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電力自由化記事リンク切れ補完:電力自由化での田舎の電気はどうなる?! ユニバーサルサービスの実情

電力自由化が始まったころの課題を書いております。
現在も共通するのでは、と考えます。

電力自由化での田舎の電気はどうなる?! ユニバーサルサービスの実情


はじめに

電力の自由化により、電気販売会社を自分で選ぶことで、電力会社の提供する料金プランよりも安いプランを選択することも可能となりました。
しかし、逆の言い方をすれば、電力会社も電気料金に対して採算性を求めて、容易に値上げを行うこともできるようになったということになります。
電力事業は、電力会社に独占が認められていた代わりに、公共性を重視し価格の変更には法律的な根拠が必要となっていました。
しかし、電力自由化により、この公共性よりも企業の採算を求めて電気料金を変更することも以前と比べて行いやすくなったということも事実です。
そうなると、都市部のような人口が多い地域であれば、電力事業規模が大きいため、新規業者が多く参入してきますが、離島や山間部のような過疎地域ではどうでしょうか?
今回は、電力自由化で田舎と都会の電気に差が出てくるのかと言うことについて考えていきたいと思います。

電気料金はどうやって決まる?

電力会社電気料金は発電や送電にかかるコストに、一定の利益を載せて算出されていました。
新規参入の電気販売会社は、発電所を自社でする場合は、発電にかかるコストと電気を送電する際に電力会社から送電線を借りて契約者まで送電する借用費用(託送料金)と利益を載せて算出しています。
この送電線の使用料である託送料金は、遠くの発電所から送電するとその分だけ多くかかるようになっています。
そのため、近くに発電所があれば、その分だけ託送料金が安くなります。

離島などでは電気が送れない?!

伊豆諸島や小笠原諸島と言った、本土と電線がつながっていないような地域のことを考えてみましょう。
この地域では、島に電力会社が建設したディーゼル発電所があり、そこから電気を供給されています。
また、沖縄は本土と送電線が接続されていませんので、沖縄電力の発電所で電力が賄われています。
こうした地域へは、電気販売業者は送電線を使って電力を送ることができません。
実際に新規参入業者は離島等への電気販売を対象地域外としている場合が多いです。

電力自由化で離島などの電気はどうなる?

電力自由化により、電力会社がより採算性を求めることができるようになったので、離島等の電気販売から撤退することも可能なのでしょうか?
そうなると離島等人口の少ない地域は電力会社から見放されてしまうことになってしまいます。
政府はこのような状況を考え、人口の少ない地域でも都市部と同じ電力を維持できるよう電力会社と電気販売業者に義務を課しました。

通信や郵便でも行われているユニバーサルサービス

こうした人口の少ない地域でも、都市部と同一のサービスを提供する制度をユニバーサルサービス制度と言います。
これは都市部での電力事業で得られた利益の一部を、人口の少ない地域で同一の電力事業を行った場合の損失額へ補てんするという制度です。
通信や郵便など、国が行っていた事業が民営化された際にも同様の形態がとられました。

通信事業でのユニバーサルサービス例

ここで通信の場合の例を見てみましょう。
都市部での電話やインターネットの料金の内訳には、少ない額ですがユニバーサルサービス利用料というものが加算されております。
ここで徴収された料金は通信事業者内のユニバーサルサービス基金に集められます。
人口の少ない地域での事業で、赤字が出た場合、この基金から補てんを行い、その地域での事業継続が可能になります。

ユニバーサルサービスの問題点

ユニバーサルサービスによる事業継続は、人口の少ない地域では、赤字続きでもよいということになってしまいます。
もともと、離島などでの電力事業は利用者が少ない割りに過大な設備投資を行っている状態です。
この状態から黒字を見込むことは難しいのですが、このユニバーサルサービスを重視しすぎてしまうと、自由化以前と大して変わらないことになってしまいます。

ユニバーサルサービスの負担はどこがするか?

