【選手名鑑Vol.12 土田尚輝.土田光里】ープレーする側とサポートする側。立場は違えど見ているものは同じ。彼らが目指す目標の先にある景色とはー
今回取材に応じてくれたのは、4年ATの土田尚輝と、1年STAFFの土田光里の兄弟である。SAINTS入部の背景にはどんなものがあったのか。またそれぞれの目指す目標はどこにあるのか。これらについて、彼らのありのままの言葉をもとに述べていきたい。
1 ラクロス部入部のきっかけ
もともと小学生から野球を続けてきた土田尚輝。
彼は小学校6年生の時にベースターズジュニアに、800人ほどの受験者から18人しか通らないという高倍率の中から合格し、また高校では県ベスト8に入るなどその活躍ぶりは凄まじいものだった。
そんな彼が大学で入部を決めた部活は勿論野球部だった。 だが部活動に励む中で、モチベーションが続かず退部の道を選択する。
暫く一週間ほどフラフラしていた時期が続いた。だがふとある時こんな思いが過ぎる。
「もう一度真剣にスポーツがしたい」
小中高と、活躍と同時に副将を務めるほどスポーツに対して真面目に向き合ってきた。
そんな彼にとってスポーツを中途半端な形にするのは自分自身許せなかったのだろう。
この想いをきっかけにもう一度スポーツについて考え始めた。
そんな中、スペイン語が同じクラスだった澤木雅巳(現4年)がラクロス部に入部していたことをきっかけに、自身もラクロス部への入部を決意する。
野球部からラクロス部へ。それは野球一色だった彼にとって大きな転向だった。
「野球をやめるってなった時、家族会議になるほど大事なことだから、どうなるんだろって」
そんな心境だった当時から四年。彼は今オフェンスでチームを引っ張る存在として、そして下級生の目標となっている。
取材をしていて感じたことは、妹の土田光里も同様の過程を得て入部していたということである。
「最初、女ラク(女子ラクロス部)か、サークルに入ろうと思ってたけど、新歓見た時にサークルは違うなって思って」
彼女もまた小学生からバトミントンを続け、県でベスト8に入るなど生粋のスポーツマンだ。
そんな彼女が男子ラクロス部の試合を初めて見たのは、六大戦 対早稲田大学である。初めて直接見たラクロスは迫力の大きさにかっこいいと感じた。
そしてトレーナーに興味があった彼女には、自分の目標が体現できる場でもあった。
だが兄(土田尚輝)が所属していたこともあり、簡単には入部を決められなかったという。
「兄がいるから入るとはすぐに決められなくて。でも『入るって言ったらどうする?』って聞いたら、『入りたいんだったらいいんじゃない?』って」
そうして最終的には入部を決意する。
「体育会系で四年間しっかり自分のしたいことしたい」
今はスタッフとして基礎的な業務を覚えることに精を出している彼女。
慣れない業務を覚えるのは大変だというが、「努力家である」と兄(土田尚輝)もいう様に、今後の彼女の活躍に期待である。
2 困難の先に
次に「ラクロス部での挫折経験」について尋ねた所、土田尚輝からはこんな経験が語られた。
それは関東ユースの切符を逃したこと。関東ユースに選ばれるとアメリカで試合ができるのだが、その枠に入ることが出来なかった。
小学生の時には野球でベースジュニアに選ばれ、高校では県でベスト8に入るなど数々の難関を超えてきた。
そんな彼にとってこの苦い経験は悔しさ以外のなにものでもないだろう。
またもう一つ、これは挫折経験ではないが、「ポジションにおいて難しいこと」を尋ねてみた。
彼のポジションはAT(アタック)であるが、オフェンスというフィールドで活躍していることから、同時に守備も任されている。
「六人でオフェンスするんだけど、六人がそれぞれやりたい事やってもうまくいかない。繋ぐ人もいればディフェンスを崩す人とか、それぞれ役割がある。どういう役回りをしたらオフェンスが出来るのか、それを考えるのが難しかったなと思う」
オフェンス内での個々の役割という、全体像について述べた彼。
本人曰く、AT(アタック)というポジションを選んだきっかけには「指示が出したくなかった」という理由もあったそうだが、今ではその役割を彼が担っている。
「いい時も悪い時も謙虚に」
これは彼が座右の銘としている言葉である。
「自分の調子がめっちゃ良くても調子に乗らないで謙虚にいる様にしている」
この言動からも窺える、常に自分を客観視し、周りを俯瞰する冷静さ。
挫折経験を得た後の謙虚な姿勢、そして小中高、そして今のラクロス部でも副主将を務めているのも、チームには今何が必要か、主将を支えるには自分に何が出来るのか、そういったことが判断できる彼だからこそ務まる役目である。
3 今後の目標
「今後の目標とは何か」二人に尋ねてみた。
「学生日本一。それが取れれば幸せな気持ちで引退できるんじゃないかな。そのためには今怪我している主将(4年 櫻井凜)に対して、チームがそのことで変わらない様フォローし、4年生が少ない中でも頑張り続けることかな」
最高学年として、そして副将としてチームを支える土田尚輝。
その彼の実直な姿勢が、チームに良い影響を与えていくのではないだろうか。
「希望としてはトレーナーをやりたい。自分が高校生の時に怪我をしたから、ジムでバイトしていたりしたことが活かせたらいいな」
プレーする側からサポートする側へと大きく役割が変化した土田光里だが、今後トレーナーとしてチームを支えていく姿が見られる日は近いだろう。
最後にもう一つ、「お互いにSAINTSに期待すること」を二人に尋ねた。
土田尚輝から土田光里へ。
「大怪我を高校の時にしたことがトレーナーになりたい原点だから、怪我人を減らすトレーナーになっていってほしい」
土田光里から土田尚輝へ。
「学生日本一取ってほしい。その時に、自分が同じチームにいられたらいいなって思う」
プレーする側とサポートする側。それぞれの役割は違っても見ている景色は同じ。それは彼らだけでなくチームにも通ずるものがある。
学生日本一。それは簡単ではない。だがこの勢いのあるチームなら、「CHAOS」を掲げたこのチームなら、やってのけるのではないだろうか。
そしてその時にこの二人が活躍する姿があることを、どうか期待したい。
記事執筆 岡田純奈
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