現在地:ドラマ「山河令」

先日、久々に記事を書いたら文章書くの楽しいな!となったので、その勢いがあるうちにドラマ「山河令(さんがれい)」についても綴っておきたいと思います。
原作はPriest先生のBL小説「天涯客」。

私が「山河令」のことを知ったのは、これまた魔道祖師から陳情令経由で色々と調べている時でしたが、実はあまり深く印象に残っているエピソードは特に無く……この段階では、山河令と同じPriest先生が書かれた小説が原作の鎮魂についての方が印象に残っていたように思います。
仕方ないよね、一万年待つ攻とヒゲの受だもの。
ドラマ「鎮魂」については別で記事をまとめていますので、よろしければ読んでみてください。こちらも本当に面白い作品なのでおすすめです。

話を戻して「山河令」。
特に強い印象も、そこまで強烈に興味があったわけでもなく、陳情令をぐるぐる観続けていた頃にWOWOWで放送が始まり、たしか1話が先行放送でオンデマンド配信もされたということで「まあ観てみるかあ」と休日のお昼頃にiPadでオンデマンド配信を再生したのでした。
そしてオープニング曲が流れ、ストーリーが進んで行き、張哲瀚さん演じる元暗殺組織首領・周子舒(ジョウ・ズーシュー)が雪が舞い散るなか馬に跨り朝廷を去る姿。
一話視聴されている方はどのあたりかご存知かと思いますが、もうこの辺りで己の軽々しく浮ついたちょっと観てみっか!みたいな様子見体勢に猛省し、急いで録画予約をしたのでした。
WOWOW様が一話だけ先行してくださったので、私は救われたと言っても過言では無いのです。

また前置きが長くなりました。
まずは公式が作品の雰囲気や、ここ入れて来る?!というような最高の予告編をまとめてくれているので紹介します。

知己!!!(飲み干した盃を机に叩き付ける)
文章だけ見ると、主人公ふたりのやりとりは素面ではちょっと赤面してしまいそうなんですが、これがするっと入って来るのがドラマ「山河令」の醍醐味だと私は思っています。

お酒に例えますと、甘すぎず飲み口がいいのに、気付けば脚に来るタイプと言いますか。
その銘酒具合を用語など少し説明を加えつつ紹介したいと思います。

「山河令(さんがれい)」とは。

まずは公式の紹介文を引用しておきます。

朝廷の暗殺組織「天窗」から抜け出すために、⾃⾝の体にくぎを打ち、代わりに残された3年間の⾃由を得た「天窗」の元⾸領、周⼦舒は謎の男、温客⾏と出会い、⼀夜にして無敵になれるといわれる武庫の鍵「琉璃甲」をめぐる壮⼤な争いに巻き込まれていく。

https://www.cinemart.co.jp/dc/c/woh.html

世界観について。


「山河令」は中国ではメジャーなジャンル「武侠」の世界観がベースになっています。
己の信条に則り正義を貫く考え。その精神を「侠」。その精神を貫くための方法が武術で「武」。
このふたつが組み合わさり「武侠」とされているようです。
ちなみに、武侠モノの時代設定は中国の春秋戦国時代から最後の朝廷清代までの近代以前が舞台になる事が多いそう。

「江湖」という言葉も武侠には頻出しますが、これは武侠の世界での「世間」を指します。この世間は武術を会得した人々が所属した世界であり、一般大衆の世間とは別物のようです。

これもお約束のようですが、江湖では「正派」と「邪派」の対立があり、正派の中でもそれぞれの剣術などの流派による対立が起きたりと混沌としています。
山河令でも正派の中に五つの異なる剣術をおさめる門派が同盟を結んだ五湖盟があり、邪道にあたる鬼谷(人ならざる道を選んだ者たちの集団)と対立している構図です。

