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最高位戦北海道本部創設10周年記念特集!設立から現在まで、北海道本部を支え続けてきた本部長・鷲見智和選手へ第5回王者決定戦を解説して頂きました!

時は少々遡り2023年12月9日,12月10日。
最高位戦日本プロ麻雀協会・北海道本部の頂点である「北海道王者」を懸ける闘いが繰り広げられました。

我々の主戦場である最高位戦北海道リーグには、現状最高位へ続く道がありません。
ゆえに、この北海道王者が我々の目指す頂きの一角なのです。

最高位戦北海道本部は、39期創設。
今期49期にて10周年を迎える事となりました。
そんな節目の年に北海道王者を戴冠されたのは、創設以来本部長として北海道を支え続けてきた選手でした。

今回は間もなく開幕する最高位戦北海道リーグ49期10周年開幕記念としまして、北海道王者決定戦の思考を本部長に徹底解説して頂きます!


鷲見 智和

わしみ ともかず

39期入会
最高位戦北海道本部・本部長

初代北海道王者
第5回北海道王者

本部長に到るまでの経緯や背景は、”FACES”にて読む事が出来ます。
こちらも合わせて御覧下さい!



・個人的に伺ってみたい局を幾つかピックアップしてきたので、鷲見さん本日は解説宜しくお願いします!

まず1つ目は1日目、3回戦東4局です。
太田さんから立直を受けての打牌選択ですが、現物の8s切りで立直を打つ事が出来たし、カン8m外すにしても安全に7mから切る事が出来たにも関わらず鷲見さんは無筋の打9mを選びました。
この時の思考を教えて下さい。

「(解説がこの選択は凄いと唸る中)そんなに凄いかなぁ?笑 索子安くて4連形を保持していたから、カン8mで立直打つのは"もったいない"って感覚だった。
4s引いたら三門張だし69s引いての47s待ちも良いし、7s引きの69s待ちも薄いとはいえまだ立直打てるかなって。次の9s切られてだいぶきつくなっちゃったけどね」

・なるほど。7mから切らないのは、やはりドラが5mだから?

「そうそう。けど、5mを引いた時のカン6mは闇聴。
7pを引くと安全に4p切って567の三色が出来るし、もう一枚ドラ引いても安全に7m切って押し返せるので。
だから、9mから切ったのは解説の河野さんが仰る通り強気な選択、和了にいってる打牌。

ただ、もしも3枚目の9sが打9mの前に見えていたらカン8m立直になってたかも。4連形で安い索子とはいえ伸びが弱くなっちゃってるので。
なので、次巡9sが見えた後のツモ5pで弱気の選択に代わってるんだよね。

ただ、現物の7m切った後369sか47sになる聴牌はまだ押し返すつもりだったよ」

・ありがとうございます。この局は立直者の太田さんのツモ和了という結果でしたが、解説席を唸らせる1局でした。

次の局は2日目、6回戦東4局まで飛びます。
混一色一向聴から8pポンテン7700取らず。そして来輝さんの立直を受け4枚目の8pはポン。
この時の思考を教えて下さい。

上家、佐藤選手の河に注目。
7700のポン聴なんて、飛び付いてしまいそうだが…!?

「あー、これね。並びを作りにいったやつだね。
これ、僕目線じゃないとわかりにくいかもしれない。

実は發王戦の時もあったのよ。
水巻さんに3900放銃した局あるんだけど、点棒持ってるから押したんですねーくらいしか言われてなくて笑。
あれ、現状ライバルの優くんとのpt差考えたら刺した方が相当得だと思ってて。刺し込みにいってるんだよね」

・そうだったんですね。確かに、刺しにいってるとは思わなかったかも。
「んで話を王者決定戦に戻すんだけど、この6回戦時点ってもうほぼ太田さんと一騎打ちになってるんだよね。3番手の来輝ともこの時点でトータル60pt離れてる。

