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JBC解散!! ボクシング界で何が起きているのか■山田武士

日本ボクシング界の手綱を握る日本ボクシングコミッション(JBC)が財政難を理由に解散……いったい何が起きているのか。JBスポーツの山田武士トレーナーに話を伺いました!(聞き手/ジャン斉藤)

――亀田兄弟の訴訟に関する賠償金のニュースを受けて、JBC(日本ボクシングコミッション)の財政難と解散が報じられました。そこでボクシング界隈で何が起こっているのかを山田さんにおうかがいしたいんですが……。

山田 最初に結論からいうと、JBCは解散しますが、いままでどおりボクシング界は回っていきます。組織としてはやらなきゃいけないことはありますけどね。

――そもそもJBCってなぜこんなにお金がないんでしょうか?

山田 もともとJBCはけっこうなお金をプールしていたんですよ。それは健保金という名目で、選手が試合をするたびにファイトマネーの1~2パーセントを積み立てていて、そのお金でいろんな事故に対応していたんですけども。

――つまり、選手がケガなどで何かあったときのための積立金。システムとしては素晴らしいですけど……。

山田 ちょっと脱線しますけど、コロナのちょっと前にボクが、笹原(圭一・RIZIN広報)さん、佐伯(繁・DEEP代表)さん、あとは大沢ケンジさんや梅木(良則レフェリー)さんとか、みんなを集めてこの健保金の話をしたことがあったんですよね。というのも、MMAやキックでは、選手がケガをすると興行主が補填するので凄く大変じゃないですか。

――選手が試合用の保険に入れるわけじゃないから。

山田 そこでMMAの首脳陣が「ボクシングの健保金を学びたい」ということで、JBCとコンタクトを取る話があって。そうしたら世の中がコロナになっちゃって、ドタバタしているあいだに亀田兄弟が裁判を起こしてという。

――そんな大プロジェクトが動くきっかけが、Dropkickの山田さんインタビューだったという話は聞いてましたよ!(笑)。

山田 もしコロナがなかったら、面白いことになっていたかもしれないんですよねぇ。

――今回の亀田さん以前にもJBCは裁判を抱えてましたよね?

山田 JBCの事務局長だった安河内(剛)さんが、JBCから不当に懲戒解雇処分を受けたということで裁判になりましたし、亀田家でいえば、今回の裁判の前に、JBCの関係者が亀田陣営の恫喝を捏造したという案件もあったし。

――そういった裁判の賠償金は、そのJBCのお金から払われていたんですか?

山田 そうなりますね。でも、日本プロボクシング協会から、健保金の扱いについて指摘を受けてまして。

――JBCは、ライセンス発行など日本においてプロボクシングの競技を統括する機関で、そのJBCと協力して興行を行うプロボクシングジム経営者による団体が、日本プロボクシング協会ですよね。

山田 その協会とJBCが健保金の扱いを巡っていろいろあって……協会もコロナで大変だったんですよ。コロナ禍の中で新人王を全部無観客でやり続けましたから。

――配信で稼げる感じでもないし、確実に赤字じゃないですか!

山田 そうなんですよ。西日本、東日本、すべての興行を無観客でやってたんで、ビジネス的には赤字じゃないですか。

――そこまでして興行を回したかったんですね。

山田 でも、当時ボクらのジムに所属している選手だって、1年半ぐらい日本タイトルマッチすらできてないんですよ、「新人王は50年間毎年行われてきた伝統的な大会だから」という理由で、絶対にやめさせなかったんですよね。それを2年間ずっとやり続けたことと、あとは本当にコロナでロックダウン状態だった時期に、全国のジムに見舞金を払ったんですよね。全国に300ぐらいジムがあるんですけど、ひとつのジムに10~20万円。

――ジムからするとありがたいけど、協会にとっては大金ですね……。

山田 それも、プロが50人いようが、プロがゼロだろうが金額は一緒という。まあ、そこで差をつけちゃうとガチャガチャなるということで、一律にしたみたいなんですけど。そうやってお金は出ていく一方だけど、コロナ禍だから試合もないし収入はない。あと協会の人間が突然辞任したことで混乱はしてたんですよね。

――そして今回の亀田裁判での多額の賠償金。

山田 ただ、今回判決が出た大毅くんとの問題は完全にJBCが悪いじゃないですか。だって、WBA・IBFのタイトル統一戦でWBA王者の対戦相手が体重オーバーでしたんだけど、試合は行なわれてIBF王者の大毅くんが判定で負けた。でも、相手が体重オーバーしてたからWBAは空位、IBFは大毅くんが王者のままだったんだけど。

――ルールミーティングではIBFも空位になるとアナウンスされていたとして、この混乱はなぜか亀田側に責任があるとJBCが追求したんですよね。

山田 IBF側も「相手が体重オーバーの場合、チャンピオン(=亀田大毅)はタイトルを保有しつづけてOK」と言ったんだけどね。そこをJBC側が問題視して、大毅くんたちも叩かれて。「(大毅は)勝っても負けても王座にとどまることを事前に知っていながら、その報告を怠り公表もしなかった」ということで、その後、亀田くんたちはライセンスが降りなくなっちゃいましたよね。

――それで亀田家はボクシング人生を大きく変えられてしまったわけですね。

山田 それが原因で三軒茶屋のジムも潰れちゃったわけだから。JBCは誰も責任を取ってないんですよ。

――よくわからないのは、捏造までしてJBCが亀田家を攻撃する理由ってなんだったんですかね?

山田 一言でいうと、アレルギーなんですよ。亀田家に対するボクシング業界のアレルギーというか。いまボクは5月の大阪興行を興毅くんと一緒にやらせてもらっているのでよく連絡を取り合っているんですけど。興毅くんから直接は言われないものの、やっぱりアレルギーがまだあるみたいですからねえ。いま亀田くんたちはABEMAとタッグを組んでいろんな企画を動かしているじゃないですか。TKO木下隆行をリングに上げたり、YouTuberのゆたぽんを動かしたり。JBCはいまこの時代だから許してますけど、たぶん、ひと昔前なら何か言われているはずですよね。

――そういえはABEMAの那須川天心vs亀田興毅企画の前日にJBCはリリースを流してましたもんね。「ボクシングの名のもとに、商業性のみを追求するイベント、企画などへの関与、協力はしない」と。天心vs亀田のことではないということでしたけど(笑)。

山田 でも、いま亀田くんがいなかったらABEMAでもボクシングはやってないわけで、亀田くんの存在はもの凄く大事だとボクは思うんですよ。だから、ボクは興毅くんには「何かあったらいつでも言ってくれ」と言ってるんですけどね。ウチから選手もどんどん出すし、ちゃんとキャラもつくって勝負させるからと。でも、ほかのジムは亀田くんたちが連絡しても取り合わないし、一緒にはやらないという姿勢みたいで。

――亀田アレルギーは強いんですねぇ。

山田 で、今回のことでJBCも解散することになってますけど、もう1回しっかりやれば再生できるので。ただ、亀田くんたちに払わないといけない賠償金をどうやって払うのかという問題はありますけど。

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