また、手に入れれば天下を掌握できる「秘伝書」の存在もお約束であり、山河令でも秘伝書を収めたとされる武庫の鍵となる「瑠璃甲」が物語の鍵を握ります。

そして「技」。これは主に江湖に所属する人々が修める「剣術」と「内功」を指すようで、剣術は字のごとく剣の扱いであり、内功はすべての力の源であり気功などと呼ばれる場合もあります。
いわゆるエナジーとかそういう目に見えない力と言えばわかりやすいかな。
内功を鍛えれば肉体も強靭になり、軽功(目にもとまらぬ速さで駆けたり壁を走ったり)や治癒、空を飛んだり古い冷酒を熱燗に変えたりもできるわけです。
山河令では「内力」と表現されています。
漫画やゲームで一度は触れたことがある、不思議な力の存在に近いでしょうか。

そんな力と陰謀渦巻く江湖で、周子舒(ジョウ・ズーシュー)と温客行(ウェン・コーシン)は出会い、物語が広がって行きます。

原作とはキャラクター設定なども色々と変更されているようで、温客行と周子舒(攻受の順で記載)もドラマではこれまたやむなしブロマンス手法により別の関係に置き換えられています。
この別の関係というのは物語の重要な部分になると思いますので記述を避けますが、これによって「知己」とは何なのか?!と我々を混乱に陥れた「知己っぷり」が可能になったのか、とにかく凄いもんを見せてもらいました……。
プロデューサー、監督、本当にありがとう……。

キャラクターと俳優の魅力


張哲瀚さん演じる、周子舒(ジョウ・ズーシュー)。
四季山荘という門派の元荘主であり、朝廷の暗殺組織「天窗(てんそう)」の元首領でもあり、訳あって偽名を名乗ったことから、温客行から阿絮(アーシュー)と呼ばれるようになります。
なんだかんだ冷酷になりきれず他人を見捨てることが出来ない、結果として面倒見の良い美丈夫。酒狂い。
武術の腕前は凄まじく、ハンディキャップがあってもとにかく強い。
美人だが、一目で息を飲むほどの迫力な華があるわけでは無いので気付かれにくいが、気付かれたが最後どっぷり厄介な男に執着される薄幸の美人じゃないかな、と個人的なイメージ。

白衣剣という軟剣(剣身が柳のようにしなやかに曲がる剣)を操り、軽やかな足取りのバトルシーンが印象的な阿絮ですが、この軽やかさは張哲瀚さんの身体能力の高さから来るに違いない。
ワイヤーアクションは中国ドラマでは定番でしょうが、とにかくふわっとして美しい。
インタビューでアクションには慣れていると言われていたので、慣れもあるんでしょうがこの辺はやっぱりカンの良さとセンスに身体能力が合わさらないと無理だと思います。
山河令はカメラワークやカット割りもかっこいいので相乗効果です。
なんとも楚々として端正で、はっとするほどの華やかさではないけれど美人だなあとしみじみしてしまうので、抱いている阿絮のイメージにピッタリ。


龔俊さん演じる温客行(ウェン・コーシン)。
お金持ちの謎の男……でもなんかめちゃくちゃ強い。なぜ強いのか、はやはりただのお金持ちの謎の男では無いからです。
肩甲骨を見ればその人が美人かどうか見分けられるという謎の特技を持っている。
周子舒は剣を扱いますが、温客行は常に持ち歩いている風雅な扇を武器として戦いの場でも扱い、その所作がなんとも美しくとんでもなく強い。
剣などの長物を扱う相手を扇ひとつで圧倒していく様が堪らない。
個人的には胡桃(ナッツの)で人を殺すタイプの攻は初めて見たので、あのシーンが印象深いし大好きです。

温客行、とにかく序盤からずっと周子舒を気に入って追い掛け続け、熱っぽく見つめたり、軟派に口説き文句と取れる発言をしたり、美人だと褒めたたえたりとにかく甘ったるい色気で溢れたキャラクターなんですが、軽薄そうに見えて全く違う顔も持っている。
龔俊さん、ばっと大輪に咲いた花のような華やかさを持った俳優さんだと感じましたが表情や視線の演技がなんとも絶妙で、お顔立ちの影響も強いと思いますが……いつもふにゃっとゆるんだ厚めの唇がなんとも色っぽく、世の中を揶揄っているように笑みを含んだ視線がキャラクターの江湖から浮たっている雰囲気にぴったり。
そうかと思えば、視線だけで命を奪うような表情もされるのでキャラクターに深みが増して素敵でした。
扇の扱いはかなり練習をつまれたようですが、本当に素晴らしいので手元にもぜひ注目してください。
余談ですが、口を開けば阿絮を呼んでいるか口説いているかなので、温客行のおかげで阿絮の名前を覚えなくて良くて助かりました笑


