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災害が発生した際には電力の安定供給は?電力自由化でどう変わる?!
はじめに
電力自由化が始まり、一般家庭での電気も様々な業者から購入先を検討できるようになりました。
中には、電力会社から購入するよりも電気料金を安く抑えた価格で提供するプランを発表している新規事業者も存在します。
その場合、地震や災害と言った異常時に、電力会社と契約していた時と比べて停電が発生する確率が高くなってしまうのではないかと心配になる方もいるのではないでしょうか。
今回は電力の完全自由化で電力の安定供給がどう変わるのかを考えていきたいと思います。
大規模災害発生時は大丈夫?
電力の完全自由化後、大規模災害が発生した場合はどのような状況になるのでしょうか?
東日本大震災時には主に東北方面の水力、火力、原子力発電所の多くが稼働停止となりました。
それでは、新規事業者と契約している場合に、大規模災害が発生した場合はどのようになるのでしょうか?
広域停電は同じ
東日本大震災では、電力会社が電力の供給ができなくなり、長期間の停電が発生しました。
その後、停電が復旧した際にも度々の停電がありました。
首都圏では、計画停電をおこなわなければならない状態となり、電力の安定供給がこれまでになく話題となったことを記憶している人も多いと思います。
新規事業者と契約している場合でも、東日本大震災の規模の災害が発生してしまえば、状況は変わらないと考えられます。
新規事業者と電力会社の違い
しかし、新規事業者と電力会社との大きな違いは企業規模です。
言わば巨人と小人のような体力差があります。
東日本大震災時にも多くの中小企業が、事業継続が困難となり倒産しました。
震災発生後の急激な需要の落ち込みに耐えることができずに、倒産した企業もあります。
災害時には企業規模も大きく影響します。
災害の発生後も安定供給を行うこと
新規事業者にも電力の安定供給は法律により義務付けられております。
新規事業者登録時に経済産業省はその部分の審査も行います。
企業規模や災害発生時の安定供給の計画なども合わせて審査対象となります。
事業継続ができないと言って簡単に撤退するような企業が参入してこないように規制しています。
大規模災害は発生してみないと分からない
前項では災害時も新規事業者にも電力の安定供給が義務付けられていると説明しました。
しかし、東日本大震災時も同様でしたが、大規模災害は発生してみないと何が起こるか分からない側面があります。
震災前は、東京電力が原発のメルトダウンを発生させるなど一般の方は誰も想像していなかったのではないでしょうか。
まして電力の完全自由化は、政府がこれまで行ったことのない政策ですので尚更です。
余剰設備は災害発生時に役立った
東京電力管内で、東日本大震災後、稼働中の原子力発電所は全て停止しました。
これは東京電力発電量の3~4割に当たる大きな供給力が突然なくなったことになります。
そんな供給力が一気になくなれば、普通は需要に追い付かくなる異常事態となります。
しかし、数週間の計画停電後、電力の供給は元通りとなりました。
これは、計画停電を行っていた期間に、休止していた火力発電設備の緊急メンテナンスを行い、稼働させたことで急場をしのいだ形となります。
それだけの余剰設備を東京電力は保有していたということです。
大規模災害時にはここまでの対応はできるのか?
新規参入業者が大規模災害時に、ここまでの対応ができるのかと言えば、答えはNOです。
おそらく何もできずに見ていることしかできないと思われます。
災害地域であれば、自社保有の発電所も点検し、その間も契約者に電力供給を行わなければなりません。この場合、電力会社から電気を買い取って供給しなければなりません。
コスト面では点検費用と電力補てん費のダブルパンチとなることが予想されます。
その間に事業継続が困難となる新規参入業者が現れても何ら不思議ではありません。
2020年までは暫定措置として料金規制が残る
こうした災害時には、新規参入業者が電力を電力会社から買い取って供給する可能性が出てきます。
その場合、想定外のコストを契約者に電気料金値上げとして求めるかもしれません。
しかし、暫定措置として2020年まではこうした不当な電気料金の値上げを禁止しています。
2020年までは電気料金の上昇リスクがゼロとなります。
しかしそれ以降は、現在の法律上、自由競争が行われることになっています。
その間に災害時の対応も含めて本当にどの電気供給会社がいいのかきちんと見極める必要があります。
強風や電気設備故障といった小規模災害時にはどうなる?
