「嘔吐」

今週は嘔吐からはじまった。原因はおそらく食あたりで、潜伏期間一日を経た月曜日に吐いた。最初の嘔吐は仕事中の会社であり、早退して病院〜家に着くまで計五回の嘔吐がまたあった。もうお腹に何もないからこれ以上出ないよというところで嘔吐はおわった。

嘔吐はおそらく小学一年生ぶりだったので、吐き気という予感と嘔吐自体の感覚に自分がすごくびっくりした。福引のガラガラのような感じ。沸騰して湯が沸くような感じ。グラグラして抑えられず、急に出る。

症状は軽く、次の日にはなんとなくだるいという気分が残っただけ。その日は大事をとって仕事も休み、ぬくぬくした布団に包まれてアニー・エルノーの「嫉妬」を読むなどした。おもしろく読めた。私は元気だった。

嘔吐と言えばサルトルの「嘔吐」という小説があって、倫理で習ったサルトルを妙にかっこいいと感じた高校生の私はそれを単行本で買った。今は無き宇都宮のパルコの本屋で。表紙にはにゅるっとした緑色のなにかがデザインされていたのを覚えている。そのせいで今も「嘔吐」という文字列を見ると、ああかっこいいなと思う。

漢字のせいかもしれない。身体性を伴うのに妙に人工的なカクカクした表記感。嘔吐。きもちわるさがまるで無い。絵になる。抽象画としても評価される。謳歌の謳に似ている。

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