジャー登場ですけど、いつもと違うところってありました?

横山 今回はけっこう減量がキツかったんですよね。1ヵ月で10キロはやるもんじゃないなって。

――いつもはどれくらい落としてたんですか?

横山 いつもは5~6キロ。それくらいだったら2~3週間前から軽くやっていれば落ちるんですけど、今回は筋トレやったり、肉体作りをやったので10キロも落とすことになりましたね。

――それで相手の計量オーバーを聞いたときはどう思われました?

横山 計量オーバーはないなーと思うけど、気持ちもそのぶんわかりますね。マジつらかったんだろうなって。なので思ったよりイラッとしなかったですね。

――やっちゃいけないことだけども、減量の過酷さはわかると。

横山 つらさわかるわー、マジきつかったんだなーみたいな。

――キャッチウエイトで試合をやることになりましたけど、試合をやらない選択はなかったんですよね。

横山 試合をやらないことは頭になかったですね。1・6キロオーバーですよね。5キロオーバーとか言われたら「うん?」ってなるけど、それでもたぶんやっただろうなって思います。

――5キロオーバーでも!

横山 やっぱり見に来てくれたり、期待してくれる仲間たちがいるんでやるしかないし、相手が体重オーバーしてる中で、問答無用で勝てばカッコいいじゃないですか。

――なるほど(笑)。

横山 マジ、俺チャンスだなーって。「相手が計量オーバーしちゃいました」って連絡があった瞬間、今回の勝負もらったなって思いましたね。

――ポジティブですね!

横山 俺、マジでポジティブかもしれないです。めっちゃポジティブですね。流れが全部自分に向いたというか、だって他の試合に比べて注目度が上がるわけじゃないですか。マジで俺に風が吹いてる、勝ったなー……って思いましたね。

――実際に1ラウンドで一本勝ちしたわけですもんね。横山さんはMMA5戦全勝ですが、MMAに対して「ガッツリやるぞ!」って感じじゃないスタンスが面白いですね。

横山 みんなにそう言われます(笑)。ゆるくやってるじゃないけど。 

――自分はあくまでも柔術家であるというか。

横山 そうそう、そこが大きな理由の一つ。総合格闘家として生きてるわけじゃなくて、総合格闘技で勝っていかなきゃ食っていけないっていうわけじゃないし。最初はモテたりとか、チヤホヤされたくて総合をやろうと。皇治選手みたいになりたかったんですけど(笑)。

――「武司(たけじ)」と「皇治(こうじ)」で韻は踏んでますけど(笑)。

横山 もうホントに皇治選手を見習って「モテてしゃーない」を言いたかったんですけど(笑)。総合を始めてすぐいまの嫁と出会って結婚しちゃったんで。

――モテる必要はないと。

横山 総合をやる必要がなくなっちゃったんじゃないかって。勝ちたい理由って、あんまりないから楽しく取り組むだけやりたいようにやって、やめたくなったらやめればいいなって。練習はめっちゃハードにつらいことやってるけど。

――MMAをナメてるわけではないんですね。

横山 練習が好きだから、自分を追い込むために試合にエントリーしてる感じ。試合という目標がないと、どうしても怠けちゃうから、自分を追い込むいいきっかけになるなっていうくらいで。総合で勝たなきゃいけない理由がないから楽しくやれてますね(笑)。個人的にいえば、ぶっちゃけ早く負けたい気持ちが強くて。

――えっ!?

横山 総合で負けたらどういう感情になるのかを知りたいし、ボコボコにぶん殴られる経験もちょっとしてみたいし、早くボクのことを倒してくれる奴が現れないかとは思ってます。

――柔術とMMAの負けは違う感じはありますか? まだMMAで負けてないからわからないかもですが……。

横山 まだ負けてないからわからないけど、あんな大衆の前で負けるのは相当つらい気持ちになるんじゃないかな。やっぱりブラジリアン柔術はアマチュア競技だし、業界の人たちしか注目してないけど、やっぱりRIZINになってくると、マジで道を歩いてると声かけられたりするんで。勝ったり負けたりしたら生活がガラッと変わる環境で負けたらどういう感情になるんだろうな?みたいな。「もういいや」って柔術に戻るかもしれないけど、ツイッターとか見ると負けても続けてほしいみたいな投稿があるから「俺が期待される世界があるんだな」って。

――MMAは知名度や金銭面のプラスが大きいですかね。

横山 お金はたしかにRIZINでどっと稼げるとは思うんですけど、やっぱりその先がないというか。RIZINで年間1000万稼いだらすごいいい暮らしができるとは思うけど、総合をやめたらなかなか稼げないお金ですよね。早いうちに柔術のジムで安定した収入があるほうが将来的には自分が送りたい生活を送れる。でも、いまは目先のお金がほしくて総合をやってるっていうところはあるけど(笑)。

――総合のギャラは「目先のお金」(笑)。

横山 でも、早くジムなんかでしっかり稼げるようになったほうがいいから、目先のお金を追っちゃいけないなとは思ってますけど。

――たとえばMMAで名前をあがれば、ジム経営やセミナーで潤ったりしないんですか?

横山 いや、そうでもないですよ。知名度が上がれば柔術にいいことがあるかっていえば、べつにそんなことないんですよね。柔術ってそういうもんだと思います。総合で有名になってボクについてくる人は、ボクがあんまり求めてる人じゃない。隣のジムがもっと有名になれば移籍しちゃう人だし。

――流行りを追ってる人たちに過ぎないってことですね。

横山 そうですね。ボクの柔術に興味を持ってくれればいいけど、あんまりRIZINと柔術は直結しないんで。とりあえず目先のお金にしかならない。

――でも、目先のお金を取りに行ってるわけですよね?(笑)。

横山 そうです(笑)。もうこの際、稼げるだけ稼ぎたいなとは思ってますね。どこまで長く続けるかわかんないから。モテが必要なくなったから、金ってことですね。

――ちなみに奥さんとどこで知り合ったんですか?

