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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#79

佐佐木 政治

あの巨大な閃光は今も 人類の前頭葉を染めている
かつてそこから分かれ出た 一筋の光の翼に乗って われわれの旅が始まる
しかも すべてが神よ あなたの意志のなかで

「太初に言葉ありき」という聖書の言葉は ぼくらの肉体に翼を与える
まず すべてはぼくらの前に置かれる 白紙のノートからやってくる
その扉の前に立つとき ほとんど言い尽くされたものの地平が横切る
しかもこれからというときの あのあえかな希望の前で 

白紙は巨大な閃光を真似る おそらくすべての理論を破壊し尽くし 
盲目の光の果てか 地平も垂直も焼き払う
顔と因果と距離を焼き尽くす 記憶と旅と感傷を焼き尽くす 
あの最高の暴力の前で だだ狂える歓喜だけが 熱く燃えた時を ぼくらは持っているのだ 

閃光から閃光へ ぼくらの小さな旅が始まり終わる
おゝ ほとんどこの一枚の白紙の外で 
言われるべき筋合いの世界があるとは思えない


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。

>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<  




亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。