ユニバーサルサービスの費用負担は結局誰がするのか?という問題になります。
政府は現在、今までも人口の少ない地域での電力事業を行っている電力会社への費用負担を求めておりますが、あまり行き過ぎると電力会社への独占事業回帰を招くことになり、現在も議論が続いております。
【都市部での電力事業】
人口の少ない地域ではそのような状況となっている反面、都市部では様々な電気販売業者が様々なプランの提供を発表しております。
また、自由化が先に行われていた大規模事業所や公共設備での電気販売では、入札による年間電気販売契約先を決定しています。
入札参加企業は、地域の電力会社はもちろん参加するのですが、他地域の電力会社や新規の業者なども参加し、最低価格を競っています。

結局のところ都市部の電気の方が安い?

電力自由化による競争の激化により、恩恵を受ける地域は都市部のみということになるのでしょうか?
人口の少ない地域は、結局電力の購入先が電力会社からしか選択することができず、相対的に高い電気料金を払い続けなければならなくなってしまうのでしょうか?

電力自由化で電力会社の経営効率化も求めている

政府は電力自由化により、新規参入業者を増やすことを認めた他に、電力会社の経営の効率化も狙いとしています。
今まで電力は国を支える公共性の高い産業ということで、株式上場をしている民間企業に独占権を与えてきました。これは日本国内では異例の措置です。
その結果、企業の設備投資をそのまま電気利用者に反映できるシステムが出来上がりました。

Jビレッジは必要だったのか?

現在、福島第一原発の廃炉作業員が集まっているJビレッジですが、もともとはサッカーのナショナルチームの訓練施設でした。
東京電力とサッカー協会が出資して設立されたのですが、当時国内最大規模の豪華なサッカー訓練施設でした。
東京電力は地域貢献を名目に多額の出資をしましたが、利用者の有無など建設当時から疑問の声が上がっておりました。
結局、原発事故によって本来の使用はできなくなってしまいましたが、こうした施設の建設にも電気料金が使われております。

電力会社の電気料金はもっと安くできる?

こうした電力会社のお金の使い方を見ると、まるで役所の予算のようです。
民間企業であるにもかかわらず、公共性を重視しすぎて予算消化のために無駄な施設の建設を行っているようにも見えます。
こうした電力会社の経営を見直すだけでも、電気料金は安くなるのではないでしょうか?

電力会社による改革

東京電力は、電力の完全自由化に先駆けて2013年に経営改革を発表しました。
10年間で約5兆円のコスト削減を目指すというものです。
東京電力の総資産が14兆円とも言われておりますので、約3割を削減するという大改革です。
東京電力は原発事故を起こした等の事情もありますが、電力自由化がなければおそらく計画されていなかったでしょう。

無駄な費用の電気料金反映がなくなる?!

電力会社の経営体質に対して、外圧により経営効率化を促すことも政府の狙いでした。
電気利用者が他の会社から電気を購入する選択ができるようになれば、電力会社から購入しなくてもよくなります。
利用者の立場になっていない経営を続ければ、いずれ利用者が減ってしまいます。
電気利用者の納得できない料金プランを打ち出すことが困難になってくるため、電力会社も意識改革を迫られます。

公共性を名目に電気料金は上昇する?!

ここまで電力自由化によって、電気料金が安くなるかもしれないという話をしました。
しかし、現状はそこまで簡単ではありません。
電気は日本国内どこでも同じ品質を維持するよう義務付けられております。
人口の少ない地域でも、電力事業を継続できるようユニバーサルサービスによる費用補てんも政府は求めています。
これらの義務を最終的に負うことができるのは、事実上地域の電力会社しか存在しません。
そうなった場合どうでるでしょうか?
結局のところ、人口の少ない地域の電力事業の損失を、都市部の電気料金に反映するしかありません。
通信事業や郵便事業と同様のことを行うしかないのです。
悪くすれば、電力自由化により、電気料金は自由に決めることができますので、採算が取れないとの理由で電気料金を不当に上げる可能性も出てきます。

結局何も変わらないの??

