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清宮海斗の「顔面蹴り」と「平和ボケ」■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」

プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は清宮海斗の「顔面蹴り」と「平和ボケ」です!

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――武藤敬司の引退試合の相手が内藤哲也に決まりました!

小佐野 じつは「内藤じゃないかな……」とは思っていたんです。後出しになっちゃうんですけどね(笑)。

――ほほう(笑)。

小佐野 まあ現実的に候補は絞られていたでしょう。最初は棚橋弘至やオカダ・カズチカかなと思った。でも、棚橋とはけっこう絡んだけど、武藤は内藤とほとんど絡んでないでしょ。

――武藤は新日本のイッテンヨンで、棚橋弘至&海野翔太とトリオを結成して、内藤哲也&SANADA&BUSHIと戦いましたね。でも、そこまで両者の絡みはなくて。

小佐野 そこで「これは内藤だろう」と。

――1月1日のノア日本武道館でムタvs中邑真輔をやって、ムタファイナルでスティングを呼んだから「最後にどんな大物を連れてくるのか」ってハードルが上がったところはありましたけど。意外性のある大物ってもう残っていなかったですよね。

小佐野 変な話、真輔やスティングだったらムタの試合ということで出落ちでもいいところはあるでしょ。でも、武藤敬司の引退試合はそういうわけにいかないから。とりあえずちゃんと試合を見せなきゃいけない。じゃあ、誰がいいかとなれば内藤は有力候補になるよね。

――現実的ですね、小佐野さん!

小佐野 やっぱり物事は現実的に考えるよ(笑)。

――絶対にありえないロック説が流れてるから「そんなことがありえるの?」って落ち着かなかったんですけど(笑)。

小佐野 ロックはいまや最も稼ぐハリウッド俳優だからありえないよね。金額的にとても呼べない。

――呼べたとしてもノアは潰れますよね(笑)。

小佐野 それにロックとやったところでいい試合になるわけないから。

――ムタでいえば、中邑真輔が相手だから、あんなに素晴らしい試合になったところはありますよね。

小佐野 武藤とムタは違うんだけど、真輔だからムタとせめぎ合えたよね。真輔は入場だけで元が取れてるようなところはあって。あの入場だけは記者室のモニターでは見たくなかったから記者席で見ました(笑)。しかし、あんな試合をやっちゃうとセミの清宮海斗vs拳王の色が残らなかったよねぇ。全部消されたもんね。

――あれ、メイン・セミの試合順が議論になったじゃないですか。清宮vs拳王のタイトルマッチがメインではないのか、と。これはこれでいい煽りになったんですけど、結果的にこの試合順でよかったという。

小佐野 ハードな攻防から清宮と拳王の意地は見られたけど、何をやっても消されちゃうよね。ファンとしては真逆の試合が見られてよかったのかもしれないけど。

――形は違いますけど、武藤さんや中邑さんも若い頃はハードなことをやってましたよね。

小佐野 そういうことをしなくても魅せられるレスラーになったってことだね。あの存在感を築き上げた歴史があるわけだし。入場に関しては初めからムタのほうが「ここは真輔の時間だ」ってことで諦めるくらいだからね(笑)。なによりお客は入ったし、お金はかなりかかったとは噂では聞くけれども、東京ドームへの宣伝効果もあるとしたらよかったんじゃないかな。

――そこはスティングも同じなんでしょうね。

小佐野 スティングは日本では見られないだろうからねぇ。

――スティングはもう63歳なので基本は動けてなかったんですけど、あれでも動いていたほうでしたね。

小佐野 スティングは頑張ってたよ(笑)。ちゃんと日本仕様になってたね。

――びっくりしたのは、AKIRAさんのコンディションがめちゃくちゃよかったことですね。AKIRAさんがこの試合に懸ける思いを感じたというか。

小佐野 彼も作ってきたんだろうね。結局、武藤と同期でバリバリできるのは他にいないじゃない。船木誠勝は同じノアで特別感はないし。歴史を感じたのは会場から帰るときに「白使って新崎人生だよね?」って話をしているファンがいたこと。白使を知らない世代も来てるんだなと。そりゃあ武藤も引退しますよ。

――それこそムタと白使の物語もありました。

小佐野 新日本の東京ドームね(1996年4月29日)。ムタはまったく白使を寄せ付けないという。

――オリエンタルキャラは2人もいらないという強烈なメッセージだったという。歴史を振り返りつつ、最後は内藤哲也相手に締めると。

小佐野 やっぱり武藤としても、最後にちゃんとした作品を残して去っていきたい。それはメモリー的な試合ではなくてね。そこは天龍さんと一緒でしょう。天龍さんだって普通だったら長州さんや藤波さんらと絡むタッグマッチで引退してもよかったのにオカダとやったわけだから。ただ、心配なのはこの前のスティングとの試合でたぶん足を痛めてるでしょ。途中から足がおかしかったし、気にしていた。どこでやったんだろうあ(後日、両足の肉離れをしていたことを公表)。

――こうなると真剣勝負の引退試合ですね……。

小佐野 内藤もすごい大役だし、新日本ファンだった彼にしてみたら、こんなドリームはないよね。

――11年前の東京ドームでシングルをやったときは内藤は大完敗。評価を落とした試合でしたね。

小佐野 内藤の物語もある。今度の武藤引退ドームはオールスター戦じゃないけど、いろんな団体が集まって試合をするから、プロレス界にとってもいい効果は出てくるはずだよ。

――ボクなんかWWEのロイヤルランブルにムタがサプライズ登場するんじゃないかと思って、久しぶりにリアルタイムで見ましたから。いろんな波及効果がありますよ(笑)。

小佐野 あー、真輔がノアに出るってことは逆に……。あってもおかしくないよね(笑)。武藤はそれだけのトップスターだったってことだよね。

――ドームのセミはオカダ・カズチカvs清宮海斗。ムタファイナルの翌日、新日本vsノアの横浜アリーナのタッグマッチでオカダと清宮のタッグマッチがありましたが、清宮が放った顔面蹴りが議論になっています。翌日にこのカードが発表されましたが、不満のオカダはボイコット宣言。

小佐野 清宮には批判もあったりするけど、みんなが大騒ぎすればいいんじゃないの?って感じだよね。
正直、平和ボケしてるところはあるからさ(笑)。

――平和ボケですか(笑)。

小佐野 だってあんな蹴りはプロレスではあたりまえでしょ。べつに不意打ちでもないし。

――全然不意打ちじゃないんですよね。

・G馬場「やられたらやり返すのがプロレスの礼儀」
・前田日明の長州力顔面蹴りとは違う
・天龍さんと輪島さん
・藤原喜明「プロレスは、お互いの身体の壊し合いだった」
・対抗戦はぐちゃぐちゃするもの
・諏訪魔の不穏がうまく転がらない理由……などまだまだ続く!

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