反逆の絵、「私はもうお嫁にいけません」

「私はもうお嫁にいけません」この言葉はネット上では検索してはいけない言葉の一つとして広まっている。その正体はどす黒い背景に、首が長く伸びた女性がおぞましい形相で立ちつくしている絵なのだが、行かんせんインパクトが強い、強すぎる。「精神病の人が死ぬ直前に描いた」と解説されることもあるが、これは誤った情報であり、立派な芸術作品のひとつである。

 この絵の作者は立島夕子さんという日本の画家、人形作家、パフォーマ−だ。1974年生まれで現在も創作活動を行なっている。

 立島夕子氏はこの作品について、

「当時24歳、この絵を描いた当時私はある男性に付きまとわれ精神的に危篤でした。その男性の行動と過去の強姦未遂のトラウマが重なり表現された絵です。この絵は全ての性犯罪に対する私の決死の叛逆の絵です。」と述べている。

 私の好きな小説家、伊坂幸太郎のラッシュライフという作品の中に「たぶん絵というのは、紙に殴りつけた祈りだよ」という台詞が出てくる。そして祈りと呪いというものの根幹は同じものだと私は考える。立島夕子氏の作品は、純度を最高まで高めた感情を紙に殴りつけた反逆の呪いではなかろうか。彼女ほどダイレクトかつ直情的でおぞましい絵を描く人に私は出会えていない。感情と筆先に隔たりがなく、むしろ純化されていっているのは彼女の特筆すべき点だろう。