ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#108
佐佐木 政治
閃光はまぎれもなく 現在もなお 僕らの前頭葉を染めている
神よ あなたが一者としての光の衣をまとい
すべての時代と 場所を超えて 遠ざかりゆく
あのおそるべき言葉に焼かれただよう 全体のように
あなたの方舟は 今もなお 遠い旅のさ中に在る
凍える空間(そら)には
分筆された星々が 残骸のようにこぼれ
他者としての つめたい認識の中で
殷賑を極める 重力や引力で
お互いの絆をたしかめ合いながら
もはや あなたの光の微熱は
ぼくらの言葉を暖めはしない
渕からすくいあげる あなたの言葉は
掌にその こんせきさえ残しはしない
父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。
>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<
亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。