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「回転木馬」 第4詩

「 回転木馬」 第4詩
詩・益山弘太郎 / 写真・齋藤陽道


名も無き町に生まれ  

名も無き父に愛され  

名も無き母に育まれ  

人生は虚ろに漂い  

若き日々は遥か遠く  

今還暦を前にする  

誇大妄想だった少年時代  

世の中を舐めていた自分  

我が身の悩みに閉じこもり  

競争を避けて来た  

そんな奴が詩集を出版し  

生まれて初めて決闘が姿を現す  

吐息を吐いてみる  

こんな奴の自己顕示欲が  

社会に通用する筈が無い  

今度は吐息を吸ってみた  

ここは千駄ヶ谷駅前交差点  

母の入院の見舞いに来ている  

東京体育館  

駅前方向を見ると  

中央線の上を首都高速が走る  

交差点に向けて  

傾斜角約35度の角度で  

階段を降りて歩む

すると首都高速を走る車の速度が  

一瞬自分の歩みの速度と  

大差が無い様に見えるのだ  

そうだこれだ誇大妄想だ  

防音壁に上部だけ姿を現して  

走る車達は  

まるでおもちゃだ  

その時自分の内面が  

万華鏡に散りばめられた  

死ぬ瞬間の夢想のように  

Merry-go-round    

Merry-go-round



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詩人・益山弘太郎さんのなれそめについて

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