横山 奥さんは中・高の同級生ですね。ボクの初恋の相手で。

――なんですか、そのマンガ展開は(笑)。

横山 中学生のときは両思いみたいな感じで、お互い初恋だったんですけど。同じ高校に行ってボクがチャラチャラし始めたら「格闘技をマジメにやってる横山が好きだったから、高校で調子に乗ってる横山は全然いいと思わない」みたいに言われて仲良くなくなって。総合デビューしたときに「この試合、見に行く」って7~8年ぶりに連絡があって。そこで久しぶりに会ったらマジでかわいかったんですよ。

――キラキラしすぎて、これ以上、聞きたくないです(笑)。

横山 ホント筋の通ったいい女なんですよ。格闘技を真面目にやり始めることで、結婚するきっかけができて、ボクの人生がすごくいい方に向いたんですね。

――「目先の金」以外もついてきたと。

横山 いまは嫁のために総合で金を稼ぐぞ!みたいな。稼いで高いもの買ってやることがモチベーションになってますね(笑)。

――柔術方面のお金事情は詳しくないですけど、横山さんぐらい育ったら柔術で食っていけたりしないんですか?

横山 一応家族でやってるジムもあるし、柔術でもそれなりに結果は残してきてるんだけど、お金の稼ぎやすさ、稼げる額は総合とはもう桁違いですね。選手として柔術で稼げるお金って、ボクぐらいの選手だと年間50万もない。日本での話ですけど。

――横山さんクラスでも。

横山 それはファイトマネーがないから。たまに賞金マッチというか、優勝したら20~30万もらえるトーナメントが年間2回ぐらいあって、2つとも優勝すれば50万稼げるけど、優勝できなきゃゼロ円なので。

――柔術のジムというシステム自体は、総合よりもビジネス的に生み出せるけど、競技者としては違うと。

横山 それは間違いないですね。総合格闘技って一般人はほとんどやらないわけで。やる人もいるとは思うけど続かないし、それで会員100人は集まらない。

――ジム通いはフィットネスとしての目的が大半ですよね。

横山 柔術は習い事として続けられる人がけっこう多いので、柔術のジムで会員100人以上を目指すってのがいちばんいい生き方な気がしますね。安定的な収入があれば楽しく毎日すごせるけど、総合とかケガしたら終わりだし、長くはできないですから。

――ただ、柔術ジムを大きくするって競技者としてのモチベーションとはまたべつですよね。

横山 そうですね。そうだけど、ボクが柔術を好きなのは老若男女のみんなで楽しめるスポーツだからで。チームで練習して、たまにある試合にみんなで一緒に出て、誰が勝てるか?って楽しむ。総合って完全にいち選手じゃないですか。みんなで一緒に練習するみたいなこともないし、柔術はいろんなひとたちとスポーツを通じて仲良くなれることが魅力だから。柔術ジムを大きくすることはすごくやりがいのあることだと思ってますね。柔術は競技としても楽しいし、素晴らしいスポーツ。死ぬまでずっとやり続けたいと思ってます。総合はもうハードだし、死ぬまでやりたいなんて全然思わないです(笑)。

――ハハハハハハハ。ハードな作業に見合う対価があるからやってる感じですね。

横山 そうですね。

――まったくUFCを考えてないのが清々しいです。

横山 まったく考えてないです(笑)。

――UFCも稼げますよ!(笑)。

横山 あー、でも、RIZINのほうがいい気がする。ボクは周りの人間のために総合をやってるところもあって。地元の友達はボクがRIZINに出ることを死ぬほど喜んでるんですよ。死ぬほど盛り上がってる。UFCに出るというより、RIZINに出たっていうほうが日本にいる人たちはやっぱりわかりやすくて。

――やっぱりUFCは海の向こうの出来事だったりしますからね。

横山 たとえばお母さんの職場の人たちも「RIZINに出る」って聞くと、すごい反応があるんですよ。やっぱり日本だったらRIZINが絶対いちばん有名だと思うんで、日本で生きて日本で総合やるんだったら、RIZINがいちばん周りの人にも応援されやすい。周りの人間たちも盛り上がるんで、そこはもうRIZINですね。UFCの試合を見ればホントにすげえって思うけど、べつに好きな選手は1人もいないし、選手のこともよく知らない。マクレガーとかは知ってるけど、興味もあんまない。

――でも、もともと総合をやりたかったんですよね。

横山 小学校5~6年生のときはDREAMを見に行って「うわ、もうマジで青木真也カッコいい!!」みたいな感じでした。もうヨアキム・ハンセンも大好きだったし。

――ヨアキム・ハンセン! もしかしてそのタトゥーはヨアキムリスペクトなんですか?

横山 そうです! ヨアキム・ハンセンのように左腕から入れて。ヨアキムはビジュアルとか完璧ですね。あのときのDREAMには川尻(達也)選手やエディ・アルバレスもいて、ライト級はもう最高でしたねぇ。

・クレベルの活躍を見て俺もできるなと
・日本の柔術家でボクがいちばんMMAに向いている
・コーチ佐藤将光の存在
・牛久先輩の引き込みに燃えた
・平本蓮はおいしい相手とやりすぎ
・RIZINの寝技は見応えがない……14000字インタビューはまだまだ続く

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