主役の脇をかためるキャラクターにも注目。
張成嶺(ジャン・チョンリン)は五湖盟に属する鏡湖派統領の三男坊。
瑠璃甲を廻る悲劇に巻き込まれ家族を失うが、周子舒に命を助けられ紆余曲折を経て弟子となります。
まっすぐで結構図太いところもある成嶺が、良い具合に温客行と周子舒のクッション役となっています。
夫婦喧嘩としか取れないようなふたりのやりとりの間に入って行く様なんか、息子のようで「やるなあ成嶺!」となったり。

正派と対立する「鬼谷」や、北方を縄張りとした天窗と対立する暗殺組織で南方を縄張りとする「毒蠍」も外せません。
その他もとにかく多くの登場人物がいて紹介しきれませんが、金庸の小説を読んだときに感じた武侠ものっぽさのひとつが登場人物の多さでした。
文章では混乱してしまったのですが、やはり視覚の情報があると強いのか私はそこまで混乱せずにいられました。
これも最近鍛えられている気がする中華ドラマ筋のおかげかもしれませんが……。

私が特に大好きなキャラクターは温客行の侍女「顧湘(グー・シアン)」、
長明山の剣仙で周子舒の師匠に白衣剣を贈った人物で見た目は若いが実際は……?な「葉白衣(イエ・バイイー)」。
葉白衣と温客行のやりとりが小学生みたいで大好き。

「山河令」の物語を楽しむプラスアルファ


そして、物語が進むにつれてそれぞれが纏う衣装も変化していくので、着こなしを見るのも楽しみのひとつ。
衣装の色には特にこだわりがあるようで、キャラクターの心境の変化に合わせて衣装の色も変化しているのだとか。
また、会話のいたる部分に漢詩や古詩が引用されており、その美しさも物語の中で一貫した役割を果たしています。

「知己に遇(あ)えば、山河も重からず」

これは9話で周子舒が語る言葉です。これは唐代の詩人である鮑溶の詩「壮士行」の一節を引用したものだそう。
知己という存在の重みをこんな短い言葉で美しく表現できるなんて、詩人は素晴らしい。
陳情令で知己という言葉が身近になったのは私だけでは無いと思いますが、
また陳情令とは違った、連なる山と流れる大河のごとく雄大で奥深い「知己」に出会うことができた作品が「山河令」でした。

温客行も周子舒も一度は生きることに疲れ果て、生きることへの喜びを失った二人ですが、お互いの傷を受け入れケアし合い、そしてかけがえのない知己へとなっていく。根底にある優しさにため息の出る作品なのです。

漢詩などが多く引用された台詞に込められた意味や、前述した衣装のこと、あとやたら登場する「あのナッツ」のこととか。
シネマートさんが、山河令特集を組んでかなり面白くて興味深い記事にまとめてくれているのでおすすめです。
私はこの記事書く前に一通り読み直しましたが、本当に面白かった!

そして楽天TVの特集ページは何もしなくても簡単に1話無料視聴できてしまうので、ぜひ!

メイキングも!


4月にBlu-rayが発売されたばかりなんですが、日本語吹き替え版が収録されていたり(諏訪部さん、石田さんという豪華さ!!)特典の冊子が本当に素晴らしいので購入考えている方には全力でおすすめです。
詳細は公式サイトへどうぞ。

配信情報

残念ながらWOWOWでのオンデマンド配信も終了し、見放題で視聴できるサイトが現状無いようです。
一番良さそうな楽天のリンクを記載します。
もっともっと配信先が増えて視聴しやすくなりますように!

楽天TV


興味持ってくださった方、ぜひ山河令を登山して頂上の「知己」を目撃してください。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




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