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営業利益を重視?経常利益を重視?

中小企業や小規模事業者の経営者とお話させていただくと、「企業として収益物件を購入しようと考えているけど、どう思う?」という相談を仕事柄、時々受けることがあります。

回答としては、「事業継続のために必要であれば購入にも意義があると思います。(不動産関連業に事業転換される場合を除いて)あまりのめり込まないように気をつけてください」と伝えるようにしてます。

実際に数年前のコロナ禍において、本業の事業成績が厳しい中、収益物件の賃貸収入のおかげで企業活動を継続できたという事業者のお話も聞くことがあります。

営業利益・経常利益とは

<営業利益>
営業利益=売上総利益(粗利)-販管費
※売上総利益(粗利)=売上高-売上原価
<経常利益>
経常利益=営業利益+(営業外収益-営業外費用)

簡単に言うと、営業利益とは「本業で得た利益」、経常利益とは「本業で得た利益+本業以外の活動で通常発生する利益」となります。

前述の話でいうと、本業が不動産関連業の企業以外は、P/L上では不動産からの地代・賃料収入などは営業外収益に計上されることになります。

ちなみに不動産の売却益などは通常発生する利益とはみなされず、臨時的・偶発的なものである特別利益としてみなされ、経常利益の算定からは除外されます。

どちらの利益を重視したらいいのか?

結論から言うと、どちらも大事です(笑)

営業利益は本業での収益力を評価します。

個人的な感覚として、戦略ベースの経営コンサルタントは一年単位のフローであるP/Lに重点を置いたメニュー(営業利益にインパクトを与える収益拡大・コスト改善など)を得意とする人が多いこともあり、営業利益ベースに視点を置いていると思われます。

金融機関だと返済能力も見るため、EBITDA(営業利益+減価償却費)に視点を置いているかもしれません。

複数の事業を展開されている企業は、管理会計として営業利益ベースで事業別利益管理を行いモニタリングしていくことも効果的だと思います。

一方、経常利益は企業の財務状況まで加味した収益力を評価します。

前述の本業外での不動産収入や借入金の支払利息などB/Sに影響する事項も多く(固定資産の活用・借入金の推移など)、また自己資本を増加させる原資(臨時的・偶発的事項を除いたもの)となり、会社の存続・発展にもつながる利益とも言えます。

C/Fも含めた経常利益のコントロールに精通してアドバイスできる経営コンサルタント(公認会計士・税理士も含めて)は少ない気がします。

営業外収益の増加に注意

前述しましたが、営業外収益の獲得にばかり目を向けすぎると、幾つかの問題点を引き起こすことがあるので注意が必要です。

大きいところで次の2点が挙げられます。

本業への熱意が薄れる
社員からの信頼度が低下する

本業で汗水垂らさなくても、定期的な賃貸収入などが得られ一定の節税効果もあるので、だんだんとそちらにのめり込んでしまう経営者もいらっしゃいます。

あくまで、事業継続のための投資であり、リスクヘッジや社員の雇用維持のためと自覚しましょう。

本業ではなく不動産や株にのめり込む姿を社員が見た時、社員のモチベーションは一気に低下します(社員や会社のためにやっていると思っていても)。

自分の愛読書であり戒めのため年1回は必ず読み返すのですが、『起業の天才 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』でも江副浩正さんが株式投資にハマる様子が描かれています。

社員の心が離れていく様子など、経営者の在り方としての示唆も多いのでおススメの書籍です。


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