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【RIZIN初参戦】佐藤将光センターラインな12000字インタビュー

ショートノーティスでRIZIN初参戦!太田忍を下した佐藤将光12000字インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)

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――「ニワカを見分けるセンターライン」というマイクが最高だった佐藤将光選手なんですけど、いまや伝説になっている狛江時代の坂口道場に通っていたりとマニアにも知られていない話もいっぱいありますよね。あのときの坂口道場って日本初のメガジムだったじゃないですか。

将光 ああ、たしかにメガジムでしたね(笑)。2階がレスリング場で、1階に柔道場、ウェイトエリアもあったりしてホントにデカかったです。

――ボクはあの付近に住んでいたからわかるんですが、あんな辺鄙なところで家賃100万円だったという話もあるほどだから、相当広かったということですよね。気になったのは将光選手は明治大学の生田キャンパスに通っていたから、小田急線沿いの坂口道場に行くのはわかるんですが、当時有名だった田村潔司のU-FILE CAMPを選ばなかったのが不思議で。

将光 たしかに登戸にU-FILE CAMPがありましたもんね。いや、当時のボクはね、格闘技の情報に疎くて。坂口道場もプロレスとかそういうところから入ったわけじゃなくて、なんとなく格闘技をやりたいなっていう感じで。それまで住んでいた目黒から大学に通うために向ヶ丘遊園で一人暮らし始めたんですけど、引っ越す前にテレビを見てたんです。そうしたら『アド街』(『出没!アド街ック天国』)の特集が狛江かなんかで……。

――『アド街』がきっかけで坂口道場を?(笑)。

将光 そうそう。そこに坂口道場が出てきて「向ヶ丘遊園から近いじゃん、格闘技ができる」と。あのとき『アド街』を見てなかったらU-FILE CAMPに通っていたかもしれないですね(笑)。

――初っ端から「ニワカを見分けるセンターライン」な取材になってます! そんな話を含めながら、今回のRIZIN参戦も振り返っていただきたいんですけど。今回太田忍戦の緊急オファーがあったときはどう思われました?

将光 まあ、さすがに急だなと思いましたよ。太田忍ということは井上直樹選手はケガしたんだなと。まあ実際は病気だったんですけど、ボクは前戦も2週間前のオファーだったんですよね。また緊急かと(苦笑)。

――今年1月のONEキム・ジェウォン戦ですね。判定勝ちでした。

将光 普段から「いつでも戦える」と言っているのに、実際にやらないのは格好悪いなと思って。やっぱり格好がいいって思えるような選択をしていきたいからやろうかなと。あとRIZINへの出方的にもおいしいなってところもちょっとありましたね。急遽代役のほうがみんなに引っかかるっていうか。それで出ることに決めて、試合の1週間前、RIZIN44のリングで挨拶したときに「あれ、リアクションないな……」と思いながら(苦笑)。

――RIZINには「RIZINしか見てないファン」がけっこう多いんです!(笑)。

将光 みんながキョトンとしてる感じが伝わってきましたね(笑)

――太田忍戦は急なわりには面倒くさい相手だったと思うんですけど。

将光 まあでもこのレベルまで行くと、ある程度みんな強いんで、誰とやってもみんな面倒くさい(笑)。逆に向こうは強みがわかりやすいというか、そのポイントをどう攻略すればいいか。やってくることがわかりやすいというところはありましたね。

――太田選手がやりたいのはレスリング主体のゲームってことですね。

将光 そうですね。そこと試合を受ける・受けないは関係ないですけど、対策を練りながらそういうことを考えてました。なんでもやってくるオールラウンダーが相手だと、自分に対してどう攻めてくるかをまず考えないといけないから、何パターンも用意しないといけないけど。ほぼやることは組んできたら投げる、投げたあとに殴ってくる。彼はいまのところ関節のフィニッシュはないけど、もちろん力が強いんで、フロントチョーク系に気をつけないといけない。気をつけるのはそれぐらいだから対策はしやすかったですね。ただ、やってくることそのものは、めっちゃ強いっていうところはありますけど。

――実際やってみて想定外なことはありましたか?

将光 今回は事前に考えたようなゲーム展開になったけど、もうちょっとバテさせたり、自分が上になる展開や、打撃をまとめれる部分は作りたかったなっていう。

――決定的なシーンが作れたんじゃないかと。

将光 そうですね。判定も2-1で割れちゃってますし、もうちょっと決定的なシーンを作りたかった。プランはやっぱり打撃で攻めて、組まれたら切って、倒されたら立って、疲れてきたところで打撃でまとめるか、疲れて逃げタックルにきたところを切って、バックに回ってチョークかパウンドアウト……というプランだったんですけど。そんなにうまくはいかなかったなと。

――試合後のコメントでは「スプリットで割れると思わなかった」というふうにおっしゃってましたけど、いまでもその気持ちは変わらないんですか?

