[マジック：ザ・ギャザリング]新社長の売上2倍発言は真実なのか
日本時間の10月12日、マジック公式サイトより、スタンダードフォーマットにて3枚のカードが禁止となりました。
通常の禁止改定と異なり、これはマジックのプレイヤーたちに大きな波紋を起こしました。
禁止された《創造の座、オムナス》は最新のエキスパンションのカードであり、発売からたった17日で禁止されてしまったからです。
他のカードゲームと異なり、マジックはスタンダードでは禁止カードをできるだけ発効しないことを目標としています。開発内では、禁止カードが発効されるのを、5年に1度のレベルに抑えるという数値目標がありました。しかし2017年以降の近年、禁止制定が連続し、直近では10枚以上ものカードが禁止されています。
さて、この近年の禁止制定が連続することについて、日本のマジックプレイヤーコミュニティの間では、このようなことがつぶやかれています。
「新社長が悪い」
「新社長が自分の任期中にマジックの売上を2倍にするって言ったから」
「売上を上げるために強いカードを売っては、すぐ禁止制定している」
新社長というのは、マジックの販売元である Wizards of the Coast. (WotC)の CEO の Chris Cocks 氏のことですね。2016年に前のCEOから代わって、今の地位に就任しています。
これが本当なのかは WotC の中の人にしかわかりませんが、いくらアメリカの会社で、かつビジネスとしてマジックを作っているからといって、売上を二倍にするために禁止カードを連発するとはあまり思えません。短期的には売上は上がるかもしれませんが、長期的には売上が下がってしまいますし、WotC ほどの大きな会社であればそうしたことを防ぐような意思決定がなされているはずでしょう。
ただマジックの売上を2倍にするという目標があるのであれば、より魅力的なカードを作るインセンティブがマジックの開発チームには生まれますし、カードゲームにおける魅力的なカードの多くは強いカードでもあるので、強いカードを作ろうとするあまり、オーバーパワーなカードが作られてしまうことはありそうです。
ただこの仮説も、新社長が本当にマジックの売上を2倍にするって言っていれば成り立つ話です。この出典不明の情報、果たして本当なのでしょうか？調べてみました。
早速ですが、英語版 Wikipedia に記述がありました。
原文
Our positive results to date have us on plan to double Wizards of the Coast coast revenues over five years from 2018 to 2023.
日本語訳
こうした好調な結果により、2018年から2023年までの5年間で WotC の売上を2倍にする計画があります。
Wikipedia のソースをたどると、WotC の親会社である Hasbro の 2019 Q4 の投資家向けの収支報告で述べられているようです。
Hasbro Inc (HAS) Q4 2019 Earnings Call
https://www.fool.com/earnings/call-transcripts/2020/02/11/hasbro-inc-has-q4-2019-earnings-call-transcript.aspx
これによると発言を述べたのは Brian D. Goldner 氏(Hasbro の CEO)であり、WotC のCEOである Chris Cocks 氏ではないようです。
また2倍にするのはマジックの売上ではなく、WotC全体の売上のようです。WotCはダンジョンズ＆ドラゴンズなど、他のテーブルゲームも販売しているので、それらも WotCの売上に含まれます。
というわけで発言の真偽の話に戻ると
・売上を2倍にするというのは本当
・ただし発言したのは Hasbro の CEO
・2倍にするのはマジックだけじゃなくて WotC の売上
親会社のCEOの意向であれば子会社である WotCのCEOも従わざるを得ないでしょうし、マジックは WotCの売上を大きく占めるので、要旨はあまり変わらないものの、細部が異なるといった結論です。
Appendix
さてこれだけでは記事としてアレなので、先程の収支報告で、マジックについて言及された箇所について要点を最後にまとめておこうと思います。
・マジックの売上は2019年で30%以上増えた。
・Magic Arena ではこれまでに18億回の対戦が行われた
・2019年を通して Magic Arena のプレイ人口が172%に増えた
・平均して Magic Arena のプレイヤーは1人辺り週に8時間プレイしている
・Magic Arena のプレイ動画配信数は143%に増えた。今では7万人を超える配信者がいる。
・2020年内にモバイル向けの MTG Arena をリリース予定だ。
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