大規模災害時の電力供給について前項までで説明しました。
次に台風や設備の故障と言った地域が限定された場合の小規模災害時はどうでしょうか?
電力の安定している状態って?
突然ですが、電力が正常に供給されている状態とはどういう状態だと思いますか?
一般に「電力品質」というものが定義されています。
電力品質とは大きなもので「規定電圧」「規定周波数」「瞬間停電の有無」「停電時間」です。
規定電圧は一般家庭であれば交流100Vがコンセントまで安定的に供給されているかが判断基準となります。
規定周波数は、東日本では50Hz、西日本では60Hzが変動なく供給されているのかが判断基準となるます。
瞬間停電の有無や停電時間は文字の通り停電していないかというものです。
電圧、周波数を維持するのは大変?!
あまり知られていないのですが、これまで電力会社がこの電圧、周波数の安定を維持するのに、多大な労力を払ってきたのです。
例えば大きな工場などで夕方の終業と合わせて機械が止まったとします。
電力供給系統は、今までの状況と変化が現れるため、何もしないと電圧、周波数は上昇する傾向があります。
そうなると、一般家庭での電気も電圧、周波数が上がってしまいます。
実は電力会社の制御センターでこうした需要の変化に基づいて、各電力機器を遠隔制御して電圧、周波数が安定するよう維持しているのです。
ここでは24時間、監視員が電力需要を監視し、設備事故や需要の変化がないか常に見張っています。
架線に物が引っ掛かっただけで停電?
よく電車が遅延した理由として、台風などで架線に物が引っ掛かり停電したという話を聞きます。
これだけ多くの送電線が全国にあるのに、強風で停電したという話は少ないです。
実際にそうした状況というのが頻繁に発生しているのですが、停電には至っていないというのが正確な状態です。
では、なぜ停電が少ないの?
ここにも電力会社の停電防止のために尽力している実態があります。
まず、どこか一つの送電線で架線にものが引っ掛かり停電が発生したとします。
その送電線は一時的に電気を送ることが困難となり、送電を止めたとします。
その際に、電力会社の制御センターで、その配下の家庭などに影響が出ないよう予備送電系統からの供給へ切り替えているのです。
その際に多少の電圧や周波数の変化があるかもしれないのですが、普段の生活には影響が出ないレベルのものです。
送電線のメンテナンスも電力会社
予備送電系統への供給中に、制御センターは保守部門と連絡をとり、送電線での異常個所の復旧を行います。
復旧の確認が取れたら、その送電線での供給を再開します。
このようにして停電する時間が全くない状態が維持されているのです。
電力安定供給のためのコスト
こうした異常が発生した場合、電力会社は見えない所で努力を重ねて、電力の安定供給を確保しています。
こうした異常時に働くもの(予備送電線など)は、異常がない状態では余剰設備となってしまいます。
法律により規定されている安定供給
新規事業者が建設した発電所で、故障が発生して発電ができなくなったとします。
そうなった場合、新規事業者と契約している家庭は停電してしまうのでしょうか?
そんなことはありません。
必ず、そういった異常時にも電気を供給できるよう調整用電力源を持つよう新規事業者にも法律で義務付けています。
これは、発電所内の予備発電機などになります。
新規事業者の発電所が運転不能になったら?
それでも電力会社と比較すれば、発電所の数などは少数の新規事業者です。
全発電所が運転不能となることも十分考えられます。
その場合、新規事業者が契約した供給先へは、大規模災害時同様、新規事業者が電力会社から電気を買って、臨時的に供給します。
これは自社で発電した電気ではないため、新規事業者にとって大きな負担となります。
契約内容に要注意?!