(動画を観ながら)んでここで8pスルーなんだけど、要するにもう既に太田さん直撃かツモしか考えてないんだよね。
この河でこの8pをポンした時って、次出る發中は「ロン」を言わざるを得ない。
發中シャンポン待ちを山越すって相当難しいし。

ただ、發中ポンしての47p待ちは山越ししやすいと思ってた。
太田さん47p切りそうな河してたし、全員が筒子切り出してて、山越しも含めて凄く良いのよ。
8pポンからは目立つし、山越しが効きにくい。鳴かなかった理由はそこだね」

・なるほど・・・来輝さん、佐藤さんを太田さんの下に潜らせる和了はもう選択に無かったんですね。
「今来輝がラス目、太田さんが3着目なんだけど。
来輝から立直がきても、それでも来輝から和了るつもりはなかった。
来輝が太田さん捲ってくれたら、自分に優勝ptが20pt入るって事だからね

んで、2枚目の8pはポンするんだけど。

これは来輝の立直が入って、”来輝のあの河だったら發中が太田さんからこぼれるかもしれない”に状況が変わったからだね。
2枚目の8pポンって弱くみえるじゃない。ケアするなら、立直者の来輝のはずなんだよね。

結果は上手くいかなくて危険牌持ってきてオリて、来輝がロン牌掴んで解説席が「あーー麻雀あるあるですね・・・」みたいな事話すんだけど。
言った通り来輝から和了るつもりは毛頭無かったので。全くノーダメージなんだよね笑」

・1枚目スルーしてすぐ来輝さんから立直が来て「鳴いとけば良かったって思ってますよこれ・・・」と解説がありましたが、実はむしろ歓迎くらいの感覚だったんですね。
「これがリーグ戦だったらさ、1枚目の8p誰もがポンするじゃない。
でもこれは決定戦であって、現状まだ太田さんを追いかける立場なんだから、決定戦バランスとしてはこれが自分のベストかなと思う


・あの闘牌の中にこれだけの思考が張り巡らされていたとは・・・。
確かにこれは鷲見さんの目線にならなければ理解が難しいかもしれない。
が、お話を聞いて全てが腑に落ちました。

次は、次戦の7回戦南2局。おそらく視聴者の大半がこの局を覚えているくらい印象的な局だったのではないでしょうか。
南ポン1000点の聴牌取らず。これは、最初から決めていたのでしょうか?

下家佐藤選手の打南をスルー。
トータル2位の太田選手の親を蹴っておきたい気もするが……

「これそもそもね、このツモ6pのところ打南でよかったなって。
既に南暗刻になる線が薄いからさ。後で観返して思った。
緊急回避の南ポンっていうのも含んで残してたのはあるんだけどね。
萬子の並びが凄く良かったので、6pなくてもここで組み換え効くかなって思っちゃった」

・確かに、立直が飛んできておかしくない巡目ですから、南置いておきたい気持ちも解ります。

「この局面で考えてたのは、太田さんが自分の1着順上で終わると最終戦着差勝負。
自分が太田さんの上で終われば最終戦そこそこの条件を突き付けられる
という事。
あとは、自分が”ラス親”であるという事。
当然自分が3人のターゲットで。
仮に南ポンの1000は1900和了ったとして、29100。
これは直撃やツモだったとしても、太田さんよりちょっと上なだけで。
この点差なら、その後みんなが着順落としに掛かってくる事が明白なんだよね。
だから、微差で迎えるオーラスは親被りで着順落とされるイメージしか無かった。
それらを踏まえて、太田さんが親被りで失点リスクの高いこの局が自分も1番リスク取りやすいなって考えてた。
1000,2000でもオーラス伏せられる点差までは離せるしね」

・今日は、凄く勉強になるインタビューです。
「太田さんの親を蹴っておきたい」という思考はなかったですか?