こうした状況から、結局電力会社が優位であることは変わりありません。
しかし、今までは不満がありながらも、電気は電力会社からしか購入することができませんでしたので、こうした利用者の声は届きづらかったのですが、これからはその気になれば電力会社との契約を辞めることもできます。
電力会社も今までのような奔放経営ができなくなっております。
その点は今までとは大きな違いです。

電力自由化後の電力会社はどうなる?

国は、公共性が高いという理由で民間企業に独占権を与えてしまったため、官庁と民間企業のいいとこどりのような経営ができてしまう環境を電力会社に与えてしまいました。
高度成長期など設備投資が多く必要とされた時代には、自由化前のような形態でも利用者の利益になるよう働いたのですが、現在は今の資産をどう活用するかと言う時代です。
電力会社もこうした時代の流れに合わせていく必要があると考えらえます。
シェアが奪われる可能性が出てきたとはいえ、電力市場では未だ圧倒的な顧客を持っている電力会社です。
こうした顧客の満足度を重要事項として、顧客離れを起こさせない経営が今まで以上に必要となってきます。

電力会社にとっても自由化はチャンス

電力会社は自由化以前、管轄外の事業者への電力供給は原則としてできませんでした。
他地域の電力会社で魅力的な料金プランがあれば、そちらに乗り換えることも制度上できるようになりました。
そうなった場合、都市の規模である程度売り上げが決まっていた電力会社ですが、他地域の顧客を取ってくることで、売り上げを伸ばすこともできるようになります。
そうなった場合、人口の少ない地域への補てん額も多く出すことができ、単純に考えてその地域の電気料金を安くすることもできます。
こうした地域の壁にさいなまれていた比較的規模の小さい電力会社(四国電力、北陸電力、九州電力など)にとってはチャンスと考えることもできます。
電力会社も電力自由化をネガティブなものとして捉えてもらいたくはないですね。

終わりに

電気の供給が始まったのは明治時代に西欧諸国の技術を導入しようと民間人によって、設立された電力会社によって初めて電気の供給が行われました。
設立当時は、電気によってよりよい暮らしができると様々な電力会社が乱立しました。
当時、電気は生活に必要なものではなく、ハイテクを実感できる夢と希望にあふれたものであったと思います。電力会社もその当時は民間企業としての採算や顧客満足度なども考えていたのではないでしょうか?
都市にいても、田舎にいても変わることのない電気がある便利な生活を手に入れることができたことは電力会社の大きな功績です。
しかし、電気が暮らしに欠かせないものになった現在、多大な設備投資と公共性という観点から国内での存在感を強めて、電力会社は、電気料金は言えば払ってくれるという認識になってしまっていました。
電気利用者は電気料金が常に適正な価格なのかを判断しなければなりません。
今までこういった意識が足りなかったことで、電力会社が電気利用者をある意味舐めた態度にさせてきたのかもしれません。
納得ができなければ、契約を見直すという当たり前のことができるようになったことが、電力自由化の大きな一歩です。
これからは毎月届いている検針の明細をよく見てみるようにしてみてください。
細かい字で大事なことが書かれています。
自分が電気料金を払っていいと思える会社と契約をしたいものです。
人口の少ないし地域への電力事業は、確かに収益面ではマイナスかもしれません。
こうしたことに対応している電力会社も評価すべきだと思います。
しかし、ここで注意しなければならないことは、そういった取り組みを行っているということで必要以上の電気料金や利益を求める姿勢がないかと言う部分です。
地域独占があるため、そういった部分の監視の目がゆるんでいたと言ってもいいでしょう。
これからは電気の購入先は自分で選ぶことができ、電力会社の不穏な動きに消費者の側からNOを突きつけることができるようになったのです。


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