将光 そうですねぇ。見え方によってはたしかにずっとケージに押し込まれてる。ただ、それ以上はさせてないというか。彼も「ダメージはない」と言っていたけど、ダメージはあったと思うけどなあって思いながら(笑)。まあボクも顔にアザひとつもないし、向こうには決定的な場面は作らせてない。逆に打撃を当てていたし、フロント(チョーク)も本当に極めかかってたと思う。ただ、たしかに試合を見返すと押し込まれてる時間は長かったから、それでポイントを取られちゃうんだなって思いました。だからもうちょっと決定的な部分を作らないといけない。そういう試合をしないといけないから、フィニッシュしたかった気持ちは強かったんですけどね。

――いまのMMAってテイクダウンすればポイントになる昔と違って、多角的に評価されることもあって、ジャッジがどう転ぶかわからない試合が多いですよね。

将光 そうですね。RIZINの判定基準も試合前に聞いてたんですけど、最も評価される「ダメージ」もダウンとか相当決定的なものじゃないとつけないみたいですし。試合後にジャッジペーパーを見たんですけど、ジャッジ3人とも「ダメージ」にはつけてなかったので、そういうことなんだなと。だったら割れるのもありえるなって。

――ユニファイドでいうと「10-8」くらいの攻め方をしないと「ダメージ」は取らないイメージですね。

将光 そこをちょっと今回で勉強できたんでよかったんですけど。

――太田選手もそんなに若くはないですけど、MMAキャリアがそこまでない若手とのマッチアップってどういう心境だったんですか?

将光 そういう見方はあんまりしてなくて、オリンピックレスラーとちょっと肌を合わせるっていう感覚でしたね。しかもいま向こうは乗ってるから「どんなもんだろうな」って確かめたいっていうか、なんていう表現が合うかわからないけど、ちょっと食べてみようかな、みたいな(笑)。

――今回は地方の名古屋大会ということでしたけど、初めて試合をするRIZINはどんな印象ですか?

将光 温かかったですね。

――RIZIN44の挨拶のときの冷たい感じとは違いました?(笑)。

将光 挨拶のときとは違いました(笑)。お客さん、温かかったですね。判定のときも「青!」とか「赤!」とかみんな叫んでて「いいな、これ。みんな熱いな」って。ONEだと外国人だし歓声もちょっと聞き取れなかったりするけど、だいたい何を言ってのるかはわかんない。RIZINだと試合が終わって引き上げるときもみんな声をかけてくれるし、すごい熱がある感じがしましたね。

――「ニワカを見分けるセンターライン」というマイクもよかったですね。

将光 よかったですか(笑)。あれは前もって考えてましたけどね。試合が決まるとだいたい自分と対話する時間が増えるっていうか、深く考える時間が多くて。練習が終わって風呂に入ってるときにいろいろ心境を考えるんですね。そういうことをマイクで喋れたらいいなって思ってて。そこから何かを感じてもらいたい。「こういうことを考えて戦ってたんだな」とか「こういうことを考えて練習してた」とか。ただ「ありがとうございました」だけでは寂しいから、そういうことを伝えられる人になれればいいなと思って。

――ちゃんとオチがついたマイクだったなって思いました。

将光 それはよかったです。

――「オマエ誰だよ?」的な反応に腹が立ったりしませんでした?

将光 それはないです。「あ、知らないんだな。やっぱりそんなもんだよな」程度で。試合を見てもらって知ってもらえればいいし、知りたい人だけ知ってくれればいいかなって。たしかにね、UFCとかも見てない人もいるんでしょうね。そこは新鮮ですね。格闘技ファンという括りの人もいれば、RIZINファンという括りの人もいて、そこが混ざっている場所なんだなって。

――SNSの反応も違ったんじゃないですか?

将光 ああ、そうですね。RIZINのアカウントがボクにタグ付けするので、メンションがけっこう飛んできてて。今回のボクはあんまり悪く言われることはそこまでなかったですけど(笑)。ずっと非難の声を浴びてたら、おかしくなる奴が出てくるだろうなってすごい感じましたね。ボクもある程度大人になってるから、どんな声も流せる部分はあるけど、若い子が食らったらキツイだろうなって。

――選手がアンチに対応すると「そんなことで怒るな」みたいな声があるんですけど、クソリプの微毒がちょっとずつ溜まっていって、本人しかわからない致死量に達する瞬間ってあるんだろうなと思ってて。太田選手は自分からガンガン煽ってるところはあるんですけど(笑)。

将光 彼はずっと戦い続けてるんですごいですよね(笑)。自分は反応しないと思いますね。一方的に伝えられればいいかなって思ってて。ボクが発信したことをちょっと違って受け止められたときだけは、発言してもいいかなって思うけど。基本は「勝手に受け止めてくれ」って思いますけどね。

――それこそ朝倉海とやることになったら、熱狂的な朝倉海信者が押し寄せてくると思うんですよね(笑)。

将光 そうなるでしょうね。ボクの信者も作っておかないとですね(笑)。

――朝倉海に興味はありますか?

・RIZINと1試合契約だったのは…
・ONEをリリースしてもらった理由
・幻のRIZINバンタム級ジャパンGP
・スタートは初期キラービー
・伝説のメガジム坂口道場
・恩人・坂口征夫
・15年間のプレハブ寮生活
・試合、ジム、建設現場の三刀流……12000字インタビューはまだまだつづく!

【過去記事まるごとセット/2023年10月】
佐藤将光、金原正徳、万智、長井満也、笹原圭一、原口伸、八隅孝平、斎藤文彦、小佐野景浩ほか。コラムもたっぷり!

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