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バイリンガルなんて楽じゃない

バイリンガルって言葉を見かけますよね。そもそもバイリンガルってどういうことなんでしょうか。


バイリンガルとは

子供の頃なら二カ国語で「聞く・話す」ができればバイリンガルですよね。もっと大きくなったら「読み・書き」も必要になります。

という事は同年齢のネイティブと同じぐらい語学力があればバイリンガルということでしょうか。

これが大人だったらどうでしょう。子供と大人の語学力は大幅に違いますよね。

子供は言語を吸収しやすいと言いますが必要な語学力が低く、吸収する内容が簡単です。

ところが大人になるにつれてネイティブの語学力というのは指数的にレベルが上がります。子供とは根本的に違うのです。

大人でバイリンガルな人はどうやってそうなったのでしょうか。

バイリンガルの観点から

バイリンガル教育などとよく目にしますが、バイリンガル人自身の意見や経験はあまり見かけないですね。

私はアメリカに住んで40年以上になります。そのうち大部分を主に英語だけで過ごしました。今では英語の方が楽なぐらいですが、まだ日本語もそこそこ不自由無く使えます。

これは人によって違うと思うのですが、ここでは自分の経験からバイリンガルってどういう事なのか書いてみたいと思います。

英語子供時代

私は日本で生まれ、8歳の時に英語圏の外国へ行きました。

行った先の国では全日制の日本人学校に通って日本語のみ。家族とも日本語でした。英語に触れる機会がないので全く英語が身につきません。

いまだによく覚えていますが、テレビがさっぱりわからないのが本当に残念でした。コメディー番組で何がそんなにおかしくて大笑いしてるのか知りたくてしょうがなかったです。

みかねた親が英語の家庭教師をつけてくれました。何年も教わって英語を「聞く・話す」はとても身近になりました。でも大して喋れるようにはなりませんでした。

日本人学校には現地英語というクラスがありました。このクラスではネイティブの子供向けの読み書きドリルをやってました。 英文を読んで選択肢から答えを選ぶというもので「読む」の基本はここで身についたと思います。

こうやって少しは英語が身についたものの、テレビのジョークは全くわからないままでした。

英語学生時代

その後日本に帰りますが、三年後に親がまた転勤になってアメリカに来ました。高校一年生でした。

アメリカに来た時の英会話能力はアメリカ人の小学生レベルだったと思います。幸い読む・聞くはそこそこできたので学年を落とさずに済みました。

一年ほどで親がまた転勤になってどこかの国に行ってしまい、私はアメリカに一人で残りました。この時から日常生活は英語だけになります。

学生時代は友達も作りたいし、そういう年頃ですからなんとしても彼女が欲しいです。なので一生懸命に英語を練習しました。その甲斐あって友達がたくさん増えアメリカ人の彼女もできました。

学生時代は英語のアクセントにしろ言葉にしろ、間違うと周りがなおしてくれました。なので英会話の上達は早かったです。おかげでアクセントはほとんど無くなりました。

この頃はテレビや映画のジョークもわかるし、日常会話もネイティブと遜色なくできるようになりました。

英語社会人時代

その後社会人になってアメリカの企業で働くようになります。

でも学生時代と違って社会は厳しいです。アメリカの会社社会では外国人だから多めに見るというのはありません。英語も能力の一部として評価されます。

わからなくても誰も教えてくれません。まちがえても誰もなおしてくれません。できない人は置いていかれるだけ。アメリカの実力社会ってかなり無慈悲です。

この時点で私は聞く・話す・読むはふつうのアメリカ人並みにできるようになっていましたが、英語を書く能力が不十分でした。

英語を書く能力というと英文法の知識だと思われがちですが、ネイティブの社会人なら文法はできて当たり前です。私の問題は表現力でした。英語で書く際の表現力が圧倒的に足りなかったのです。

仕事の能力があっても英語能力、特に書く能力が足りないのはハンディになります。これではスタート前から落伍しているようなものだ、と気づきました。

そこで大学やコミュニティカレッジでふつうの人、つまりネイティブ向けのクリエィティブライティングや文学の授業を取る事にしました。

当時は今みたいにオンラインなんて無い時代なので、仕事が終わってから夜間の授業に通いました。宿題も多く、毎週英語の本を何冊も読み、幾つも英語のエッセイを書き続けました。

正直かなりしんどかったです。

でも英語を書く能力は飛躍的に向上し、上級のコースを終えた頃にはかなり自信がついてました。この辺でようやく英語がネイティブ並みになったと思います。

バイリンガルでいるために

思い返すと私が英語を身につけようとした理由はテレビ番組のジョークがわかるようになりたいとか、もっと友達の輪に入りたい、金髪の彼女が欲しい、仕事で認められたいといった願望でした。

一つの段階をクリアして願いがかなっても、次の段階でまた英語能力が足りず努力する、という事を長い年月繰り返してきたと思います。今では英語の方が楽だと思うようになりました。

でもそうすると今度は自分の日本語に不満が出てきました。伝えたい事が思うように表現できないのです。

言語は使い続けないと劣化します。英語だけで長年過ごせば日本語がおぼつかなくなって当然です。語学力を維持するためには劣化を補填しないとならないのです。

バイリンガルというとなんの努力もせずネイティブ並みの語学力がある人、と思うかもしれません。

私の経験ではたとえ今それだけの語学力があっても努力しなかったら二十年後もネイティブ並みではいられないです。

バイリンガルなんて楽じゃなかったのです。

こうやってNoteに書くのも実は日本語を使う努力です。
ニホンゴムズカシイけど伝わるといいな、と思いながら書いています。

ところで子供の頃に英語がわからなかった古いコメディー番組を最近YouTubeで観ることができました。内容は理解できましたが正直あまり面白くなかったです。

思い出はそっとしておけばよかったですね。

それではまた。 

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