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写真は総合格闘技の田嶋選手です。
総合格闘技はその名の通り、立ち技や寝技を含んだ総合の格闘技です。

彼は柔道がバックボーンであり、以前の試合では強いタックルやグラウンドファイトなど「組む」印象のある試合をしていました。



しかし先日行われた試合では、終始スタンディングの打撃で圧倒し、TKO勝利を納めました。
その時の試合展開や選手同士のスタイルもあるので、今回はこの結果になったという側面ももちろんあります。

しかしながら格闘技に限らず対人競技では、「得意な武器があるからこそ、他の要素をより際立たせることができる」ことがあります。これは非常に大切な戦略です。

ただ、プレイヤーサイドでは「分かっているが実際にはなかなか出来ないんだよ」と悩みをかかえやすい面でもあると思います。



それはなぜか?
今回は格闘技で考えてみましょう。



まず大抵のスポーツは立位で行います。しかし格闘技などは人と組んだり寝た状態があり、立位時と重力や重心の影響が異なります。

この時、身体を固める動きが多いのでどうしても身体が固くなりやすく、特に胸郭が固くなりがちです。

これは特異的ですから、ある意味ではこの胸郭の固さにメリットがあると言えますが、もちろんデメリットも混在します。


このデメリットの一つに、胸郭の固さが肺の動きを阻害し酸素の摂取量を減らす、ということがあります。

研究では胸郭に一定の固さのあるアスリートでは、健常なアスリートに比べて70%しか酸素を取りこめなくなるという報告もあり、これに当てはまるアスリートはスタミナに影響を受けているかもしれません。



また、この胸郭の固さは、体幹の捻転に大きな制限をかけ可動を制限し、さらに移動時と静止時の両方で重心の不安定さを生みます。
この不安定さは立位時で顕著に現れ、立位で行うあらゆるムーブメントの足枷になります。

こと格闘技において、パンチ動作は最もこの影響を受けやすいものの一つになるでしょう。

ですので、このあたりの苦手意識がある選手は多いかもしれません。


もう一つ、重心が不安定ということは日常生活においても余計なストレスを身体にかけているということでもあります。

稽古外の日常の時に身体は回復します。言うまでもなく望ましいのは回復して次の稽古を行うことです。そして回復は成長とイコールの面もあります。


さて今回は胸郭の動きから、

①スタミナ
②不安定と可動制限
③回復力

について話ししました。

この中の②不安定と可動制限というメカニカルなフィジカルコンディションが「一定の運動ポジションにおいて制限をかける = 得意不得意を生む温床になる」ことが連想できます。

①スタミナと③回復力も十分なパフォーマンスを出しきれなくなる要因にもなり得ます。



こういった知識や情報は大切です。しかし最も大切なことはどのスポーツでも、選手本人がこれらの必要性を自分自身で取捨選択していきながら、腑に落とすことです。

それには思考の柔軟性と、得た情報を上手に処理する能力が必要です。



多くの人は格闘技と聞いて、荒っぽく野蛮なイメージを持つことが多いと思いますが、実際は非常に質の高い、知的な思考作業が必要な競技です。

写真の田嶋選手は、運動能力やフィジカルの強さだけでなく、こういった面でのメンタリティにも秀でている印象があります。



ですので、来年もしっかりと着実にレベルを上げ、さらなる成長と活躍を見せてくれるはずです。

どうぞ応援よろしくお願いします。


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【 自己紹介 】
パーソナルトレーナー
オステオパス

述べ10,000人以上とのセッション。

格闘家やボクサーをはじめとしたアスリートへのフィジカルトレーニング指導やコンディショニング管理、怪我からの復帰、また、

“切らない外科手術”ともいわれるオステオパシーの国際基準をクリアしたオステオパスとしても活動。

一般の方からプロアマアスリートまで、動ける身体へのトレーニングとオステオパシーによるケアを行っています。

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