「当然あっていいと思う。
ただやっぱり牌姿が良かったのでね。ドラも1mで一通まで育てば跳満まで見える。要するに優勝が見える形だったから。
これを1000点で和了ってしまうのは、逆に優勝遠のくかもってイメージだった。
最終形は全然想像しない形だったけどね笑。萬子の伸びを期待してたのに7s縦に引いて」

・しかし、あの南ポンテン取らずが満貫に育った時は、いち視聴者として興奮しました。
優勝を手繰り寄せた1局だったと思います。

見事高めをツモって裏1の2000,4000!
カッコ良い。


・次はいよいよ最終戦、8回戦です。
東1局は69s平和を立直。役ありならダマ選択もあったのでは?

トータルで60pt以上の差を持った状態での選択だ。

「東1局ね、闇聴が普通だよね。でもここでの1300,2600めちゃめちゃ偉いなと思って。
ここで加点すると色んな選択が持てる様になる。
解説の小山プロが言う通り、見合う手であればリスク取るなら先であるほど頭取りの麻雀は良いというのはそこで。
69sは良い待ちで見合う手なんで、これで立直打って負けたらどんまいって感じ笑。
あと親の太田さんに和了らせる訳にいかないんで、仮に太田さんから立直来ても押すんだよね、この手。じゃあ立直だよね」

太田選手も和了らせまいとダブ東ポンで応戦!
しかしここは鷲見選手に軍配!
裏は無いが目論見通りの加点でさらなる優位を作り出す。


・逆に、東3局役なし両面ドラ1を今度はダマ。
この東1局との対比が面白いなと思いました。

「このダマは、先にリスクを取った事が功を奏したからだね。
現状ライバルの太田さんにラスを押しつけられているので、この局面はリスクを取るに値しない。

だから、この手が東1局に入っていたら立直になると思う。
こっちは待ちがC級ではあるんだけど、打点的にはさっきよりも価値が高いから。
要は、点況が大きな判断基準になってるって事。
この手に価値が無い訳ではないんだけど、今はまだ焦る時間じゃないなって」

・長時間の解説ありがとうございました!
これで僕がピックアップした局では終わりなのですが、鷲見さん本人が印象に残っている局というのがあれば伺ってみたいです。

「1番印象に残っているのは、実は清一色の局なんだよね。

7回戦東3局2本場

あの時、チーはするけどポンをする気はなくて。4pをポンしない選択を出来たのが自分の中で大きかった。あ、2pはポンするんだけどね。
4pポンすると、結構形きついじゃない。
5pチーがベストで、内側でもうひと面子作りたくて。
なので、清一色にいくなら4pポンは悪手だなと思ったんだよね。

んで、佐藤くんが萬子染め模様で4m余してたんだけど、「あれ、もしかして聴牌してない?」って気づき始めるんだよね」

・その根拠をお聞かせ頂いても?

「これは”間読み”が入るのだけど。
打4mの後でこの場に2枚の打西の時、映像では分かりにくいかもしれないけど一緒に打ってる側としては、佐藤くんの迷いっていうか「思考が入っている間」を感じて。

この1巡前の4pを鷲見選手はスルー。

それで、あ、まだ行けるなって思った。
この後の6sとかにも打牌に迷いがあって。聴牌してたらさすがにこの6sプッシュを迷わないはずなんで。
それで、中發やその後持ってきた3m押せたし、次の手出し入るまではもう全部切るつもりだった」

・"間"も貴重な情報という事なんですね。
聴牌してからの目まぐるしい待ち変化は、迷いはありませんでしたか?

「無かったね。まず25pは見た目で枚数少ないから369pに変えるでしょ。

んで、自分から2pが全見えなので1p狙いで147pに変えるので、まぁ迷わなかったかな」

見事ライバルの太田選手から直撃!
値千金の清一色だ。

・4pをポンする打ち手も居れば、佐藤さんを警戒して3mや發中を押せない打ち手も居たかもしれない。
これが優勝を左右するライバルからの8000直撃の結果になってたかどうかは、選手によって全く違ったかもしれないですね。
貴重な解説ありがとうございました!


もう少しだけインタビューにお付き合い下さい。
今までに二冠を手にした者が居なかった北海道王者ですが、二冠を意識はされていましたか?

