バイオアート 芸術と化学が融合した美の世界

  近年、「バイオ・アート」と呼ばれる、生命を主題や素材にした芸術の潮流が世界的な関心を集めている。実際、表参道にあるギャラリー『GYRE/EYE OF GYRE』にて『2018年のフランケンシュタイン バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま』展が開催中だ(10月14日まで)。

バイオアートは細胞や声明が、単なる芸術のイメージやモチーフとしてだけではなく、具体的なマチエールや素材として用いることで、芸術作品の保存や修復によるアーカイブ化や、美術館による情報化、さらには複製技術によるアウラの喪失と言った、芸術の近代化によって生じた様々な問題を再考しようとする。21世紀当初の大きな美術運動の一つである。

 上記の展覧会ではゴッホ自らが削ぎ落とした左耳を、彼の玄孫であるリーヴ・ファン・ゴッホの軟骨細胞を提供してもらい、バイオテクノロジーを用いて現代に蘇生させたディムット・ストレーブ(生の細胞としての生きた耳そのものを展示することは設備あそれに伴う法的許可の問題から難航したため、ポートレイトと、映像が展示されている)、パンデミックを起こす危険性があるウイルスのDNA配列を延々と印刷し続けているブラックリストプリンターなるものも展示されている。

 倫理問題や法律、さらには生物の生態系さえも破壊してしまうかもしれないものまでテーマとするバイオアート、世界中から厳選された作家と作品を通じて、そのスリリングな面白さを一望できる貴重なチャンスである。