あってはならないことなのですが、こうした故障の安定供給時には注意が必要です。
今までは電力会社が故障時の対応などを一元的に行っていたため、別料金が発生するということはありませんでした。
しかし、新規事業者は、こうした故障が発生した場合のコストを見込んでいない可能性も否定できません。
そうした場合、発電所の故障などは新規事業者の責任なのですが、その間の電力会社から買い取った電力の費用が契約書上、利用者負担となっている可能性もあります。
2020年まではこうした場合でも値上げのリスクはありませんが、契約書をよく読む必要があります。
契約書をよく読んで、不明な点がある場合は契約先の電気販売業者に問い合わせるようにしましょう。
一見安いと思わせるプラン
通信などでよく行われているのですが、一見すると安くなると思わせる料金プランがあります。
細かい文字で、様々な場合は例外ということを謳うもので、通信分野では問題となりました。
決してこれが違法というわけではなく、販売方法のひとつなのですが、釈然としないものがあります。
電力の完全自由化で消費者が電気の購入先を選ばなければならない時代ですので、こうしたリスクも十分考えなければなりません。
契約時の総合的な判断を
電気の購入先はゆっくり検討して、問い合わせを行って、総合的に得となる電気販売業者から購入することをお勧めします。
他の業界の動きも頭に入れておきましょう。
2017年からは都市ガス販売の規制が緩和され、今まで都市部でのガスは都市ガス会社の地域独占でしたが、電力同様販売の自由化が始まります。
電力の販売を開始した東京ガスに対して、東京電力も都市ガス販売が、一般家庭へ可能となります。
火力発電用に天然ガスなどを保有する東京電力にとってもビジネスチャンスとなります。
これから東京電力と東京ガスが、それぞれの顧客の囲い込みを行うものと思われます。
電気料金上昇抑制と安定供給
政府は電力自由化で、企業競争による電気料金の価格上昇抑制を目的としております。
しかし、電気料金抑制と安定供給は、相反する関係にあります。
設備投資を多く行えば、異常や災害に強い発変電系統が構築され、ちょっとのことでは供給がストップしない安定した電力ができます。
しかし、その分の設備投資費用は電気料金として跳ね返ってくることが想像できます。
シンプルな構成の発変電系統の方が、低コストで構築でき、電気料金も安くすることができますが、災害時には停電を起こしやすくなります。
安定供給は電力会社一人勝ち?!
結局のところ、電力の安定供給と言う意味では、国内で電力会社に勝る企業は存在しません。
しかし、それにおごっていた部分も電力会社には少なからずあります。
事実、震災後の計画停電の実施は、法律的には合法なのですが「うちが供給できないんだからしょうがないだろ」と言うような態度に思われた方もいたと思います。(私もそう思いました)
計画停電を行い、正常に戻った経緯が前項で説明しましたが、本当に計画停電をするほど電力供給がひっ迫していたのか、未だに疑問の声があることも事実です。
その当時、電力の受給を本当に把握していたのは電力会社しかなかったからです。
独占体制から消費者目線へ
こういった電力会社の傲慢な対応が自由化によって変化していくことを望む限りです。
民営化した後の国鉄が、昔とは比べ物にならないぐらいサービスが向上したように、電力会社にもそうなってほしいと切に願います。
終わりに
災害や異常時に頼りになる存在は貴重な存在です。
しかし、それを逆手にとって法外な報酬を求めてしまえば、普段の評価は最悪になってしまいます。
こうしたことから電力会社もどうすれば顧客、利用者からもっと支持されるのかということを真剣に考える必要があると考えられます。
電力会社にとって今まで利用者は、本当の意味での「お客様」ではなかったのではないでしょうか。
電力会社がそうした顧客目線になれるよう、電気利用者もその動向に注目する必要があります。
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