【令和の掣圏道】平本蓮「佐山聡さんを意識して戦います」
――4月29日のRIZIN代々木大会の記者会見では対戦相手の斎藤裕選手、そして朝倉未来選手と同席しました。
平本 朝倉未来と一緒に会見をやれる機会はなかなかないと思ったんですよね。いつもどおりトラッシュトークを仕掛けるのもいいなと思ったんですけど、ボクの予想ではそれだとガン無視されるなと。ラリーで盛りあがるってことは絶対にないっていうか、向こうはあくまで「いや、俺はそんなどうでもいいので勝手にやってれば……」っていう偉そうなスタンスじゃないですか。だったら逆に1人歩きで、小馬鹿にしてやろうと。
――それであの謎・通訳だったんですか(笑)。
平本 そうっすね。エキストラを探して、ちゃんとギャラを払って来てもらいました(笑)。まあ、自分の試合のプロモーションなんで安いもんです。こういうことを言うと自画自賛になっちゃうんですけど、この会見は俺が何かやらなかったらマジで盛り上がらなかったと思うんですよね。他はそんなに面白くなかったなって。
――ニュースを作ったと。
平本 だって「太田忍いたんだ?」「なんで部外者の一般人が会見に出てるんですか?」みたいな感じでしたよね(笑)。
――朝倉選手や斎藤選手とは控室は別だったんでしょうけど、太田選手とはバッティングしなかったんですか?
平本 ちょうどスダリオ(剛)選手と一緒の会場入りだったんですけど、控室に入ったら太田忍がいたのですぐに引き返しましたね。同じ空気を一緒に吸いたくないなって(笑)。
――あいかわらずの逆・全方位外交! 平本選手からすれば、朝倉未来の反応を引き出したから成功だったと?
平本 そうですね。会見場にお客さんがいたのがよかったなって。お客さんがけっこう笑ってくれたこと、たぶんピキッて頭にきたんじゃないですかね
――「会場の皆さんが笑っていることが不思議です。そんなに面白かったですか。優しいですね」と。
平本 ホントに器が広いなら、あんなの無視しとけばいいのに、いちいち反応しちゃうから器が小さいなって。俺、小学生のときによく先生に屁理屈を言いまくってクラスのみんなが笑ったら、先生は「これ、面白いと思ってるんですか?」と言ってましたけど。学校の先生と同類ですよ。
――急接近した朝倉未来はどうでした?
平本 本人的には「斎藤裕に勝ったら、やってあげてもいい」みたいな感じですけど、なんでオマエに上から言われなきゃならないんだって。ここは一発KO勝ちをして、RIZINにもっと新しい風を吹かせたいなって気持ちはありますね。
――朝倉選手には牛久(絢太郎)選手に勝ってもらったうえで、やりたいところはありますか?
平本 正直どっちでもいいですけど。まあ勝ってやるほうが間違いなく盛り上がるのかなと。朝倉未来は相性的に悪くはなさそうっすけどね。本人も苦手意識はなくて、得意なタイプだと思ってんじゃないですか。ただ思いのほか疲れると思うんです。そうなったときに、どうなのかなって。まあそれを言いだしたら、どんな試合も全部そうなんですけど、攻めて攻めてガス欠になるかもなって。
――朝倉選手は2年ぐらいMMAの試合から遠ざかっている影響もあるということですかね。
平本 というか、ボクシングをやっていたと言っても、ちゃんとやってたのかなってありますよね。
――で、平本選手は斎藤選手をKOできる自信があると。
平本 もう練習の手ごたえをめちゃくちゃ感じてて。岩﨑(達也)先生とも作戦について話はしてるんですけど。岩﨑先生いわく「斎藤選手は厄介な相手。たとえばこっちがガンガン攻めていても、2対1のジャッジで勝ちを持っていける強さがある」と。そこはすごいわかるっていうか、ボクがダウンを奪っても、激戦に持ち込んで「判定、斎藤」みたいになる可能性が大いにあるなって。岩﨑先生は「そういう厄介な相手だからこそ、今回は確実に倒しにいきましょう」と。
――試合巧者だから、決定打をつくらないといけないと。
平本 なるべく試合時間を長くしない。だからって攻め急ぐわけではないんですけど。しっかりKOを狙うのが今回の作戦ですね。
――前回の弥益ドミネーター聡志戦は、無理して倒しにはいかない作戦でしたね。
平本 だから逆ですね。前回は向こうからテイクダウンに来るのがわかっていたし。今回はそれも踏まえて警戒してるから、いきなりテイクダウンはしてこないのかなと。最初は打撃戦になると思うんですけど、その段階で「これは無理だな……」って思わせたいです。