当然意識してた。
麻雀っていうゲームの性質上、1回獲ってもたまたまって思われるかもしれない。
でも「2回獲る」って、1回よりだいぶ評価高いと思うんだよね。
だから、そこを目指してた。
あと、先に誰かに2回先に獲られたら悔しいじゃない笑」

・そう考えると、同じ2冠目を懸けていた太田さんと最後まで競り合ったのは熱かったですね。

「勝てて良かった。過去に王者を獲っている小澤さんやアルトも強いじゃない。
でも、まだまだ俺も負けてないぞっていうの見せたかったしね。」

優勝を決めた300,500。
申告する声は普段より上擦った様に感じた。


・それでは最後に「王者として1年の目標」で締めたいと思います!

「まぁ、發王戦本選が先日既に終わってしまったのだけど、多少はチャンスを頂ける1年になると思うので。
本部長という立場がどうよりも、プレイヤーとして頑張りたいという気持ちが強い。

今までは友達とか近くの知り合い、北海道本部の選手にしか見てもらえる機会って無かったけど、王者決定戦と發王戦、立て続けに放送対局があったりして繋がりの無かった方々にも内容を観て頂けて。
友達だからとかじゃなくて、いちプロとしての自分を応援してます!と言って頂ける事が増えた。
もっとそういう機会を増やせる年にしたい。
むしろ、プロとしてはそこにしか興味が無いんだよね、元々。
願わくば「結果」「麻雀の内容」で羽ばたきたいと思ってる。
そういう部分を突き詰めて、飛躍の一年にしたい。

今年もう1つタイトル獲りたいなぁ。せめてG1タイトルの決勝には残りたい。
まぁ、この前發王戦ベスト8目前で負けたばっかりなんだけどね。
っていうかめちゃめちゃチャンスだったじゃん、あれ!笑

でも、以前よりも「結果残せるかもしれない」って感触はあるんだよね。
全国のトッププロと真剣な場で戦ってきた中で自分の麻雀のどこが通用して、どこがまだ足りないかっていうのが、見えて来てて。
そこを突き詰める一年にも出来たらと思う」

10年間本部長として北の大地を支え続け、2度目の北海道王者を戴冠した鷲見智和選手。
放送対局1日目の解説を担当して頂いた河野直也プロの、印象に残った一言があります。

4回戦を打ち終えた後のインタビュー。
「もういいんじゃないですか。本部長としての肩書きを取っ払っても」
というお言葉。

何故印象に残ったかというと、筆者も同じ気持ちだったからです。
しかし、今日のインタビューで自分は勘違いしていたのだ、と思いました。

鷲見選手は本部長という肩書きを持っていても、最初から前線での活躍を所望する「プレイヤー」だったのです。
ただ、全ての選手と公平に接する立場であろうとし、感情を表に晒さなかっただけの事。
内では、常に滾っていたのでしょう。

優勝が決まった時の弾ける様な笑顔。
發王戦トーナメント4のオーラス、坂本プロに放銃してしまった時の無念。
そして1300以上の放銃が敗退で、打点が1000だった時の安堵の表情。

ひとたび北海道を離れ枷を外した鷲見選手は、人間味溢れる紛う事無き麻雀打ちでした。


「本部長」という印象の強い鷲見選手は、タイトルに手が届くほど強い「プレイヤー」。
北海道王者を手に入れ、發王戦にてトッププロと互角に渡り合う姿が全国に披露された事は筆者としても非常に喜ばしい限りでした。

今期が鷲見智和選手の飛躍の年となる願いを込め、この記事に句読点を打ちたいと思います。


鷲見さん、北海道王者戴冠おめでとう!!!


著:川岸 恵介(最高位戦日本プロ麻雀協会・北海道本部)
協力:鷲見 智和(最高位戦日本プロ麻雀協会・北海道本部)

画像引用:最高位戦日本プロ麻雀協会公式YouTubeチャンネル


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