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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#76

佐佐木 政治

神の恩恵に浴するものたちよ
かれらにとってひもじさや寒さは身の不運とはならない
かれらの翼やたて髪の中に 過去や未来の影が行き交うことはない
思い出や夢を封ずる袋を持たない

なんという狂気 あなたの枝枝は、そのままかれらをなぞる
一瞬の光となって 栄誉の重みにはじけるのだ
そして人間だけが帰ってくる

あなたの栄誉を蹴って 意識の海が立ち騒ぐ渚へと 
過去や未来が忽然こつぜんと浮上する

ぼくらの頭上 ほんのわずか ぼくらが差し上げる両手をひた
ぼくらの髪の森がそよぐあたりから あなたの領土がはじまる

あの蒼い芝生!!よりどころのない歓喜の布を拡げて
歓喜はその蒼い畑の縞となる 煙となる
太陽の黄金の藁に束ねられて なおも蒼い渕でふられる


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。



>>>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<<< 

 


亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。