――平本選手は斎藤選手が練習しているCAVEに一時期通ってましたが、そこまで肌は合わせてないんですよね。
平本 ですね。何回かグランプリングはやったことあるんですけど、打撃を入れたスパーリングはないっす。ボク自身も斎藤選手のことをあんまりよくわかってないからこそ、すごい楽しみだし、あのときは自分もまだ別人なんで。自分のほうが圧倒的に別人なんじゃないかなって自信はありますよ。やっぱり余白が自分のほうにはあるのかなって。
――自分のほうが成長していると。
平本 練習したのは1年前ぐらい前ですよね。あのときとは全然違います。試合で勝ったことでその経験が上乗せされてるし、いろいろなことがあたりまえにできるようになった。打撃もすごい進化してる反面、テイクダウンディフェンスやグラップリングの基礎的なところにも自信があって、スパーリングも考えないでできてますね。要は倒されても別に立てればいいかなって。キックボクサーが総合格闘技をやると「倒されないように」って考えちゃうんですけど、そうじゃなくて、そつなく総合格闘技ができるようになったかなって。
――ストライカーにありがちな「寝たら終わり」ではないと。
平本 だから落ち着いて打撃が振れます。いい意味でも悪い意味でも不安要素がない。だからこそナメないで、最悪の状況も考えて練習してますね。
――不安要素がないからこそ最悪を想定していると。
平本 もう常に最悪の状況を意識したトレーニングをやってますね。今回の試合はだいぶ前に決まったじゃないですか。ずっと斎藤戦の対策をやってきたっていうか、こんなに前から試合が決まることってあまりないんで、すごくいいトレーニングが積めてますね。
――足のケガは完治されたんですか?
平本 完治しています。あとはオーバーヒートしないように自分を信じて戦います。やっぱり空手という信じるものがひとつできたんで。岩﨑先生と知り合ったことで迷いがなくなったんですよね。いまの自分は「どうやって戦ったらいいんだろう?」ではなく「これをやれば大丈夫」と。空手という芯ができたことは、自分にとってすごい大きいです。どんな相手でも立って殴れる。ストライカーとしてのある種の意地というか、岩崎先生と会ったことでそういうスタイルができた感じがしますよね。打撃という自分の信じる道をさらに信じれるようになったというか。MMAに転向したばっかのときって、いろんなトレーナーの人から話は聞くんですけど。その考えをいったん集結させて、自分で必要なものは取り入れるし、いらないものは切り捨てるじゃないですか。そのへんはずっと自分で考えてきたんですけど、「こうすれば打撃が強く打てる」とかすべての考えが驚く師匠は初めてだったんで。
――MMAの戦い方を導いてくれたわけですね。
平本 いい師匠に出会えたプラス、岩﨑先生は面白い人なんで。ホントに面白い(笑)。
――博識ですよね。
平本 剛毅會の入門条件は、UFCを目指していれば誰でも入れるんですよ(笑)。最近はちょっと変わってきたみたいで「強くなりたければ」なんですけどね。要は「最強を目指せ!」みたいな。
――芦澤竜誠選手も剛毅會に通ってるんですよね。
平本 来てますね。竜誠くんのことは岩﨑先生が「あれは化けるぞ」と言っていて。
――へえー!
平本 岩﨑先生が言ってたんですけど、ファイターは繊細な人とガサツな人の2種類に分けられると。繊細な人は技術を追求するメンヘラ系、ガサツな人はフィジカルモンスターのパワフル系。ボクはメンヘラ気質な性格だと思うんですけど(笑)。たぶん竜誠くんと同じで感受性が豊かというか、SNSでも目立ったりとかするじゃないですか。そういう選手ほど、空手の練習に入り込めるらしいんですよ。たとえば三戦(サンチン)の構えとか、アスリート的な考えの人だったら「どこの筋肉を使って、なんの意味があるの?」みたいな反応になると思うんですよ。でも、竜誠くんはまず入り込んでやったうえで、感じ取るのが早かったんです。だから岩﨑先生も「化けるぞ」と。入り込めるかどうかが大事らしいんですよね。
――岩﨑先生は、平本選手が弥益戦の試合前に正座したことが勝因のひとつに挙げてましたが、そこに通じる話ですね。
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