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変わり行く薩摩土手 12 誤解されやすい薩摩義士(宝暦治水事件)との違い

 公益社団法人鹿児島県観光連盟ホームページでは、宝暦治水について、次のように掲載されている。

 宝暦3年 (1753年)、徳川幕府は薩摩藩に木曽川・揖斐川・長良川( 岐阜県)の改修工事を命じた。

 この宝暦治水は非常な難工事であり、約1,000人を動員し工費40万両を費やした末、約1年3ヶ月かけてやっと完成しました。

 その間、幕吏や地域住民との対立、 悪疫の流行などで80余名の犠牲者をだし、その供養墓塔として薩摩義士碑が大正9年(1920年)に建立されました。

 藩の出費の責任をとって自刀した治水総奉行・家老平田靱負の碑を頂上に、将棋の駒を並べたような碑です。と紹介されている。

 江戸時代中期、木曽三川は度々氾濫し、濃尾平野を水害に苦しめていた。
そこで幕府は宝暦十年(1760年)から宝暦十一年(1761年)にかけて大規模な河川改修工事を行った。

 これが宝暦治水と呼ばれる治水事業である。この工事には約1万人の人夫が動員されたが、その中には300人の薩摩藩士も含まれていた。

 彼らは他の人夫と同じように過酷な労働を強いられた。
その結果、疲労や病気で倒れる者が続出した。
さらに彼らは自分たちの身分や名誉を守るために自害する者も多かった。

 このようにして約200人が死亡したとされる。
これが宝暦治水事件である。

この事件は当時ほとんど知られていなかったが、明治時代以降に薩摩藩士の忠義や悲劇を讃えるエピソードとして紹介されるようになった。


 しかし、現在でもこの事件の真相や詳細については不明な点が多い中で、ウィキペディア等で、次のような掲載があった。

① 宝暦治水の計画者と責任者

 木曽三川の治水工事は、美濃郡代の井沢為永が享保20年(1735年)に立案したものを、宝暦4年(1754年)に幕府が薩摩藩に命じて実施したものである。

 工事は幕府の勘定奉行や川通奉行、美濃郡代などが監督し、薩摩藩は家老の平田靱負を総奉行として派遣した。

 工事は堤防の復旧と新設に分かれたが、多くの困難に直面し、藩士や人足は多数が死亡した。

 工事完了後に平田靱負も自害したと伝えられる。この事件は宝暦治水事件と呼ばれ、薩摩義士として顕彰された。

② 宝暦治水工事と薩摩藩士の死

 江戸時代に薩摩藩が行った宝暦治水工事は、幕府の不興を買って妨害工作や冷遇策に遭ったとされる。

 この工事に参加した薩摩藩士の多くが自害や病死したことも事実である。しかし、これらの死因は幕府側の行為だけに帰せられるものではない。

 工事の過酷さや長期化、気候や環境の変化、食糧や衣服の不足、感染症や伝染病の流行など、他の多くの要因が関係していたと考えられる。

 宝暦治水工事における幕府側の妨害工作や冷遇策は確かにあったが、薩摩藩士の自害や病死には大きな影響を与えなかったというのが、より正しい見方である。

③ 暦治水と木曽三川の歴史

 江戸時代に行われた宝暦治水は、木曽三川の洪水対策として画期的な工法であり、濃尾平野の洪水被害を大幅に減らした。

 しかし、宝暦治水は完全な解決策ではなく、その後も洪水は発生し続けた。そのため、明治時代から現代まで、木曽三川ではさまざまな治水工事が行われてきた。

 これらの工事は木曽三川の流れや景観を大きく変えるとともに、洪水被害を減らし、農業や工業などの発展に貢献した。

 しかし、治水工事には自然環境や生態系への影響も伴うため、今後は河川の持つ多様な機能や価値を考慮した治水対策が求められる。


https://note.com/saimonasuka/m/mc2f23d7073c0

薩摩土手

目 次
1 これまでの薩摩土手の様子
2 安倍川の流れの変更(西への移動による藁科川との合流) 
3 藁科川と安倍川の関わり(平安時代からの藁科川)

4 武田家(駿府制覇の時代)の雁行の信玄堤方式の採用 
5 駿府城の築城計画(焼失の繰り返しによる再建築)  
6 家康の築城計画(スペイン風の幻の川辺城構想) 

7 家康から秀忠への石槽船 150艘の流用指示 
8 各藩への造船時の500石制限
9 北川と駿府城を結ぶ横内運河の計画と完成 

10 薩摩土手関連の各機関の掲載資料
11 薩摩土手の完成と権現様堤の名 
12 誤解されやすい薩摩義士との違い 

13 駿河国誌での薩摩土手の名 
14 安倍紀行、駿河國新風土記と薩摩土手 
15 明治の薩摩土手周辺の様子

16 大正の洪水被害と湯浅堤 
17 大正の薩摩土手を横切る安倍鉄道 
18 昭和の都市計画道路、緑地公園そして自転車道へと変貌する薩摩土手 

19 平成の薩摩土手の碑建立
20 平成の土木学会による土木遺産の認定 
21 令和の緑地公園


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